仏壇

お仏壇の塗替修復や修理の方法と業者選びやお寺・菩提寺への報告

人は普段信仰心の薄い方でも、60~70代に差し掛かると自然と死を意識するようになります。

病気や友人の死、または親族間の通過儀礼においても責任ある立場となり、自らの生きざまや先祖のこと、さらには日常の生活においてもその意識は終活を見据え、人生の集大成に向かうものです。

当然、これまで気にも留めなかった仏壇のことについても少しは心に引っかかっているのではないでしょうか?

老父
老父
わしの家の仏壇ももう何十年経過しているのかわからん。 ところどころにガタもきてるようじゃし、正月のセール時期を狙って買い替えるとするか。
ヒツジさん
ヒツジさん
それはちょっと待ってください。 仏壇には修復という方法があるようですよ。 慌てて買い替えるよりも修復を検討してみるのも一つの案です。

お仏壇を買い替えるのではなく修復するという考え

先日の記事で仏壇の買い方(買い替え)について紹介しました。

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ところが、仏壇というものは驚くことに、200年以上経過し、原形をとどめていないものであっても完全修復が可能なんです。

もちろんその費用としては、新しく同等の仏壇を購入するのと変わらないほど必要となりますが、修復するという選択肢も是非とも考えて欲しいのです。

なぜ古い仏壇がご家庭の中で、これまで処分されることなく代々に渡り引き継がれているのかということを。

そこには先祖の想いと同じくして推し量ることも大切な事だと思います。

代々引き継がれる家族の想いとは別の理由もあります。

たとえ、彫刻が欠損し、塗り部分が剥がれ落ちていても、名のある仏師により製作された仏壇であることも多いのです。ではなぜ100年以上も経過した仏壇に価値があるのか?

それは先祖の想いはもちろんのこと、工芸品としての価値を無視することが出来ないということです。

金仏壇の修復

例えば、金仏壇であれば彫刻の欠損、金箔の剥がれ、黒漆塗部分の傷などをチェックしましょう。

ご自宅の仏壇が通常の安置状態と考えるならば、経過年数30年くらいであれば問題は無いはずです。

実際に塗替修復を依頼される仏壇は50~80年を経過したものが多く見受けられます。

木地が十分に乾燥し、先々に変形・割れが起こることが無い、さらには重要な部分である宮殿、須弥壇、欄間などの技巧の高さ、金具がすべて手打ちで作られている三尺(90cm)クラスの仏壇であれば、金具だけで現代の仏壇一基を購入できるほどの値打ちがあります。

唐木仏壇の修復

唐木仏壇も金仏壇と同じく、完全修復が可能です。

唐木仏壇は金仏壇と比べ比較的簡便な造りとなっていて、欄間などの彫刻部分、宮殿の斗栱組物などの細かい部分の修理でなければ家具店に修復依頼したほうが安く仕上がることもあるようです。

お仏壇の塗替修復における業者の選び方

老父
老父
なるほどな。仏壇が大切なものだという想いは常に持っておったが、子や孫にまできちんと引継ぐことがわしの役目かもしれんな。
ヒツジさん
ヒツジさん
はい。とても大切な事に気づいたようですね。 これまでも先祖から引き継いだ仏壇です。きれいに修復してお孫さんにバトンを渡すことを考えてもいいと思いますよ。
老父
老父
うん。その通りじゃ。はて?どこに依頼したらいいかのう。

信用ある仏壇店を選ぶにしてもなかなか判断することが難しいと思われますので、敬遠すべき業者の見極めのポイントを記述します。

仏壇の下取りと新品の仏壇の購入を勧めるような業者

基本的にこの業界において下取りなどはあり得ません。そもそもこちらは「修復」を依頼しているのに的がずれています。こちらの意図を理解せず、単に売上をとろうとするような業者は信用できません。

仏壇細部の確認もせずにすぐに金額の提示をする業者

70~100年経過した仏壇は最低でも30分以上の時間をかけ、天井裏から引き出しの内部、さらには彫刻から裏側までも確認して、金具の一枚一枚まで丁寧に調べるものです。

たとえ調べ終えたとしても、その場で金額を提示できるものではありません。数時間をかけ、工場とも密に連絡を取りながらその場で金額を提示することがあったとしてもそれは極めて稀なケースです。

