生前整理

生前整理はなにが大事?思い出の品を家族に残すための注意点とは

生前整理はなにが大事?思い出の品を家族に残すための注意点とは

終活のメインとなる活動が「生前整理」です。家の中を片付けて不要品を処分し、家族に渡したい思い出の品を整理する作業。自分の財産や貴重品をしっかり把握して、どのように誰に残すかを決める作業。

どれも大変そうで、数年前から「やらなきゃ、やらなきゃ」と思いつつも、一日伸ばしにしている人も少なくないのではないでしょうか。

生前整理は「立つ鳥跡を濁さず」と、自分の死後に家族が困らないようにしっかり自分の人生にケリをつけるだけでなく、実は残された人生を快適にすっきりと「生きていく」ためにも、とても大切な作業なのです。

これまでの人生の身じまいなのですから、急いで一気に片付けるよりも、思い出をかみしめながらゆっくりと、でも着実に行いたいものです。だからこそ、思い立ったが吉日。今日から準備を始めましょう。

生前整理への気構えから、具体的な手順、注意点までをまとめました。

生前整理は「これからの人生」をよりよく生きるための準備

生前整理は「これからの人生」をよりよく生きるための準備
老婆
老婆
生前整理なんて、いよいよ老い先が短い人の死に支度みたいで、気が滅入るわ
ヒツジさん
ヒツジさん
確かに死に支度と考えると気が進みませんよね。逆に、生前整理は、あと20年、30年楽しく生きるために必要な作業だと考えてみませんか?そうすれば、前向きに取り組めると思いますよ
老婆
老婆
余生のための整理、ねえ。でもこれから30年も生きたら、2度目、3度目の生前整理をしなくちゃならなそうで、面倒だねえ
ヒツジさん
ヒツジさん
1度やってみてコツをつかめば、それからは日々のちょっとした整理だけで大丈夫ですよ。大がかりにやるのは、最初の1度目だけです

「生前整理」と聞くと、老婆さんのように自分の死をイメージしてしまい、気乗りしない……と、思うかもしれません。しかし生前整理は自分の死後、家族に面倒をかけないために行うだけではありません。

これまでの人生で手に入れた身の回りの物を整理することで、自分自身の人生を振り返り、心の中で整理することができるのも大きなポイントです。また、すっきりと片付いて本当に必要なものだけが置いてある家の中で暮らせば、身体が衰えていっても、けがや事故なく快適に暮らすことができます。

生まれてからこれまでに、たくさんの思い出と身の回りの物が集まりました。退職や子供の巣立ちなどで少し時間に余裕ができ、身体も自由に動く今、不要なものを手放し、これまでの思い出をきっちり整理することで、人生を仕切り直し、次の人生に余裕を持って挑むことができます。

生前整理とは

自分が亡くなった後、残された家族が相続問題や家の片付けで苦労しないように、生きている間に自分や家族の財産・持ち物・家財道具などを整理し、相続について遺言を残しておくことです。

最近の「終活ブーム」のためか、子育てが一段落した40代・50代など、まだ老年とは言えない世代の人たちが、終活のスタートとして「老いる前に財産・持ち物・家財道具などを整理」する「老前整理」を行うケースも増えています。これも、大きくみれば生前整理のひとつ、というか生前整理の準備段階と言えそうです。

一方、亡くなった後で残された家族が、故人の財産や持ち物、家財道具などを整理することを「遺品整理」と呼びます。生前整理をしていても、亡くなる直前まで使っていた身の回りの品や不用品の処分、実際に遺産分けなどを行う作業は必要です。

しかし、故人がきちんと生前整理をしておけば、遺産整理は最小限で済み、家族の負担が減らせると同時に、相続についてのトラブルも回避できます。

今日から生前整理を始めるべき理由

人生は何が起こるかわかりません。不慮の事故に遭うこともあるでしょうし、重い病気が見つかって即入院という事態は、誰にでも降りかかる可能性があります。そうなってからでは、家の片付けや財産・思い出の整理は思うようにできません。

