終活

無縁墓にならないための永代供養|お墓をつぐ人がいない方へ解説

お墓を管理する人もお墓参りをしてくれる人もいない「無縁墓」の存在をご存知でしょうか。
実は、無縁墓は高齢化社会の深刻な問題の一つです。

少子高齢化や核家族化が進む中、亡くなった後でお墓を守ってくれる親族がいないことに悩む高齢者は少なくありません。
終活中を考えている方の中で、お墓をついでくれる人がいない場合、お墓問題はどう処遇するのが正解なのでしょうか。

近年、増えている「永代供養」は、こうした悩みを解決してくれる一助となるかもしれません。
さっそく詳しく考えていきましょう。

無縁墓が増えている!

無縁墓が増えている!
老婆
老婆
無縁墓ってのが増えているんだって?
ヒツジさん
ヒツジさん
ええ、全国どこの霊園や墓地でも年々増えているみたいです
老婆
老婆
みんな墓参りにいかなくなったもんねえ。
墓守なんて言葉もとんと聞かなくなったし、先祖代々のお墓を大事にする意識も薄れちゃったんだろうね。
最近ハヤリのパワースポット巡りみたいに、墓参りすると運気が上がるってブームでも起きれば、少し無縁墓も減るんじゃないかい?

お墓の継承者や縁故者がいなくなってしまったお墓のことを、無縁墓と言います。
少子高齢化や核家族化が進んでいる日本では、お墓を継ぐ人がいない無縁墓が年々増加傾向にあります。

2013年に熊本県人吉市が行った実態調査では、私有と市有の墓地にある市内計1万5128基の墓のうち、約6500基の42.7%が「無縁墓」だったと公表され、当時、衝撃的なニュースとして話題になりました。
でもこれは過疎化が進む地方都市の人吉市だけに限った話ではなく、全国的に無縁墓は数多く存在し、増え続けているのです。

お寺や自治体などの霊園でも、その管理者は基本的に毎年、墓地の管理費を集金します。その管理費を払う人がいなくなり管理費回収ができなくなると、官報などに記載して呼び掛けたり、墓所に立て札を立てるなどして、縁故者からの申し出を待ちます。
一定期間以上(通常は1年から5年程度)たっても、お墓の継承者・縁故者が現れない場合は「無縁」とみなされ、墓地全体の衛生管理や安全性維持のために管理者側でお墓を処分してもよいと法律で定められているのです。

無縁墓と認定されると、お墓の中の遺骨は取り出されて無縁供養塔などに収められて他の無縁仏と一緒に合葬され、墓石などは砕いて道路工事などに再利用されるのだとか。

この場合の撤去費用は、お寺・霊園が負担したり、自治体などの行政が負担することになります。そのため最終的には、墓地を利用する人たちの管理費に含まれて管理費が上がってしまったり、税金を使うことになるなど、他人や世の中に迷惑をかけてしまうことになってしまいます。

「無縁墓」は他人事ではない

「無縁墓」は他人事ではない
老婆
老婆
昔は墓問題といえば「生前、いびられた姑と一緒の墓に入りたくない」なんてのが多かったけど、最近は「死んだあと自分の墓を守る人がいない」って悩まなきゃならないのかい
ヒツジさん
ヒツジさん
寂しい話です
老婆
老婆
嫁いびりしなくても、墓参りすらしてくれないなら、いびったもん勝ちだね!
ヒツジさん
ヒツジさん
優しくていいお婆ちゃんなら、きっとお嫁さんやお孫さんたちも墓参りに来てくれますよ

子供がいる・いないに限らず、残された血縁者や親族が先祖代々のお墓を守っていくというスタイルは、極端な核家族化・人口減少化の一途をたどる日本では、今後継続できないものなのかもしれません。

今、実際にお墓の後継者がいない人だけではなく、現状では子供がいても一人っ子同士の結婚となれば、両家のお墓と仏壇を子供世帯に残すことになってしまうことから「我が子に余計な負担をかけたくない」と、先祖代々受け継いできたお墓の「墓じまい」を考えたり、「永代供養」を希望する親世代もいます。

さらに子・孫、その先の世代を考えたとき、先祖代々の墓を守ってくれる人が果たしているかどうかは、だれにもわかりません。

実際、2009年に全国の男女600人を対象として第一生命経済研究所が行った調査によると、自分の墓が「無縁墓にならない」と答えた人は13.9%だったのに対し「いつかは無縁墓になる」という回答は50.3%にのぼりました。

