どんな買い物でも失敗はしたくありません。
ましてやそれが仏壇となるとその想いも一段と強くなるのではないでしょうか。そうは言っても素人には難しい仏壇、失敗しない仏壇選びとは?
今回は、そんな仏壇選びのコツを「品質」「形状」「種類」などを元に紹介していきます。
そもそも仏壇とは?
箱型で内部に仏像、仏画、名号などの掛軸などを安置できる形状のものを仏壇と言います。
ちなみに位牌だけを安置しているものは位牌壇といわれています。
白鳳時代(645~710年)の天武天皇の詔勅「各家に仏舎を設け仏像や経典を祀り三宝を供養せよ」により有力な貴族の間で持仏堂が建立され始め、鎌倉時代には武士の間にも広がりを見せ、さらには江戸時代には庶民の間にも仏壇という形で全国に広がっていきました。
尚、法隆寺に安置されている玉虫厨子が最も古い仏壇の原型とされ、飛鳥時代(592~694年)の作といわれています。
仏壇の大きさ・サイズ
・小型仏壇(幅40cm前後)
上型/唐木製のものが多い
・中型仏壇(幅60~72cm/長さ60~100cm前後)
上型/胴長/唐木・金仏壇ともに商品あり
・大型仏壇(幅90~120cm前後/長さ170~175cm前後)
上型/胴長/唐木・金仏壇ともに商品あり
上型とは小型仏壇に多く、整理ダンスや別台の上に安置するタイプのことです。中型仏壇の場合は、仏間に地袋が付いているものに安置するタイプになります。
胴長とは中型、大型仏壇に多く見られるタイプで地袋の付いていない仏間に安置するのに適しています。
ただし、大型仏壇の場合、上型のものでも背が高く、地袋のない仏間に安置できるものも多くあります。
通常の仏壇は扉が前開きですが、胴の横からも扉が開く三方開きという仕様のものもあり大変豪華な造りになっていて、それはまるで鳳凰が大きく羽を広げているようなイメージで威風堂々と表現するにふさわしいものです。
また、特別な造りの仏壇を求められる方には、別注品の仏壇を製作することもあります。この別注品の最高品質のものが伝統的工芸品といわれる仏壇になります。
仏壇の製造は分業制で行われており、先ず木地師により骨格となる部分が、続いて空殿師、彫師により本尊を安置する空殿、須弥壇、欄間の木地を製作、塗師による下地付け塗装、箔師による金箔押し、蒔絵師、絵師により高蒔絵、極彩色、金具師により手打金具の製作が行われ、最後にこれらのパーツを組み上げて完成となります。
大きさにもよりますが、伝統的工芸品の仏壇は各分野の第一人者である、伝統工芸士が製作するもので、製作期間半年から一年、金額は2000万~3000万円になることもめずらしくありません。
品質のよい仏壇とは?仏壇は伝統工芸品?
通常仏壇はどのように造られているのか?このキーワードこそが仏壇製作の要となります。
仏教各宗派の本尊(釈迦如来・阿弥陀如来・大日如来等々)が住しているところを浄土と呼びますが、この浄土を具体的に表現したものが各宗派の本山(釈迦堂・阿弥陀堂・金堂などと呼ばれている場所)、建屋の内陣(本尊を安置している場所)なのです。
内陣(ないじん)奥から須弥壇(しゅみだん)、空殿(くうでん)、厨子(ずし)、上卓(うわじょく)、前卓(まえじょく)、瓔珞(ようらく)、灯篭(とうろく)等の仏具で荘厳されています。
さらに全国にある末寺はこの本山内陣をベースに造られているのです。
そして、各家庭の仏壇もこの本山内陣の造りにより近いものこそ高品質の仏壇ということになります。
これは仏具についても同様です。
これらのことに留意の上、金仏壇であれば塗りムラのないもの、金箔部分であれば(一枚掛・二枚掛・三枚掛とあり、10,000分の1mm、2mmの厚みですので目で見てもわかりません。)色合いの深いもの(安価のものは黄みがかって見えます)を選ぶようにしましょう。
また、箔目が一直線に揃っているものを選ぶと尚よいといえます。
普及品の金仏壇は使用する木地はそれほど重要ではなく、その上に装飾する技術及び品質に力点が置かれる仏壇であるといえます。
金具は一般普及品ではプレス金具、電鋳金具が大半で、手打ちされたものは望めませんが、出来るだけ彫の深いものを選ぶとよいでしょう。
金具の彫り紋様については宝相華唐草が一般的ですが、菊唐草、葡萄唐草などの美しい紋様が彫られています。
昔は水銀鍍金を施していましたが、現在では電気鍍金が使用されています。