メジャーや懐中電灯などの持参の無い業者。

仏壇の内はかなり暗いものですので、初めから正確な見積もりなど出来ない可能性があります。

本尊や位牌、仏具の話をしない業者

まともな業者ならば引取前に本尊の性根抜や納品後の開眼供養などのアドバイスなどがあるはずです。

修復期間があまりにも短い業者

通常2尺(60cm)の仏壇ならば60日程度、さらに大型の仏壇ともなれば90日程は要するはずですので、初めからあまりに短い納品期日を知らされた際には、少し警戒したほうがいいかもしれません。

老父
老父
大切な仏壇じゃ。信頼できる業者にお願いしたいものじゃな。
ヒツジさん
ヒツジさん
その通りです。一社だけでなく、いくつかの業者に見積もりをお願いするのもいいかもですね。

仏壇の塗替修復の内容

先ずは、性根抜きをした仏壇を工場に搬入して、入念にほこりを払いガタイ寸法の確認をします。

次に全体の写真を撮り、ガタイを解体の後、天井・欄間・空殿・須弥壇・引戸・引出し・大扉・内障子などのパーツごとに仕分けを行い、丁寧に水洗いをします。

その後十分に乾燥したパーツから順に、漆・金箔・下地などを落としていくのです。

下地はすべて落とすわけではなく、圧着の強い箇所は残し、弱った下地のみを取り除いていきます。

この際に木地の状態を確認して、傷んだ箇所を新品に作り替えるのです。

木地の補修が済んだパーツに新しく下地を塗っていき、荒塗・中塗・上塗と下地を研ぎあげ、最後に漆塗、金箔押、蒔絵、さらには彩色と仕上げていきます。

ちなみに現在の下地は油性のものを使用しており、昔の下地とは異なっていますが、現在の下地にのほうが湿気に強く丈夫に仕上がるようです。

また、文化財の修復では昔からの材料と技法を用いることが義務付けられています。

それから金具ですが、金具はすべて補修、新調を行い、金鍍金をかけ直します。

最後に仏壇の中で一番緻密な造りとなっている空殿ですが、こちらは屋根、虹梁、斗栱組物、丸柱、礼盤と分解したのち、入念な仕上げをしていきます。

こうして仕上げたパーツを組み立てて完成となります。

その後最終の検品が行われ、各部仕口の強度確認、大扉・内障子の調整などを行い納品の運びとなります。

この時に業者は、納品安置の前に施主宅へと伺い、古い仏間の床の水平や、仏間全体の湿気などを確認、さらには開眼・遷座法要などのアドバイスを行い、当日の法要にあたって正式な仏具荘厳に必要な供物の話もしておきます。

そして最後にお寺に伺い、住職に報告とお礼を伸べるわけですが、出来るならば法要当日にお邪魔して、本尊の遷座のお手伝いまでが出来れば業者としては合格です。

ここまでして、仏壇店としての業務が終了することとなります。

修復の際、仏壇に「家紋」を入れることはできるか?

少し話がそれますが、修復の際にあるお客様からの要望の中で比較的多いものはなんだと思いますか?

それは、「修復の機会に仏壇に家紋を入れることは出来ますか?」というものです。

その回答として、家の宗旨が浄土真宗であれば少し難しいと思われます。

理由として、技術的には何ら問題はないのですが、浄土真宗の教義にある他力という文言がネックになります。

この“他力”とは、誰もが聞いたことがある有名な言葉、「他力本願」のことなのです。

つまり阿弥陀如来の本願“絶対他力”が示されている以上“我家”の「我」を象徴する家紋を掲げることははばかられるということです。

それでも絶対に不可能なのかと言われれば、そうではありません。

どうしてもいう方は、仏壇下段の引戸などに描かれた花籠や御所車などの蒔絵のところに小さく描くとよいでしょう。

それとは逆に、浄土真宗以外の宗旨の方は本尊より高い位置でなければ大きく家紋を入れても問題ありません。

下段引戸の鏡板の最初の蒔絵を消して、そこに家紋を入れるとよいでしょう。

まとめ

仏壇という一見、難しいテーマのお話でしたが、大切なことは実にシンプルです。

先祖を想う気持ちや、心落ち着ける場所が家にあるという安心、そしてその想いが形となって代々引き継がれていく。

目に見えにくいそれらが集約されたもの、それが仏壇だと言えます。

古くから伝わる私たちの文化や想いにそっと寄り添ってみませんか。

大切な何かを伝えていくためにも……。

著者:炉扇居士