墓を継ぐ親族・縁者がいないとき、どうすべきか

墓を継ぐ親族・縁者がいないとき、どうすべきか
ヒツジさん
ヒツジさん
お墓を継いでくれる方はおいでですか?
老婆
老婆
長男夫婦が継いでくれるんじゃないかと思ってるんだけど……
ヒツジさん
ヒツジさん
じゃあ安心ですね
老婆
老婆
仕事が大変みたいで、息子のほうが私より先に過労死しそうだよ。
まだ小さい孫に墓守りを頼むのも気の毒だし、本当に無縁墓ってのは他人事じゃないねえ

お墓を継承してくれる親族・縁者が思い当たらない場合、自分の遺骨をどのように処遇するとよいのでしょうか。
通常のお墓以外の対処法を考えてみましょう。

血縁のない人と一緒にお墓に入る

友人同士や入所した老人ホームの仲間などと一緒にお墓に入り、NPO法人などに管理を頼み、残った友人たちにお参りしてもらうというスタイルで、血縁を頼らないお墓に入る人もいます。

墓守代行を業者に委託

未来永劫、というわけにはいきませんが、ひとまず10年・30年といった期間、お墓のケアを業者に委託するという方法もあります。
代行業者は定期的にお墓に出向いてお墓の清掃などを行い、花や水の取り換えをしてくれます。

主に遠隔地に住む遺族が、実家の墓を手入れしてもらうために利用しますが、終活の一環として自分の死後のお墓の管理を墓守代行業者に託す事例もあるそうです。
こうしたサービスを市の社会福祉協議会などが行っている場合もあります。

散骨して墓を持たない

遺骨を海や山にまいたり、宇宙に打ち上げたりなどして散骨し、墓自体を持たないというスタイルも増えています。
遺骨の一部からダイアモンドを人工的に生成して、遺族が身に着けるアクセサリーに加工して保管してもらうというのも、散骨のひとつといえるかもしれません。

レンタル墓を利用する

お墓を十年間など一定期間借りるというレンタル墓も近年、登場したお墓の新しいスタイル。
直接の遺族がお参りに来てくれそうな期間だけお墓をもって、契約期間が過ぎたら永代供養などに移行することで、遺族やその次の世代の負担を減らしたいと考えて利用する人、転勤が多く今の場所には通常のお墓を建てられないちう人などがいるようです。

納骨堂を個人のお墓にする

お墓の代わりに納骨堂に個人単位で遺骨を受け入れてもらい、そこをお墓代わりにするという方法もあります。
納骨堂の中には、個人それぞれの位牌が並んでいるので、遺族は納骨堂で自分の親族の故人に向かってお参りができます。

土地が高い都会ではこうしたスタイルでお墓代わりに遺骨を受け入れる納骨堂を新設する寺が増えています。

永代供養を選択する

お墓の継承がいない人が、最も多く選択しているのが「永代供養」です。
永代供養は、寺院や霊園などに一定期間(十七回忌〜五十回忌など)、お墓と遺骨を供養・安置してもらうスタイルです。

契約期間後にかかるお墓の撤去費用も事前に支払っておくので、無縁墓になったことで起こる様々なトラブルを未然に防ぐことができます。
またお墓自体がない場合は、最初からの合同墓や納骨堂に合祀されるケースもあります。

永代供養とは〜メリットやその具体的な内容〜

永代供養とは〜メリットやその具体的な内容〜
老婆
老婆
永代供養ってのは、未来永劫ずっとお墓を守ってくれるって意味じゃないのかい?
ヒツジさん
ヒツジさん
実は契約するとき、管理してもらう期間を決めるんですよ
老婆
老婆
なんだか、仏様もケチくさいねえ。
死んだらあの世に行きっぱなしなんだから、ずーっと面倒見ておくれよ
ヒツジさん
ヒツジさん
供養自体はお坊さんがずっとしてくださるんですけれどね

実は「永代供養」は、古くからある仏教用語ではありません。
無縁墓が増え始めた30年ほど前から、取り入れられたお墓の管理の仕組みを現したものです。

永代供養は、この先お墓を管理する人がいなくなってしまう人が、亡くなる前にお墓の手入れや供養、お墓そのものの撤去などを含めお寺や霊園に費用を払って委託するものです。
契約期間が過ぎると、無縁墓と同様にお墓自体は撤去し、遺骨は納骨堂や合葬墓に収骨されますが、その後も僧侶によって供養は行い続けてもらえます。

注意 : 永代供養と永代使用料の違い

永代供養に似た言葉に「永代使用料」がありますが、これは全くの別物です。
永代使用料とはお墓の土地代的なもので、墓地を代々継承して使い続けるために支払う金額のことです。

