遺産や遺品。自身の思い出や残った遺族のことを考えて多くのものを残したい。しかし多く残せば残すほど、かかってしまうのが相続税です。
もくじ
相続税は財産の所有者が亡くなった際にかかってしまう税金です。
まず相続税は人数ごとに基礎控除額が決まっています。理由としては1人の人間に多くの財産がいかないようにするためです。
- 1人であるならば3600万円
- 2人であるならば4200万円
- 3人ならば4800万円
となっており、この金額までの相続は非課税となります。また相続する人数が増えるごとに基礎控除額、つまり非課税の枠が上昇していきます。
ここで例を挙げます。もし遺産総額が7200万円で法定相続人が2人の場合、
遺産総額7200万円-基礎控除額4200万円=3000万円
が、相続税に関わる遺産の総額となるのです。上記の遺産総額で2人の相続人が同じ割合で財産をもらう場合、1人当たりの相続税の計算は、
(3000÷2)×0.15-50=175(万円)
となります。まず計算式にある0.15は税率であり、相続税に関わる(今回の場合は3000万円)1人当たりの遺産総額が1000万円以下であれば10%、3000万円以下であれば15%と、以降総額が上がるごとに税率は上昇していきます。
次に計算式で引かれた50は控除額であり、こちらも総額が上がるごとに上昇していきます。控除額の上昇は、相続財産をもらうほど大きくなる税率に対する不平等性を少しでもなくすために存在します。
これら2つの計算式より、7200万円の遺産総額を2人の法定相続人が同じ割合で相続される場合の1人当たりの相続税は175万円となり、もらえる相続総額は3425万円となるのです。
相続税はこのように相続するだけであるのに多額の税金が発生してしまいます。この相続税をより少なくして遺族に財産を渡すことはできないのでしょうか。
ここでカギとなるのが生前贈与です。亡くなった時の相続でなく、生きてるうちの贈与により税金を非課税に、また少額の贈与税で親族に財産を渡すことができます。では税金対策となる様々な贈与の方法を確認していきましょう。
毎年110万円まで!暦年贈与
まず初めに暦年贈与を紹介します。暦年贈与とは、毎年一定額の贈与を行ってくことをいいます。贈与税が発生する条件は、1年間に110万円以上の贈与をした場合なので、110万円以内に抑えることで贈与税が発生せず贈与することができるのです。
暦年贈与の方法としては、
- 時期
- 人(誰が、誰に)
- 金額
を確実に記載し作成します。なお渡す側、受け取る側の押印は実印を使用するほうが信頼性のある書類となるため良いです。
次に公証人役場に贈与契約書をもっていきます。ここでは文章の存在の証明が公的に認めてもらい、証拠である確定日付をいただきます。
確定日付は絶対必要なものではありませんが、公的に認められた証拠は、後々の財務署との税金問題が起こるリスクを格段と減らします。最後に贈与金額を受け取る側に渡し贈与終了となります。
暦年贈与は非課税で贈与することを可能にしますが、デメリットとして大きく3点があります。
1点目
1年で非課税贈与できる金額が少ないことです。相続税の節約はできますが、時間は長くかかってしまいます。
2点目
同金額、同時期の暦年贈与を行った場合、別の贈与であると財務署に指摘される場合があるということです。これは財務署側が暦年贈与でなく連年贈与という別の贈与方法での贈与ではないかと思い問題となります。
連年贈与とは当初から渡す贈与額を、渡す側ももらう側も約束していた場合の贈与方法であり、つまり贈与者が、初めから300万円を贈与したいと考えており、100万円づつを4月に暦年贈与により贈与した場合などがこれに当たります。
こうした指摘がされないように、あくまで表向きは計画的な贈与でないように緩急をつけて贈与していく必要があります。
3点目
贈与する側が亡くなった際、亡くなった年から3年間前までの暦年贈与が相続財産に加えて計算しなければならないという決まりがあることです。ただしこの決まりは相続人に対する贈与のみにかかるもので、相続人ではない孫であったり少し離れた親戚の人である場合は問題ありません。
大きくどっさり2500万円の贈与の非課税
次に紹介する贈与の方法は、2500万円の多額の贈与を非課税で可能にするものです。この制度を相続時精算課税制度といい、2500万円までの贈与税が非課税となる驚くべき制度です。
- 贈与税の申告書
- 相続時精算課税選択届出書
- 住民票の写し
- 登記事項証明書
ここに本文を入力
そして贈与を受けた翌年2月1日から3月15日の間に確定申告をすることで可能となります。対象については、贈与した年の1月1日に、贈与者が60歳以上、受け取る人が20歳以上の子供または孫となっています。
この制度の大きなメリットは
価値が変動する、または収益を生む土地や不動産といった財産の贈与に適しているということです。相続するまでに価値が上昇したり、収益を生むものであれば、相続の時の財産価値があがり、その分相続税が高くなるためです。
また2500万円を越えた場合一律で20%の課税となりますが、多額の贈与でも課税の金額は変わらないため、多くの財産を持つ方ならばよい制度と言えます。
