グリーフケアとは、家族を失った悲しみが大きく、こころに大きな傷を負ってしまった方の悲しみを和らげるこころの傷や病気のケア1種です。
こころの傷や病気もしっかりケアをしないと、ずっと残ったり、悪化したりする危険性があることは忘れてはいけません。グリーフケアをする事で前向きに力強く生きていけるのです。
そんなグリーフケアについてこの記事では解説しています。この記事を読んで、より事態が悪化する前に、必要な対処をしましょう。
もくじ
グリーフケアとは?
グリーフケアのグリーフは英語で悲嘆のこと。大切な人がなくなってしまって、悲嘆にくれている人の感情を理解し、心を少しでもケアして、立ち直りの後押しをするのがグリーフケアです。
家族が亡くなったとき、喪失感を感じたり、悲しむのは当然。しかし、中には死別が原因で、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、こころのダメージとなって、時間がたってからもその経験に強い恐怖を感じるPTSD(心的外傷後ストレス障害)などになる人もいます。
そのため、介護現場だけでなく、病院など医療の現場でも行われることが多いです。
また、高齢者で配偶者を亡くした方の中には、配偶者が亡くなってしまうことで、社会や他の人とのつながりがなくなってしまう方も少なくありません。介護現場でのグリーフケアに従事する、援助者にはそんな高齢者と社会との橋渡しをする役割もあります。
なお、似た言葉に、ガンになった際に、身体的・精神的な苦痛を和らげるために行われる緩和ケアがあります。グリーフケアも、緩和ケアも人の精神的な苦痛を和らげる点は同じです。
しかし、緩和ケアは行われる対象が、病気などで苦しんでいる本人ですが、グリーフケアは本人以外の方で、病気や事故、老衰で亡くなった本人の周りの人間が対象だというのが最大の違いと言えます。
グリーフケアが必要なのはどんな人?
死別者を含め、親しい人が亡くなってしまった人のほとんどは悲嘆にくれます。しかし、全員にグリーフケアが必要というわけではありません。
そこで、ここでは、どんな人にグリーフケアが必要なのかを解説します。
グリーフケアが必要な可能性が高いのは以下の症状に当てはまる場合です。
精神的な症状 | 感情の麻痺、怒り、恐怖、孤独、寂しさ、 やるせなさ、罪悪感、自責感、無力感。 |
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身体的な症状 | 睡眠障害、食欲障害、体力の低下、健康感の低下、疲労感、 頭痛、肩こり、めまい、動悸、胃腸不調、便秘、下痢、 血圧の上昇、白髪の急増を感じる、自律神経失調症、 体重減少、免疫機能低下などの身体の違和感、 疲労感や不調を覚える。 |
このような症状が長く続けば、グリーフケアを受けることを検討するべきです。精神的な病気は、放置すればするほど、治るのに時間がかかるものがほとんど。
早期にグリーフケアを受けるのが重要です。悲しい思いをしたから、少し疲れが取れないだけと思うかもしれませんが、うつ病やPTSDの可能性だってあります。
また、本人ではなくても、自分の親族や知り合いがこのような症状に当てはまりそうだと感じたら、グリーフケアについて教えてあげましょう。多くの人と人間関係を築いていない人の場合は特に注意が必要です。
グリーフケアでは何をするの?
グリーフケアと言っても家族が行うグリーフケアから、医師が行うグリーフケアまであり、その役割が変わりますので、グリーフケアの内容も同じではありません。
そこで、在宅介護に従事する介護職員である訪問看護師が行うことが多いグリーフケアを紹介します。家族の方がグリーフケアをする際にも有効なので、参考にしてください。
まず、故人の死に対して残っている疑問を聞いてあげることです。意外と見逃しがちですが、故人の死に対して疑問を持っている方は少なくありません。そんな時には、そんな疑問を一蹴するのではなく、共感してしっかり聞いてあげましょう。
疑問を聞いてあげて共感してあげるだけでも、「わかってくれる人がいる」という事実だけで、心が軽くなることもあります。
次に、亡くなってしまった家族との思い出の話をよく聞いてあげることです。もちろん、こちらから思い出の話をするのが必ず良い結果をもたらすとは限らないので、本人が話をしたがらなければ、思い出の話をする必要はありません。
しかし、亡くなってしまった方との思い出を思い出して、死を乗り越える人もいます。もし、本人が話をするようになれば、耳を傾けてあげましょう。
また、高齢者などの中には、死別により人との交流が極端に少なくなってしまう人もいます。そのままにしてしまうと、どんどん精神的・肉体的に追い詰められてしまう可能性が無視できません。
そのため、もし、本人の周囲との人間関係が希薄であれば、ボランティアや地域の集まりなど、人と交流できるような場所を紹介してあげるのもグリーフケアの1つです。また、楽しめるような趣味を紹介してあげるのも良いでしょう。
さらに、これからどう暮らしていけばよいかという実際的な問題もあります。高齢者の場合、死別すると一人暮らしになるものの、1人で生活するのが厳しい場合も少なくありません。そして、もしこれからの生活に関して本人が前向きな気持ちを持っていれば応援してあげましょう。
最後に、もし家族や知り合いだけではグリーフケアをしきれないと感じた場合、グリーフケアを行える施設を紹介してあげるのも、グリーフケアの1つです。日本では介護などを含め、「家族の面倒は家族がみるべきだ」と思っている人も少なくありません。
しかし、死の悲しみで、PTSDやうつ病などになっている可能性もあります。そうなっていれば、家族や知り合いだけでは改善するのが難しいです。必要な時には専門家の力に頼りましょう。
グリーフケアをできる機関はどこ?
