「遺言書を書いてみよう!」と思い立ったものの、いざ書くとなると何をどう書けばいいのか、そもそもどんな形式の用紙に書けばいいのかもわからないという人におすすめなのが「遺言書キット」です。
ごくシンプルな遺言書作成を考えているなら、キットに入っている遺言書の書き方マニュアル(説明書)を参考にすれば、自分だけで法的に有効な遺言書を作ることができます。
遺言書キットで遺言書を自作する際の手順や、注意・確認点などを解説します。
もくじ
トラブル回避!遺言書の書き方に迷ったら遺言書キットを使ってみよう
重要な終活のひとつである遺言書作成は、なかなかの大仕事です。
なんの知識もないままに1から書こうとすると、どのような内容をどういった形式で書けばいいのかさっぱりわからず、困惑してしまいます。
また、苦労して作った自己流の遺言書が法的には効力がなかったり、かえって遺族間のトラブルの火種になってしまうのは悲しい限りです。
残していく家族のために、遺言書でしっかりと自分の意思を伝え、円満な相続につなげるために、「遺言書キット」を利用しましょう。
遺言書キットってどんなもの?費用は?内容は?
たくさんの出版社や事務用品メーカーから発売されている「遺言書キット」。
立派な保管用の桐箱や高級ペンがセットになっていたり、動画つきのDVD説明マニュアルがついていたり、必要最小限のアイテムだけを厳選したものなどバリエーションも豊富です。
もちろんその内容に応じて値段も数百円から6千円超まで幅があります。
一般的な遺言書キットには、基本的に以下のようなものが必ず入っています。
- 遺言書の書き方マニュアル(説明書)
- 遺言書用紙
- 下書き用紙
- 遺言書を入れる封印用封筒
遺言書用紙はコピーすると「コピー」「複写」の文字が浮き出る特殊な紙を使用しているため偽造の心配がないものが多く、封筒も封印した後で開封すると、元に戻せない作りになっているので安心です。
通販サイトや書店で手に入る
こうした遺言書キットは、Amazonや楽天、ヨドバシ.comなどの大手総合サイトなら手軽に入手できます。書店や大きな文具店などにも様々なタイプの遺言書キットが取り揃えられています。今まで目に入らなかっただけで、意外に近所の書店にも置いてあるかもしれません。
遺言書キットを使う前に、遺言書の基本をおさらい
ではまず手軽に遺言書が作れる遺言書キットを利用する前に、ざっと遺言書の基本をおさらいしましょう。
そもそも遺言書ってなぜ必要?
自分の死後、相続をきっかけに身内同士が反目しあう事態は、終活者にとって大きな懸念材料のひとつです。こうした相続問題を未然に防ぐ切り札となってくれるのが遺言書。
法的に有効な遺言書さえ残しておけば、財産を巡るトラブルについては予防することができます。
遺言書を作成するメリット
遺言書を作成する利点のひとつは、遺産分割協議を経ることなく相続手続きが完了できるという点です。もうひとつは、煩雑な手続きが軽減できることです。
遺産の名義変更には遺産分割協議が成立したことを証明する「遺産分割協議書」が必要なのですが、これには相続人全員の署名と実印での捺印、相続人全員の印鑑証明書が添付されていなければなりません。
亡くなった人の意思がなにも示されないままで、相続人全員の同意を得るのも大変ですし、もしスムーズに協議がまとまったとしても、遺産分割協議書を作成するにはたくさんの手続きや手間がかかります。
法的に有効な遺言書があれば、トラブルの心配のある協議を行う必要もなく、相続にまつわる数多くの手続きの手間も軽減してくれるというわけです。
遺言書キットで作成するのは「自筆証書遺言」
遺言書キットで作成する遺言書は、形式(規定)をしっかり守ることで法的にも効力を持ちます。そして法的な効力がある遺言書には、いくつか種類があります。
遺言書とは
自分の死後、家族や知人に読んでもらうために残すメッセージ全般を「遺言」といいますが「遺言書」とは、その中でも死後の財産(遺産)の分配などについて、自分の意思を書き残す文書のことです。
通常は「ゆいごんしょ」と読みますが、法律用語では「いごん」と読み、民法で規定されている形式に沿って作成され、法的な効力があるものを指します。
遺言ができるのは、満15歳以上の人で、成年被後見人の場合は2名以上の意思立会いの下で正常な判断能力があると確認される必要があります。
遺言書の種類
遺言書の種類には、普通方式遺言と特別方式遺言があります。
普通方式遺言
文書として作成する一般的な遺言で、本人か公証人が作成したものをいいます。普通方式遺言は、
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
上記の3つです。
特別方式遺言
普通方式遺言を作成することが不可能な状態な場合に用いられる遺言です。
- 危急時遺言(病気やケガ、飛行機・船舶の事故に巻き込まれ命の危険が迫っている場合に書かれる)
- 隔絶地遺言(伝染病で隔離されていたり、被災中、船に乗船中など交通できない隔絶地にいる場合に作る)
上記の2種類があります。
遺言書キットで作成するのは、普通方式遺言の自筆証書遺言にあたります。
作成に当たっては手数料などがかからず、証人をたてる必要もないので、最も手軽で簡易な遺言書の作成法といえるでしょう。
遺言書キットの作成は難しい?作成方法を解説!
