遺品整理士はその名の通り、故人の遺品を整理する仕事です。少子高齢化が進む現代において需要が非常に高まっており、成長産業となるでしょう。
そんな注目の遺品整理士の仕事内容、資格、将来性について解説致します。
もくじ
遺品整理士とは?
遺品整理士は、故人の私物の片付け、処分、清掃などをする業者です。ただ、物を片付けたり掃除したりする仕事ではなく、「供養」という観点から遺品を取り扱うことを重要視し、遺族の心の整理を手伝うという意味を持つ仕事です。
遺品整理士の仕事の流れ
遺品整理士は遺族からの依頼を受け、複数人で故人の家に向かい、遺品整理をします。その仕事内容は不用品回収や清掃業とよく似ていますが、大きく異なる部分もあります。
以降で、仕事の流れを解説していきます。
必要品の仕分け
まず遺族の私物を必要・不要に分けます。ここで重要なのは、遺族にとって「価値のあるもの」とは財産としての値打ちがあるものばかりではないという点です。
第3者から見て価値の無いようなものでも、遺族にとっては故人との思い出が詰まった大事な品かもしれません。そのため普通の不用品回収より慎重に仕分け、遺品の一つ一つを丁重に扱う必要があります。
不用品の処理
ここが、遺品整理士という仕事の専門性が活きる部分です。処理と一口に言っても様々で、例えばゴミとして捨てるのか、あるいは売りに出すのかで依頼する業者も手続きも違ってきます。
ゴミとして処分するにしても材質によっては個人で処分するのも難しいため、遺品整理士の知識が重要となります。場合によっては自宅や貴金属などを売りに出す際に、遺品整理士が信頼できる専門家を紹介する必要があります。
搬出作業
仕分けが済んだら処分するものを外に出します。ゴミとして処分するのか、売りに出すのか、あるいは遺族の家に移動させるのか、何れにしても責任を持って慎重に搬出させる必要があります。
先ほども述べましたが、故人の私物には遺族にしか見出せない価値があるものです。引越しなどの通常の搬出作業と同じような感覚ではできません。
清掃
最後に故人の家や部屋を清掃するのも遺品整理士の仕事です。清掃という意味では、普通の清掃業務と大きな違いは無いかもしれませんが、個人を「供養」するという心持ちが重要なことは変わりありません。
遺品整理士の資格
遺品整理士の仕事には「遺品整理士」という資格があり、一般社団法人遺品整理士認定協会から発行されています。
国家資格ではありませんが、遺品整理士は前述のように需要が高まっている業種であり、その花形資格ともいうべきものなので、遺品整理士として働くなら取得しておくことを推奨します。
遺品整理業そのものは資格が無くてもできます。資格が無くても「遺品整理士です」と名乗っても法的には問題ありません。しかし、現代においては資格の有無が遺品整理の業者選びに重要な要素となっています。
実際に起きた事件で、遺品整理を請け負った業者が故人の口座からお金を引き出そうとしたという実例があります。
その他にも故人の所有していた貴金属を仕分けの際にくすねたり、ゴミとして処分するものを山に不法投棄したという事例もあります。
遺品整理業の需要が高まっている一方で、このように法を無視したりモラルに反する仕事をする悪徳業者も増えてしまいました。そのような現状であるため、遺品整理の業者選びに関して国民生活センターが注意喚起をしています。
参考:http://www.kokusen.go.jp/mimamori/pdf/shinsen276.pdf
今や遺品整理業は、不用品回収や清掃業の延長線上にあるものではありません。このような悪徳業者が跋扈する世の中だからこそ、「遺品整理業のプロ」が必要とされています。
遺品整理士資格の「試験内容」
「遺品整理士」の資格を得るには、一般社団法人遺品整理士認定協会に受講の申し込みをする必要があります。受験資格に年齢制限はなく、実務経験も必要ないので基本的には誰でも受験することができます。
受験には試験場に赴いてテストを受ける必要もなく、申請後に届く教材で2ヶ月間の講義を受けた後に「レポートの提出」という形で合否が判断されます。
講義の内容は「遺品整理士とは」、「作業を行う上での留意点」や「遺品整理士認定協会について」といった遺品整理士の仕事に関する具体的なものから、「法規制とのかかわりについて」など法律に関する内容まであります。
これらをしっかりと習得してレポートにまとめ、提出することで「遺品整理士」の資格を習得することができます。
遺品整理士資格の「合格率」
遺品整理士の資格試験の合格率は約65%とされています。それほど低い合格率ではありませんが、それでも3人に1人の計算で不合格となっているということです。
試験内容がレポートの提出なので、テスト形式の試験のように「過去問題」などを復習して対策を練ることはできず、効率化することはできないでしょう。