また、生前整理を自分でするには、少なくても1か月、時間がかかれば1年以上かかります。入院や老人ホームへの入所、子世帯との同居などが決まり、家を引き払うことになって慌てて始めるのは、本当に大変です。

近年は、不用品処分の業者や、生前整理専門のサービスもありますが、自分の人生に関わった品物は、たとえ不要になったものでも大切なものばかりのはずです。できたら自分できちんと吟味したい、と思いますよね。

だからこそ、身体が自由に動く、今この時からはじめるべきです。充実した終活ライフを送るためには、今日からの生前整理が欠かせないのです。

大切な家族のためにもしっかり生前整理を

生前整理は、残していく家族のためにも必要です。持ち主が亡くなった後の膨大な遺品の整理は、忙しい現役世代の子供たちには金銭的にも時間的にも非常に大きな負担になります。

亡くなった親から相続した地方にある大きな実家。親は遺産のつもりで残したのに、まるでゴミ屋敷のように不用品だらけで「その処分のために業者を頼み、何度も高額な交通費をかけて片付けに通わねばならず、数百万円もかかってしまい大きな負債を残された気持ちになった」などという、笑えない実例もあります。

また急遽、遺品の整理を行わなくてはならなくなったとき、巣立った子供たちが残していった荷物が家のあちこちに散乱している状態では、子供たちが残しておきたかった思い出まで「不用品」「ゴミ」として処分されてしまうかもしれません。

財産の整理や遺言を残さなかったために、残された家族間で不要なトラブルが起こる可能性もあるのです。自分の手でしっかりと生前整理を行ってこそ、残される家族への愛情が伝わります。

生前整理を行うメリット

生前整理を行うメリット

前向きな気分で生前整理に着手するために、生前整理を行うとどんなメリットがあるかを考えてみましょう。

家の中での事故を防ぎ、快適に暮らせる

不用品がたくさん家の中にあると、掃除のときなどに物が崩れてケガをしたり、つまずいて転んでしまったりするリスクが高くなります。また歳を重ねて自由に動きにくくなると、室内を段差のないバリアフリーにリフォームすることが多いですが、せっかくバリアフリーにしても不用品がごろごろしていてはその効果が十分に生かせません。

家の中に使わないもの、邪魔なものがなければ、それだけ快適に暮らすことができますね。

家族の絆が再確認できる

生前整理には、子世代の協力が欠かせません。思い出の品を一緒に整理しながら、当時の思い出話に花を咲かせたり、力を合わせて作業を行うことにより、家族間の会話が増えます。

改まって話すと照れ臭いことも、作業をしながらなら自然な会話の中で伝えられるかもしれません。子供たちが幼かったころから今までのエピソードや記憶をお互いにかみしめ、家族の絆を再確認できるでしょう。またこうした共同作業自体が、お互いにとっての素晴らしい思い出になります。

自分の本当に「大切なもの」を伝えられる

納戸にしまってあるはずの、自分だけの宝物や実は価値のある骨董品、先祖代々受け継がれている品の価値は、他の家族に伝わっていない場合も少なくありません。もし、自分で整理せずに業者に任せてしまったり、死後、何も知らない家族が整理をしたら、そんな「大切なもの」も、他の不用品同様「ゴミ」として廃棄されてしまう可能性があります。

身体が動かなくなっても「これだけは死ぬまでずっと持っておきたい」ものや、「自分が亡くなった後は家族・友人の誰かに譲って大切にしてほしい」ものについては、あらかじめ周知しておくことが大切です。また実際に、家の中を整理してみるとずっと忘れていた「自分だけの宝物」を発見し、心が弾むこともあるやもしれません。

大切にしたいものをしっかり守るためにも、生前整理は行う価値があります。

相続時のトラブルを回避できる

生前に預貯金や不動産、貴金属類などの財産をきちんと整理しておけば、亡くなった後の相続もスムーズに行うことができます。もし認知症になってしまうと財産をどのように整理し、誰に相続させるかなどの意向をしっかり伝えることもできません。