これだけならば2500万円まで非課税なら暦年贈与じゃなくてこの制度でいいじゃない…と思うかもしれません。しかし節税にならないのではというデメリットがこの制度にはあるのでえす。
デメリットをあげていくと
1点目
暦年贈与ができなくなることです。1章目であげた暦年贈与は毎年110万円を非課税で贈与することができるものでした。しかし一度相続時精算課税制度適用の届出を税務署にだした場合、暦年贈与に戻すことができないのです。
2点目
相続人に対する制度の利用は死後相続税が発生します。つまり相続人に贈与する場合、贈与税は非課税であるが相続税は通常通りかかってしまうのです。暦年贈与との選択を考えなければいけないため生前贈与を考えるときは、どちらか選ぶとこから始まると思われます。
2点目の相続税がかかるという点については、相続人でない人に対して贈与すれば相続税はかからないため、孫や相続人に入っていない遺族への贈与に最も大きな力を発揮します。また何億といった高額な贈与であっても、2500万円以上は課税が固定である点も魅力であるといえます。
多額で実感!特例贈与
ここからは実感して非課税の恩恵をわかる制度を紹介していきます。なお非課税となる各制度は特例を利用するため、それら特例を紹介しながら確認していきましょう。
教育資金贈与
この制度は30歳未満のこどもや孫に対する教育のための贈与が非課税になる制度です。受け取れる金額は一人当たり1500万円となっています。金融機関に口座を作り、教育による利用を証明できる領収書を作成することで適用されます。
金融機関でお金を管理しているため、教育目的以外の利用は気づかれますので絶対できません。この制度は学校以外の習い事などでも500万円までは非課税で贈与できます。
- まず受け取った人が30歳までに使いきれなかった金額については、残った金額で贈与税が発生します。
- 2点目は現在2019年3月31日で制度は終了となる
以後も適用されるかは国や学校等に必ず確認することを勧めます。
結婚・子育て資金贈与
教育資金贈与と同じように、結婚・子育てにも贈与が非課税になる制度があります。非課税で受け取れる金額は、子育て資金が1000万円、結婚資金が300万円となっています。
条件としては受け取る人が20歳以上の子どもまたは孫となっています。なお受け取った人が50歳を過ぎた時に残った金額は贈与税が発生します。
住宅取得資金等の贈与
住宅購入のための贈与といったものも非課税でできる制度があります。この制度も教育資金の贈与と同じように期限があります。
期限及び消費税ごとに非課税枠がやや異なりますが、
- 消費税が8%の場合は1人当たりに最大1200万円の贈与が非課税
- 消費税が10%の場合は一人当たりに最大3000万円の贈与が非課税
受け取る条件は20歳以上の子どもまたは孫となっており、年齢の制限については特にないため、例え50歳の子どもであろうとも住宅購入のために贈与することができるのです。
配偶者に対する贈与
配偶者に対しても相続の場合は相続税がかかります。しかしこの制度では、現在住んでいる自宅の一部、またはこれから購入する不動産の購入費用を非課税で配偶者に贈与することができます。
どちらの場合でも2000万円まで贈与が可能ですが、夫婦円満でなければいけないかもしれません。
なぜかというと婚姻期限が20年以上の夫婦でなければこの制度は適用されないからです。ちなみに内縁の妻(夫)への贈与も不可能であるため注意をしてください。
このように結婚・子育て、教育、住宅購入といいた人生のイベントごとに贈与をすることで非課税の贈与が可能なのです。これら制度の活用は相続時の節税だけでなく、終活を考える年くらいにいると思われる孫のためにもなる制度であるため、使って損はないといえます。
みなし相続財産とは
これまでの贈与できる財産は、生前に手元にあったため贈与が可能でした。しかしこのみなし相続財産は、相続人の死亡により発生する財産なのです。
みなし相続財産に当たるものは、生命保険や死亡退職金などがあたります。これらの財産も死亡により相続されたものとなり相続税がかかります。知らなかった…て人もいるかもしれませんが、こちらも実は非課税枠があり、1人当たり500万円以内の相続が非課税にする ことができるのです。
贈与のみでなく相続で得られたものも非課税にできるかもと、やや不謹慎ではありますが心の中にしまっておくのも大切でしょう。
まとめ
親族が残った財産の相続税を払う場合、相続税の納付期限は、故人が亡くなったことを知った日から10カ月となっています。相続税申告も同じ期間であり、この期間に全ての財産の相続を完了しなければなりません。
各制度の利用は不動産の購入や相続人以外への贈与などを使えば、大きな節約になるかもしれません。
しかしいざ相続になった際に不明な点の存在が、相続で損を招いたり、財産を把握できないなどの問題が起こらないよう、贈与の証拠を自身で把握するとともに、残された親族に認識させることは重要なことです。
また税理士を活用するなどしてわかりやすい贈与、相続をし、遺族の幸せのための財産としましょう。