自筆証書遺言は、簡単に遺言書を残せるメリットの高い遺言書、というところから、ここ近年では利用者が急増しています。
ただ、自筆証書遺言について、しっておかないと行けない点があるのをご存知でしょうか?
簡単・便利である反面、法的な効力を伴わなかったり、思わぬトラブルを生む事もあり得るのです。
自筆証書遺言は、安易な考えで作成してはいけません。残された遺族の混乱やトラブルの原因となってしまいます。
大切なのは、正しい書き方と検認についての知識です。もちろん、理解すれば有効な遺言書として使えるので安心して下さい。
今回は、そんな自筆証書遺言の正しい書き方と検認の方法をお伝えしたいと思います。
もくじ
遺言の種類と自筆遺言の特徴
遺言には、大きく分けて普通方式遺言と特別方式遺言の2種類があり、普通方式遺言の中に、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの遺言があります。
数ある遺言の中でも費用が安く、簡単に作成できる遺言が自筆証書遺言となります。時間も場所を問わず一人で気軽に作成できるところが最大の特徴で、パソコンでの作成は不可で自筆が条件となりますが、印鑑と紙とペンがあれば気軽に作成することが可能です。
一方、公正証書遺言は、検認をしなくて良いメリットはありますが、全体の手続きは面倒です。また、費用も自筆証書遺言よりも高いので自筆証書遺言と比べ、少しハードルが高い方法といえます。
ただし、自筆証書遺言は自分ですべてを行うため、不備があると無効になってしまうリスクもあります。そのため、自筆証書遺言を作成する際は、しっかりとルールに沿って作成することが必要です。
不安な方は、遺言書を作成できるキットも販売されています。こちらを利用すれば、書き方に沿って書いていくだけで法的に有効な遺言書が作成できます。
また、遺言者が亡くなった後に相続する人は検認をしなければなりません。
遺言書と検認の重要性とは?
遺言者が亡くなった場合、家庭裁判所に遺言を持っていく必要があります。民法第1004千四条で定められているので必ず行わなければいけません。これを検認といいます。
検認をしないまま、相続人が勝手に封を開けてしまうと、遺言の効力を失うわけではないのですが、相続人に5万円以下の罰金が課せられます。
相続する予定が逆にお金を支払わないといけないのは嫌ですよね。必ず遺言は、家庭裁判所で検認をしてもらいましょう。
また、間違ってはいけないのが検認の役割です。検認はあくまでも、遺言書が偽物ではないかを判断するものとなります。
つまり、検認=遺言書が有効というわけではないのです。
そのため、検認をしたから遺言通りにすべてが収まるわけではないということを覚えておきましょう。
家庭裁判所へ検認の申請をする際に、必要となる書類は以下のとおりとなります。
必要書類
- 申立書
- 遺言者の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
- 相続する全員の戸籍謄本
- 裁判所が確認した切手
- 収入印紙
- 遺言書
※遺言者の子であり、既に亡くなっている場合は、戸籍謄本が必要
上記の必要書類を揃えて、家庭裁判所へ行きましょう。また、裁判所によっては、上記以外にも別途書類が必要になる場合がありますので注意が必要です。必ず、裁判所で持っていく書類を確認してから申請へ行くことをおすすめします。
書類を提出後は、遺言書の検認が完了するまで数日かかります。書類に不備がなかった場合は、裁判所から相続人に検認の期日が送られてくる仕組みです。この検認の日に、申立人は遺言書と印鑑を持って裁判所へ行きましょう。
検認に行くのは、申立人以外は任意なので必ず出席する必要はありません。相続人の全員が日程を合わせるのは難しいので、よく覚えておきましょう。
ただ、遺言書の開封は検認日に行われるので、遺言書の内容を知りたい人は出席することをおすすめします。そんなの聞いてないといっても、欠席していれば相続が確定する可能性もあるので注意が必要です。
遺言書を確認すれば検認は完了となりますが、知っていないと大変なことになります。
検認の重要性と、やり方をしっかり覚えて忘れないように心がけましょう。
自筆証書遺言の正しい書き方と必要要件5選
自筆証書遺言は、正しい書き方をしないと無効になってしまいます。せっかく思いを込めて遺言書を作成したのに、効力がないと意味がありませんよね。
遺言書は民法に定められたルールに基づいているため、遺言者が亡くなった後では書き換えることはできません。
自筆証書遺言を有効にするためにも、書き方と必要要件をしっかりと理解しておきましょう。自筆証書遺言の効力を持たせるために、押さえておきたいポイントは以下の5つです。
氏名
氏名は、遺言者の名前を書きます。