元気で頭がはっきりしている間に、財産を整理して遺言などでその相続法も指定しておけば、自分が亡くなった後の大きな心配事がひとつ、確実に減るのです。

不用品はお金に変えられることもある

処分業者の手にかかれば、すべてゴミとして処分されてしまうかもしれない不用品。でも古い家具などは、オークションにかけたり骨董屋に売ることで、意外な高値になる場合も多いのです。またこつこつ集めた蔵書のなかに、意外な稀覯本が混じっていることも。

自分にとっては不要でも、それを必要とする人もいるわけで、上手に処分すればお金に変わることもあります。また、不要な本や仕事で使っていた古い道具なども、資料として寄付することができれば、捨てるよりもずっと気持ちよく処分することができそうです。

生前整理は認知症予防になる

生前整理に着手すると、家族といろいろなことを相談したり、話し合う必要が出てきます。他者とコミュニケーションを密にとることや話題に集中することは、脳の血流を活性化して認知症予防や症状の緩和に効果があります。

認知症によって起こる記憶障害は短期記憶障害から始まります。ごく最近のことが覚えていられなくなるのですが、エンディングノートに書きこんだり、繰り返し生前整理の手順を確認することによって、短期記憶の能力を向上させることができます。

記憶をはっきりとさせ、認知症を予防してくれるとなれば、生前整理は「死に支度」どころか「若返り」の手助けになりそうです。

老婆
老婆
なるほど、生前整理にはいいことがありそうだね
ヒツジさん
ヒツジさん
家の中がすっきりして、家族とも仲良くなれて、しかも宝物が発掘できるかも、となれば探検家の気分でチャレンジできそうですね
老婆
老婆
そうだ! 若いころのへそくり!どこだっけ、えーと、たんすだったか鏡台だったか……。あれを探し出さないうちは、死ねないよ!今から生前整理するから、ちょいと手伝ってちょうだいな
ヒツジさん
ヒツジさん
い、今からですか?

実際に生前整理をする前に行うこと

実際に生前整理をする前に行うこと

さて、思い立ったが吉日です。さっそく不用品の整理でも、と思いがちですが、1日2日では終わらないのが生前整理。

長期戦の生前整理が、途中で挫折してしまわないためにも、念入りな準備が必要です。いきなり実際の作業に着手するのではなく、いくつかの下準備をしてから行うと、生前整理はとても効率よく行うことができるのです。

ではその準備についてみていきましょう。

周囲の人に宣言する・協力を依頼する

半生を送った荷物の整理は、時間も手間もかかる長丁場です。やり遂げるには周囲の協力と応援が欠かせません。それにはまず「生前整理を始めようと思う」と宣言し、家族や周囲の協力を仰ぐことが大切です。

大きな家具はひとりでは動かせませんし、ゴミ出しや掃除など人手はあればあるほど便利。また、巣立った家族が残していった荷物は、その本人が整理・処分したほうがあとでトラブルになることもないでしょう。

子供や孫と思い出の品を整理するのは、家族の歴史を話して聞かせる絶好のチャンスでもあります。ひとりでするとだんだん面倒になる整理・片付けも、会話しながら行えば、かえって楽しくなってくるものです。

また、不用品を処分するときも、家族の誰かが「それはぜひ私が使いたい」と、申し出てくれるかもしれません。今の自分にとっては不要なものも、ゴミとして出したり、業者に引き取ってもらうより、親しい人に使ってもらえるほうが気持ちよく処分できます。

巣立った家族が残した荷物は、その本人に処分・整理を頼んだ方が

また、家を離れている家族に「○○の行事で使う食器は、ここにしまっておくね」「もし入院などの事態になったら、このバッグに身の回りの品を入れてあるから」などと、どこになにがあるかを伝えるよい機会にもなりますね。

思い出せる限りの貴重品のリスト作り

家の中を整理していけば、忘れていた貴重品類が出て来るとは思いますが、作業前に思い出せる限りの貴重品をリストアップしておくと「うっかり捨ててしまった」という失敗を防ぐことができます。

