遺言書キットは、用紙や説明書を使って考えを整理する道具です。購入しただけ、付属の例文を写しただけで、有効な遺言書になるわけではありません。家族関係や財産に合った内容と、法律で定められた方式の両方を確認しましょう。
キットを買う前に整理すること
- 誰に、どの財産を残したいか
- 財産の名義と、借入金など負債の有無
- 家族の関係や、相談しておきたい事情
- 作成後の保管先と、家族が存在を知る方法
不動産を複数人で分ける、相続人以外に渡す、遺留分が心配、家族間に争いがある場合は、キット選びより先に弁護士・司法書士や公証役場へ相談してください。税金は税理士に確認します。
購入時に見る5項目
| 項目 | 確かめること |
|---|---|
| 版・説明書の時期 | 制度改正への対応時期が示されているか |
| 用途 | 自筆証書遺言用か、希望をまとめるノートか |
| 用紙 | 下書き用と清書用が分かれ、書き直せるか |
| 保管方法 | 自宅保管と法務局保管の違いを説明しているか |
| 相談の範囲 | 相談付きの場合、担当者・費用・確認範囲は何か |
価格は商品や相談サービスで違います。用紙だけの価格と、専門家への相談料を同じものとして比較しないでください。キットは必須ではなく、公式の案内を確認して自分で用紙を準備する方法もあります。
「全部手書き」「訂正できない」は正確ではない
自筆証書遺言は、本文・日付・氏名の自書など所定の方式を守る必要があります。一方、添付する財産目録はパソコンで作成する方法や通帳等の写しを使う方法も認められています。自書しない目録の各ページには署名・押印などの要件があります。本文まで自由にパソコンで作れるという意味ではありません。
また、法律で定める方法による加除・変更は可能です。「遺言は一切訂正できない」とは言えません。ただし訂正の方式は厳格なので、不安がある場合は新しい用紙で作り直すか専門家に確認しましょう。
要件の全体と財産目録・保管の違いは、以下の記事で整理しています。
作成は下書き・確認・清書の順番で
- 財産の正式な名称・名義・所在を資料で確かめる
- 残したい相手と財産を下書きで対応させる
- 漏れた財産、受け取る人が先に亡くなった場合など相談事項を整理する
- 形式と内容を確認してから清書する
- 保管方法を選び、存在と保管場所を家族に伝える
例文の氏名や数字だけ置き換えても、実際の家族関係に合うとは限りません。土地の所在地と地番、建物の家屋番号などを取り違えないよう、確認資料を手元に置きましょう。
封筒を閉じる前に保管先を決める
自宅等で保管する自筆証書遺言と、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使う場合では、手続きが異なります。法務局保管には用紙・余白などの様式上の注意があるため、キットの台紙や封筒がそのまま使えると考えないでください。
自宅等で見つかった遺言書は、原則として家庭裁判所で検認の手続きが必要です。封印のある遺言書は勝手に開封せず裁判所へ相談します。法務局で保管された遺言書は検認が不要です。なお、検認は遺言の有効性を保証する手続きではありません。
「法務局に預ければ内容もすべて適法と認められる」という理解も避けましょう。相談先と保管先は役割が違います。
制度改正とキットの説明が食い違うとき
2026年には遺言制度の見直しを含む改正法が成立・公布されました。押印の任意化等と保管証書遺言の創設等では施行の区分が異なります。成立したというニュースだけで、今使う用紙の要件を省略しないでください。作成日と利用する制度に応じて、法務局・公証役場へ確認します。
参考にした一次情報
情報確認日:2026年9月21日。法律上の一般情報であり、個別の遺言の有効性を判断するものではありません。従来の「全文自筆」「訂正不可」という説明を見直しました。
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