夫婦で作成した遺言書だから「遺言者」+「配偶者」のように夫婦2名の名前を記載してしまい、無効になってしまうケースも多々あります。
民法第975条では、二人以上の人が氏名を書いてはいけない決まりです。そのため、遺言者以外の名前を書いてしまった場合は遺言が無効となります。
必ず遺言者1名のみの氏名を記載することを覚えておきましょう。ちょっとしたことですが、配偶者や相続人も理解の共有をしておくことが大切です。
日付
日付は、特定できる日を書きます。
よくある間違いが、吉日や末日など曖昧な日付を記入することです。この場合は、基本的に日付を特定できないため無効となってしまいます。過去に有効になった事例もありますが、危険なので控えましょう。
また、日付も必ず直筆で書かなければなりません。大切な書類なので、鮮明に見えるように印鑑やパソコンで打つ人もいますが、印鑑やパソコンなどは無効です。
日付は遺言書を作成した日を記載します。遺言者の直筆ならば、西暦や和暦など、記載方法は自由なので理解しておきましょう。
「2000年1月1日」のようにだれでもわかるような記入方法にするとトラブルを未然に防止できます。
印鑑
印鑑は、意外に認印が有効とされているので、そこまで厳しくないのが特徴です。そのため、実印や認印と自由にすきな印鑑を選びましょう。
ただし、母音や指印ではなく、必ず印鑑で捺印することをおすすめします。拇印や指印は、照合できる物がない限り無効となってしまいます。
たとえ、遺言者が捺印したものであっても遺言書を確認するのは、遺言者が亡くなった後です。そのため、確認が難しい拇印や指印が控えるのが得策でしょう。
間違えた時
遺言書を書いている最中に内容を間違ってしまった場合は、書き直しをおすすめします。その理由は、修正した部分には、とても厳しい審査が待っているからです。
修正した部分が、確実に遺言者が訂正をしたのかを確認できなければ、その部分は無効となります。これは、相続人が故意に内容を書き換えることを防ぐためです。
訂正するためには、訂正箇所を遺言者が確実に訂正したことを証明する書類と印鑑が必要となります。
とても面倒な作業になってしまい、書く内容が飛んでしまう可能性も出るので危険です。必要以上に時間や労力がかかってしまうため、できるだけ新たに書き直すことをおすすめします。
どこまで自分で書けば良い?
自筆証書遺言は原則、遺言者がすべて書かなければなりません。
遺言者が財産目録等を書いておらず、無効になるケースなども多いので特に注意が必要です。
遺言者が字を書けない場合は、自筆証書遺言は行えません。「すべての内容」を直筆で書くことが必要ですので、誤解しないことが重要です。
自分で記載していても間違うことがあるため、相続人と一緒に不備確認をすることをおすすめします。
このように、5つのポイントを正しく記載できていれば有効な遺言書を作成できます。
また、遺言書は封が閉められていないと無効となってしまいます。そのため、書き終わった遺言書は封筒に入れ、のりなどでしっかりと封をしなければいけません。
自筆証書遺言の注意点
自筆証書遺言では、銀行預貯金の相続、第三者への相続、不動産の相続など、財産の内容によって、記載しなければ有効にならないものがあります。
財産の内容を理解して、正しい書き方を理解していきましょう。
銀行預貯金の相続
銀行の預貯金を財産として、遺言書に記載する場合は、以下の4点を記載しましょう。
- 金融機関
- 支店名
- 口座番号
- 預金の種類
特に、口座番号は数字が数桁に渡るので正しく正確に記載しましょう。
第三者への相続
遺族以外の第三者に財産を相続させることも可能です。
記載内容は、渡す財産の詳細と名前を記載するだけですが、基本的に遺産は相続人に渡るような制度となっているため注意が必要です。
第三者に相続したい場合は、「遺贈」という形をとることになります。相続人に対して相続するのではないため、遺贈という形になります。ですので、必ず「遺贈」という言葉を使わなければいけません。
不動産の場合
不動産や土地など、お金ではない財産は、以下の通りに記載します。
不動産・・・登記簿謄本通りに記載。
土地 ・・・所在地、地番、地名、地籍を記載。
上記のすべてを正しく記載できていなければ、遺言書が有効でも登記の移転はできません。そのため、遺言書の内容は数回に渡って確認するように心がけましょう。
自筆証書遺言の書き方を理解して、有効性を確保しよう!
自筆証書遺言は、自由に記載することができます。書く内容にも縛られることがないので、遺族へ思い思いのメッセージを残すことができるでしょう。
ただし、自宅で簡単に作成できる反面、正しく記載しなければ無効となるので注意が必要です。
できるだけ、配偶者など理解ある人と一緒に確認して、相続人が円滑に遺産を受け取れるように正確な遺言書を作成しましょう。