貴金属・アクセサリーなどのほか、他人にとっては「大切」とは感じないかもしれない自分だけの宝物などを手伝ってくれる家族が勘違いして処分したりしないように「これだけは絶対捨てないもの」を書き出しておくとよいでしょう。

不用品処分のルール作り

今、終活を行っている世代は、物を大切にする習慣が身についています。不用品処分を始めると「これはまだ使える」「いただきもので新品だから」などと、なかなか処分する決断ができなくなってしまいます。

そこでまず不用品処分のルールを作り、捨てるかどうかの決断はこのルールに従うことにします。

たとえば洋服の場合「サイズが合わないもの」「2年以上着ていないもの」は、不要とみなして処分します。本などは「この本棚に入る量以外は処分」「全部で〇冊まで」などという具合です。

このルールがあれば、要・不要の決済がスピーディに行えますし、物を処分する(捨てる)後ろめたさも、あまり感じなくて済みます。物のジャンルごとに、自分が残す量や残すもの(捨てるもの)の基準を決めていきましょう。

大物から? 小物から?

できるところから着実に整理していくのが、生前整理を完遂する秘訣ではあるのですが、家全体を整理するとなると、どこから手を付ければいいのか迷ってしまいますね。とくに考えるのが「家具などの大物から行くか」「引き出しの中の小物から片づけるか」です。

それぞれに利点・欠点がありますので、周囲の協力の状況やご自身の正確に応じてどちらから手を付けるか考えてみましょう。

小物からスタート

気楽に作業できるのが、小物からスタートの生前整理の利点です。「今日はテレビ台の下の引き出し」などと、小さな範囲に絞って整理を行うことで心理的な負担も少なくなりますし、小物の整理が終わった後で家具などを出すとき、その中身をどこかに一時置きする手間もなくなります。

ただし、何日か小物の片づけをしたところで飽きて(満足して)しまい、結局は単なる片で生前整理というほどの成果が出にくくなるリスクあります。身体が動かしにくい、疲れやすい、というときは、小物整理から始め、自分でできる範囲で片付けが終わったところで家族の協力を仰ぎ、大物処分に着手するとよいでしょう。

大物からスタート

まずは大きな家具などのうち、処分するものを決めて、それを整理(廃棄・リサイクルに出すなど)すると、部屋の中に作業しやすいスペースができるのが、大物を先に整理する利点です。ただし、家具の中に入っていた荷物類を出さなくてはならないこと、出した荷物を一時箱詰めしておくなど手間がかかり、部屋の中が雑然としやすいのがネックです。

それでも大物から整理すると、本格的に生前整理に取り組む覚悟ができ、どんどん生前整理が進みます。少し重いものを運んだり、ゴミ出しをする作業が自分でできるなら、最初に思い切って大物を何点か処分すると、がぜんやる気がでるはずです。

協力者と相談しながらスケジュールを組む

貴重品リストや不用品処分のルール、どこから整理を始めるかを自分なりに決めたら、手伝ってくれる家族と相談しながら、スケジュールを組んでいきます。たとえば小物は平日にまとめておいて、家族が手伝ってくれる週末に家具を運び出すとか、自治体の粗大ごみの日に家族に大型家具の運び出しを手伝ってもらう、などの計画を立てるわけです。

体調や天候、手伝ってくれる家族の用事などにより、計画は変更もあるでしょうが、計画を立て直して調整したり折り合いをつけるのも楽しみのひとつ、くらいに割り切って、準備を始めましょう。

老婆
老婆
娘に手伝ってもらうのは、気が重いねえ。私にとっては大事なものなのに「あれもこれもいらないでしょ」ってズケズケ言うんだもの
ヒツジさん
ヒツジさん
だからルールをご自身で決めるんです。必要か不要か決めるのは老婆さんですから
老婆
老婆
ほぅ、私がルールブックなんだね。お宝(捨てないもの)リストがうんと長くなってもいいかのい?
ヒツジさん
ヒツジさん
すべてきれいさっぱり整理する必要はありませんよ。リストに載らない不用品を処分するだけでも、立派な生前整理です