金仏壇では前述の本山の造りに近いものが上質とされており、例えば浄土真宗本願寺派の欄間であれば、素牡丹彫刻金箔押、須弥壇腰部の彫刻は牡丹に唐獅子(極彩色仕上げ)、空殿は出隅三方妻屋根造り(総金箔押仕上げ)または、真宗大谷派であれば欄間は波に竜(総金箔押)、須弥壇腰部波に竜(金箔押)、空殿は八棟造り二重屋根(柱黒漆塗り)となっており、気づきにくい部分ですが、本願寺派の天井部分の造りは支輪天井鏡板花丸彩色入、大谷派であれば折上げ格天井鏡板小組入朱塗などの違いがあり、高級品ほど緻密な造りとなっているのです。
次に塗り部分についてです。
漆塗をした部分は漆独特の光沢と温かみがありますが、最高級の伝産品仏壇では、呂色仕上げ(鏡面仕上げ)を用いたものもあります。
これは仕上げ塗りをしたものをさらに炭の粉で磨き、仕上げに鹿の角の粉で手磨きをかけて仕上げたもので、人の顔が鏡のように映るほどのものです。
このように仏壇は礼拝の対象物ではありますが、工芸品としての側面を合わせもつものなのです。
代々引き継いできた仏壇であれば古くなったからといって簡単に買い替えるものではありませんよね。
さらに関西地方には最高級の京仏壇や大阪壇等を安置されていることも多々見受けられます。
100~150年経過していても修復が可能なのが仏壇の特徴です。
ご自身で判断に迷うことがあれば、専門家なり、菩提寺の住職なりに相談してみましょう。
ちなみに修復代金の目安は新価の半値から三分の一程度だと考えて置けばよいでしょう。
仏壇の種類、間違った仏壇選びをしないために
品質の良い仏壇の見分け方はわかりましたが、そもそも仏壇にはたくさんの種類があってどれを選べばいいのかわからないという人がほとんどではないでしょうか?
仏壇を選ぶ前に、代表的な仏壇の種類について知っておく必要がありそうです。
金仏壇(きんぶつだん)
浄土系の宗派で多く使用され、全国に金仏壇の産地が分布し、それぞれの地域ごとに特色のある仏壇が作られています。
中でも最も有名なものは京都を産地とする仏壇で、京物と呼ばれて、各地で京物に似せて作られた京型といわれるものが存在しています。
材質は杉や檜を使用したものが多く、いづれも金仏壇は木地ではなくその上に加工する漆箔彩色に力点が置かれる様式のものです。
唐木仏壇(からきぶつだん)
天台・真言・日蓮・禅宗等で使用されることの多い仏壇です。
関東・四国などの産地が有名ですがその歴史はまだ浅く、明治時代に入ったころより家具や建具業者により作られ始めたといわれています。
材質は桜・欅・桑・黒柿・鉄刀木・黒檀・紫檀など多岐にわたります。
色合いと木目の美しさがポイントになり、普及品はプリント印刷のものが多く、高級品になると突板仕上げや練り物仕上げ(5~10mmの厚みの木材を張り合わせたもの)になりますが、無垢材で仕上げたものはほとんどありません。
これは使用する材質が非常に硬いため、仕口部分に割れが入りやすく、技術的にも大変難しいことが原因と思われます。
製作初期のものは木地の上に擦漆加工を施していましたが、現在では家具と同様にポリウレタン加工の表面処理で仕上げられています。
新型仏壇
新型仏壇とは、20年くらい前から広く普及し始め、若い方やマンション住まいのなどの家庭に広がっているタイプの仏壇です。
新型という名前にある通り、従来の仏壇の概念にとらわれず、デザイン性の高いものが多いです。
材質も唐木仏壇のようなこだわりはなく、加工しやすい木材を使用し、塗装についてもかなり斬新なものも見受けられます。
仏間のないご自宅にも設置しやすいです。
厨子(ずし)
仏像だけを安置する専用の収納仏具です。
外面は黒塗、内面は金箔押となっており、前部には観音開きの扉が付いています。形状別に丸厨子、幅広厨子、春日型厨子などがあり、内部に仏具を荘厳することは出来ません。
総高20~60cmくらいまでの仏像を安置できる寸法のものなら既製品が販売されています。
念持仏として仏像だけをお祀りしている場合など、粗末な扱いにならないように厨子を検討することをオススメします。価格は2~50万円程で購入することが出来ます。
ここまで仏壇の種類について述べてまいりましたが、仏壇は住居以上の耐久年数があり、一度我が家の仏壇と定めたからには子孫に引き継いで末永く伝えていきたいものです。
そうした意味でも後に後悔することの無いようしっかりと検討してから購入するようにしてください。そして、仏壇は正式な仏具を荘厳して初めて調和のとれたものとなります。
「信は荘厳より生ず」という言葉がありますが、信仰においてはまず形を整えることも大切なことといえます。
著者:炉扇居士