そのため、レポートに不備が無いように、講義内容を網羅するしかありません。ただ試験に受かるためだけに教材の内容を記憶しただけでは、合格することは難しいと言えます。
遺品整理士資格「勉強方法」
基本的には遺品整理士認定協会に受講を申請した後に送付される教材を用いて勉強します。講義と言っても教室やオンラインで授業を受けるようなものではなく、自分のペースで勉強する独学スタイルが基本です。
送付される教材は以下のようなものです。
- 教本(3冊)…遺品整理士の仕事のノウハウや法律関係の知識が記載された教科書
- 資料集(1冊)…業務の実例を掲載したもの、イメージを掴みやすくするため写真が多い
- DVD(2枚)…大学教授や弁護士の先生が遺品整理に関する講義をしている動画
- 問題集…講義の内容に関する問題が掲載されていて、レポートもこれに記載する。全設問の回答とレポートを作成して最後に提出する。
基本的には上記の教材の内容を勉強すれば合格可能となっていますが、不安なようなら「通信講座」などもありますので併せて使用するという手もあります。
受講時間は教材が届いてから2ヶ月程度が目安となっていますが、もう少し時間が必要なら遺品整理士認定協会に連絡すれば延長してもらえます。
遺品整理士資格「費用」
「遺品整理士」の資格取得に必要な資料は、遺品整理士認定協会の教材などに支払う「受講料」と認定手続きの手数料を含めた「会費」が必要になります。
受講料 | 25,000円 |
会費 | 5,000円 |
つまりは最低でも30,000円はかかるということです。
遺品整理士に関係するその他の資格
個人で遺品整理士として就職するために取得しておいた方が良い資格は「遺品整理士」一つで十分ですが、会社としてあるいは事業として遺品整理業を行なうには遺品整理士の資格だけではやや不十分です。
なぜなら、遺品整理業では故人の私物を「廃棄」するか「売却」することが多いからです。遺品整理士の資格は、あくまでも遺品整理業のノウハウを取得するための資格なので、廃棄や売却を自由に行えるようになるわけではありません。
遺品整理業者として物の廃棄や売却を一手に担うには以下のような資格が必要です。
「一般廃棄物収集運搬許可証」
一般家庭で出される不用品を廃棄するには「一般廃棄物収集運搬許可証」というものが必要です。例えば、遺品を仕分けして、遺族から処分を要求されたものに関しては、遺品整理士が一旦回収して処分する必要があります。
その際に一般廃棄物収集運搬許可証が無ければ、許可証を持っている業者に委託するしかなく、コストが高くつきます。遺品整理士と併せて一般廃棄物収集運搬許可証を取得して、廃棄も自社で担えるようにしておけば、非常に有利と言えるでしょう。
一般廃棄物収集運搬許可証は各市町村区が発行していて、事業者が申請して得るものです。書類を用意する必要はありますが、試験などはありません。
「産業廃棄物廃棄物収集運搬許可証」
先ほどの「一般廃棄物収集運搬許可証」の産業廃棄物版が「産業廃棄物廃棄物収集運搬許可証」です。事業活動によって生じる金属や廃油などを処分するのに必要な許可証です。
一般家庭での仕事が多い遺品整理業ではあまり必要になることは無いかもしれませんが、故人の住まいが自宅兼仕事場のようなケースもなくはないので、とっておいて損はありません。
「古物商許可証」
上記の2つが「廃棄」に関するものなら、「古物商許可証」は「売却」に関する資格です。個人の私物の中には、貴金属や骨董品、絵画など売却価値のある財産が見つかることも多いです。
そのような古物の売買には「古物商許可証」が必要であり、遺品整理士が取得していない場合は古物商許可証を持っている業者に委託することになります。
古物売買の業界では、遺品整理業と同じく悪徳な業者が少なくありません。そのため、正確に鑑定して適正な価格で買い取ってくれるような信頼できる業者を見つけるのは難しいです。
故人の物を自社で直接買い取れるようにしておくと、非常に便利です。「古物商許可証」は都道府県の公安委員会に申請することで取得できます。
遺品整理士の将来性
遺品整理士の仕事は、少子高齢化社会が進む現代において注目が集まっています。そして今後はさらにその需要は高まっていくと考察されます。
厚生労働省の統計によると、「日本人の平均寿命」は平成28年の時点で男性がおよそ81歳、女性が87歳と昭和60年代と比べても7歳近く平均寿命が伸びています。
さらに同じく厚労省の統計で、「東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数」というのがあり、つまりは「高齢者の孤独死」の数を統計したデータのことです。
そのデータによると、平成15年では1451人程度だった高齢者の孤独死が、平成27年には3127人と倍以上に増えているとのことです。
このような現状があり、今後もその数が増えていくことは想像に難くありません。そんな時代を迎えるにあたって「遺品整理士」の重要度はますます高まっていくでしょう。