永代供養のメリット・デメリット

メリット

生前に永代供養の手続きをしておけば、無縁墓になる心配がありません。
つまり、お墓参りに来てくれる人がいなくても、僧侶によってずっと供養をしてもらえます。

また、遺骨をお墓に安置する期間を決めることで、墓地の使用料が通常に比べると割安になります。
(ただしそのお墓を家族などに受け継ぐことはできません)。

通常、お墓をお寺に建てる場合はその寺の檀家であることが条件になりますが、永代供養のお墓は檀家制度を設けていない場合が多いので、その後に遺族がお寺と寄付金や年ごとのお布施などといった檀家づきあいをする必要がありません。

さらに実際のところ、後継ぎがいない場合は、新たにお墓を買うのが非常に困難です。
先祖代々の墓がない(入れない)人で、お墓を守る人がいない場合は、永代供養は非常に便利なシステムと言えます。

そして最大のポイントは、墓の処遇を巡って自治体や他者に迷惑をかけることがないことです。

せっかく終活をしているのですから、人生最後は「立つ鳥跡を濁さず」といきたいもの。
現状、お墓をついでもらう人がおらず、先祖代々の墓に入るつもりがあるならば、永代供養を検討する価値があります。

デメリット

一度、合祀墓に遺骨を入れてしまうと、他の人の遺骨と混じってしまうため、後で遺骨を取り出すことはできません。
最初からお墓を建てずに永代供養をしてしまい、数年たって「やっぱりお墓に」と思ってもできなかった、と後悔したケースもあるようです。

また従来の「お墓」の概念とは違うため、地方に住んで寺の檀家となり、実家のお墓を守っている親族などからすると「ちゃんとした供養になっていない」と不満に感じる人もいます。
価値観が違うといえばそれまでですが、自分の死後、偲んでくれる人の気持ちを完全に無視するのも悲しいものです。
生前に、自分の考えを話して理解してもらう努力も必要でしょう。

納骨堂などに遺骨を安置する場合は、施設の都合上、お線香をあげることができない場合もあります。

遺族がお参りに来た時「こんなはずではなかった」とがっかりしないように、しっかり施設の決まりや利用法を確認しておくことが大切です。

永代供養の種類

永代供養には、大きく分けて2つのスタイルがあります。
ひとつは、実際に自分(あるいは先祖代々)のお墓に埋葬してもらい、一定期間はお墓の管理・供養をしてもらったのちに、遺骨を合祀するもの。
もうひとつは、最初からお墓を持たず(先祖代々のお墓がある場合は墓じまいして)、納骨堂や合葬墓に遺骨を安置するものです。

永代供養の費用

通常のお墓をたてるには、墓石に2〜300万円必要と言われ、お墓を持ち続ける限り管理費が必要です。
一方永代供養は、お墓を建てなければ墓石代は必要ありません。
また合祀の費用は、施設によって様々ですが1万円台から可能なところもあります。

一般的な合祀墓(最初からお墓を持たないスタイル)の永代供養の場合は、10〜30万円程度が目安といわれています。
お墓を建てた場合は、数十万円〜200万円が相場です。
もちろんこれは、墓地の場所やお墓の広さ、墓石のグレードなどによって価格が変動します。

管理費は契約時の料金に含まれていることが多く、死後費用がかかることはほぼありません。
なかには死後一定期間は管理費・会費などが必要な施設・サービスもありますが、未来永劫払い続けるものではありません。

永代供養を考えるときに考慮すべき点

永代供養を考えるときに考慮すべき点
ヒツジさん
ヒツジさん
やっぱり自分のお墓はあったほうがいいですか?
老婆
老婆
墓石は重そうだから、なくてもいいよ。
それにお墓があっても、遠けりゃなかなか墓参りに来てもらえなくて、本当に無縁墓になっちゃいそうだし
ヒツジさん
ヒツジさん
最近は、いつでもどこでも墓参りできるネット内のバーチャル墓地というのもあるらしいですよ
老婆
老婆
そりゃいいねえ。
でも、ちょっと待って!
うちのじいさんも友達も、スマホも使えないから墓参りしてもらえないよ。
墓参りとボケ予防に、スマホの使い方、教えてやらなくちゃ!

永代供養は、近年急増している供養のスタイルですが、まだまだ賛否両論があります。
これがスタンダードとして定着するかどうかは、あと数十年は待たなくてはならないでしょう。

けれども増え続けている無縁墓の対策としては効果があるといえるでしょう。
とくに、お墓を継ぐ人がいない方、先祖代々の墓じまいを考えている方にとって、永代供養がお墓問題解決のひとつの策になるかもしれません。