場合によっては、グリーフケアで専門家に頼る必要がありますが、どこでグリーフケアをできるのか知らない人は多いでしょう。そこで、グリーフケアを行っている機関を紹介します。
心療内科・精神科
「心療内科(精神科)なんて大袈裟な」と感じる人もいるかもしれません。しかし、繰り返しになりますが、グリーフの大きさは人により異なり、PTSDやうつ病になっている場合もあります。
さらに、今はPTSDなどでなくても、感情が十分ケアされずにいると、PTSDやうつ病などのこころの病気になる危険性も無視できません。
心療内科や精神科はこころの病気の専門家です。グリーフケア外来などを設けている病院もあるので、相談してみてください。
グリーフケア団体
最近では、心療内科・精神科でもグリーフケア外来がある病院もありますが、少し行きにくいと感じる人もいるでしょう。その場合にはグリーフケアを行っている団体に相談するのがおすすめです。
「グリーフケアを行っている団体って信頼できるの?」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、中には一般社団法人「日本グリーフケア協会」のようにグリーフケアに関する民間資格を発行している団体もあります。
そのような団体や、資格を取得している職員がいるグリーフケア団体であれば信頼できるので、団体選びの参考にしてください。
グリーフケア団体の紹介
グリーフケア団体に相談したくても、どこに相談すれば良いのかわからないという方も多いはずです。そこで、グリーフケアを受けることができる団体を紹介します。
生と死を考える会
生と死を考える会は身近な人を失った悲しみを、分かち合い、支え、支えられ、そして誰にでも訪れる死を考え行動する開かれた場を目指して作られた特定非営利活動法人です。
毎月4回「死別体験者の分かち合いの会」を行っています。「自死遺族」「お子様を亡くされた方」など、亡くされた方をグループ分けした会になっています。
会員制をとっており、入会費と年会費、会ごとに参加費が必要になります。
(少し割り高になりますが、会員でなくても参加費を支払えば「死別体験者の分かち合いの会」に参加することは可能です)
ほほえみネットワーク
「伴侶を亡くした悲嘆の苦しみを乗り越えるお手伝いをいたします。」として、伴侶を亡くした方に特化した、グリーフケアグリーフケアを行っている団体です。
「グループミーティング」と呼ばれる8人前後のメンバーで行う8回のセッションや、伴侶を亡くした人が集まって行う「お話会」と呼ばれる月例会が行われています。
入会費と年会費、およびお話会の参加費が必要です。また、生と死を考える会は非会員でも活動に参加できましたが、ほほえみネットワークは会員のみとなっています。
グリーフケア・サポートプラザ
この特定非営利活動法人は自死遺族に対するグリーフケアに特化して行っている団体です。自殺ではなく「自死」と呼ぶのは多くの自殺はさまざまな要因で追い詰められ、脳内分泌物の病的状態等で自ずと自死に至ったという考えに基づいているといいます。
会員制をとっていますが、月に2~3回行われる定例会は500程度で参加することが可能です。また、自死遺族傾聴電話という、自死遺族が電話で専門の研修を受けたスタッフに匿名で相談できるサービスもあります。
天使の保護者ルカの会
聖路加看護大学看護実践開発研究センターが主催している会です。流産・死産を始め、新生児期にあらゆる理由で子供を亡くした方の精神的ケアをする目的で運営されています。
活動は同じ境遇にある方同士で自由に、もしくはテーマに沿って話をするお話会が中心です。会員制ではなく、無料で参加することができます。
グリーフケア・アドバイザーになる
最後に、グリーフケアについてもっと詳しく知りたいという方や「グリーフケア団体を勧めるのもいいけど、自分で力になってあげたい」という方に向けてグリーフケア・アドバイザーについて解説します。
グリーフケアア・ドバイザーとは一般社団法人「日本グリーフケア協会」が発行している資格を持っている人のことです。この資格はグリーフケアに必要なマインドを深め、知識を実生活・実社会で役立てられる人を増やすために作られました。
2級・1級・特級に分かれており、2級は日本グリーフケア協会が行っている認定講座を受講することで、1級と特級は認定講座を受講し課題を行うことで取得可能です。
各級とも2日程度の認定講座なので、それほど負担なく、グリーフケアに必要なことを学ぶことができます。
まとめ
自分や家族、知り合いの体の傷や病気を放っておくという人は少ないですが、心の傷や病気となると、放っておいてしまう人は多いです。しかし、心の傷や病気も体の傷や病気と同様にケアや治療が必要だということは忘れてはいけません。
このページを読んでいるのが、グリーフケアを必要とする本人なのであれば、人に頼るのに遠慮してはいけませんし、その周りの方であれば、このページを参考にしっかりケアをしてあげてください。