遺言書キットを利用する際は、まずはどんな事を書くか決めて下書きから書き始めていきます。
遺言書キットを使用した遺言書の作成方法を解説します。
遺言書キットを使った遺言書の作成方法
遺言書には遺産分割方法の指定以外にも、以下のような事項について書くことができます。まずはどんなことを書くか決めましょう。
- 遺産分割方法の指定 (自宅は妻に、車は長女に、など)
- 相続分の指定 (次男は病気入院中なので少し多めに相続させたい、など)
- 祭祀継承者の指定 (お墓などを継ぐ人の指定)
- 負担付遺贈 (愛犬などを譲ると同時に世話をお願いする)
- 後見人、後見監督人の指定 (幼い子供の後見人などの指定)
- 付言事項 (家族へのメッセージ)
- 遺言執行者の指定 (残した遺言を実際に執行してもらう人の指定)
遺言書キット作成の手順
何を書くのかがきまったら、まずメモなどに書き留め、その後下書き用紙に本番遺言書に書く文章を作っていきます。
下書きがまとまったら、今度は本番。すべてを手書きで書いて捺印したら、保管用台紙、封筒に収めて封をします。
死後、見つけてもらいやすい場所(家族に教えておくとよいでしょう)に保管すればOKです。
トラブルを避けるために押さえておきたい、遺言書キットを使う上での注意点は?
遺言書を法的に有効なものにするためには、いくつかルールがあります。
それをしっかり押さえておきましょう。
すべて自筆で書く
遺言書キットで作る「自筆証書遺言」は、すべて本人の自筆のみで作成します。パソコンやワープロの使用、代筆などは認められません。また鉛筆や消えるボールペンなどではなく、万年筆や普通のペンなど、消しゴムなどで消せない筆記用具を使用します。
- 遺言を作成した日付を書く
- 自筆署名を入れる
- 印鑑を押す
上記の4つは、ひとつでも不備があると遺言書が法的に無効になってしまうため、注意が必要です。
その他の注意点も見ていきましょう。
- 訂正はしない。間違えたら書き直す
- 封をして保管した遺言書は自宅で保管し、死後は家族などが勝手に開封してはいけない
- 未開封のまま家庭裁判所に持参し「検認」の申し立てを行う。
- 家庭裁判所での検認には、800円の収入印紙と連絡用郵便切手が必要。
一般的な遺言書の例文
遺言書キットの説明書には、書式や文例がたくさん紹介されていますが、まだ遺言書キットを手に取ったことのない方のために一般的な遺言書の例文を、ご紹介します。
また、法的に有効な遺言書が作れたかどうか心配な場合は弁護士・行政書士などにチェックしてもらうとよいでしょう。
遺言書
私〇〇〇〇は、次の通り遺言する。
1.遺言者は以下の不動産を、妻〇〇△子(昭和〇✖年◎月△日生)に相続させる。
(1)土地
所在 〇〇県✖✖市△町〇丁目
地番 〇△番◇
地目 宅地
地積 **メートル(2)建物
所在 〇〇県✖✖市△町〇丁目〇△番地◇
家屋番号 〇△番◇
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建て
床面積 1階 **平方メートル
2階 **平方メートル2.遺言者名義の下記銀行預金を、長男〇〇◇△(昭和〇△年〇月△日生)に相続させる。
(1)〇〇銀行 ◇△支店 口座番号*******
(2)☆〇銀行 △〇支店 口座番号*******3.その他遺言者に属する一切の財産を妻〇〇△子(昭和〇✖年◎月△日生)に相続させる。
4.遺言執行者として、長男〇〇◇△を指定する。
5.付言事項
家族が私亡きあとも仲良く暮らせるようにこの遺言書を書きました。
お互いに支えあって幸せに過ごしてください。令和〇年□月〇日
〇〇県✖✖市△町〇丁目〇△番地◇
〇〇〇〇(自筆署名) 印鑑
まとめ シンプルな遺言書作成にはキットを使えば意外に簡単
シンプルな遺言書を書くための、遺言書キットの使い方とその例文を解説してきました。
- 遺言書キットは、遺言者作成に必要な用紙や封筒などがセットになったもの
- 遺言書キットは、書店や大手通販サイトなどで比較的容易に入手できる
- 遺言書を作るのは、遺産相続時のトラブル回避や煩雑な手間を軽減させるため
- 遺言書キットで作成できるのは「自筆証書遺言」
- 遺言書には、財産の相続のほか多くのことが書き込める
- 法的に有効な遺言書にするには、遵守すべきルールがある
- 遺言書キットのマニュアルに従えば、簡単に法的に有効な遺言書が作成できる
遺言書キットで作る自筆遺言書は、何度でも作り直すことができます。
実際に遺言書を作ってみて「意外に気持ちがすっきりして前向きになった」などと、年に1度遺言書を書くという習慣にしている人もいるのだとか。
たくさんの財産や複雑な家族関係の場合は、専門家にお任せしたほうが無難ですが、終活の第一歩として遺言書作成キットを頼りに自分の身辺を整理してみましょう。