生前整理をするのはこのようなもの

生前整理をするのはこのようなもの

家の中にある不用品を整理するだけが、生前整理ではありません。実際に、生前整理するものにはどのようなものがあるか見ていきましょう。

貴重品

ここでいう貴重品は、資産価値のある物だけでなく、処分したくないもの(宝物)も含みます。生活に必要かどうかではなく、生きている間手元に置いておきたいものは何かをしっかり整理・確認します。

金融資産の整理

現金や預貯金、株式などの金融資産を再確認し、証書や印鑑類をまとめます。家や土地の権利書なども資産ですから、これもきちんと整理して、エンディングノートなどに、一覧にして書き出しておきましょう。

忘れてはならないのが、借金などのマイナス資産です。こちらも後に家族が困ることがないように、借入書や借入残額などをきちんと記録に残しておきます。

インターネットで株の取り引きや仮想通貨取引をしていたり、ネット銀行を利用しているときは、口座番号とそれぞれのパスワードもエンディングノートに書いておきます。

遺言状・形見分けリスト作り

家族間での余計なトラブルを回避するためにも、行っておきたいのが遺言状の作成です。自分の資産を慈善団体に寄付したい、血縁ではない人に譲りたいなどという場合はとくに、弁護士などに相談しながら遺言状を作成しておくことをお勧めします。

形見分けリストも作っておくとよいでしょう。金銭的な価値のある物のほか、可愛がっているペットやお気に入りの着物などを自分が亡き後に持っていて欲しい人を決め、書面に書いておくことで、あなたの思いがしっかり伝わります。

デジタルデータの整理

終活世代のなかにもスマホやパソコンを使用されている方は少なくありません。そうしたデジタルデータの整理・処分も大変重要な生前整理です。

家族に残しておきたい写真などは、しっかりフォルダ分けしたりDVDなどに移しておきましょう。人に見せたくない写真やデータは削除してしまうか、ハードディスク削除ソフトなどを使い、自分の死後に不用意に他人の目に触れないようにします。

またSNSや会員登録をしているサイトの退会手続き、訃報通知を家族に頼む場合は、IDやパスワード、サイト名をエンディングノートに書いておきます。注意したいのは、ネットで会員になっている有料サービスです。

自分が亡くなった後まで料金を請求されることがないように「退会処理してほしいサイト」として、リストを作っておくとよいでしょう。その場合、IDやパスワード、サイト名のほか、引き落としに使用しているクレジットカードの番号や名義なども明記しておきましょう。

【ハードディスク削除ソフト】

指定した日時、またはパソコンの最終起動から、何日間(これも指定が可能)かパソコンが起動されなかった場合、自動でパソコン内のファイルを削除できるというものです。見られたくないデータのみを指定して削除してくれるもの、ハードすべてのデータを削除するものなどさまざまです。

無料のフリーソフト「遺言ソフトー死後の世界」は、指定したファイルのみを削除することもでき、指定したタイミングで「遺書(メッセ―ジ)」を表示させる機能もあります。

不要品の処分

家の中の家具や日用品、衣類などのうち、不要なものを処分します。洋服や本、雑貨など自分自身の持ち物はもちろんのことですが、食器類なども子供が家にいたころほどたくさんは必要ありませんので、不要なものは処分しましょう。

意外に多いのが、お歳暮や結婚式の引き出物などでもらったものの、一度も使わないまましまい込んで何十年という品々です。「いつか使うかも」「もらったものだから捨てるのは悪い」「新品なんだし」と今まで保管してきたこれらの品々ですが、よく考えればこれまでずっと使わなかったのですから、これからも使うことはほぼないはずです。思い切って処分すると、家の中がすっきりするはずです。

思い出の品の整理

亡き夫の服、子供が小さかった頃の絵、たくさんのアルバムなど、思い出の品は実際につかうあてはないものの、捨ててしまいのは偲びない大切なものたちです。とはいえ、これまでため込んだ思い出の品すべてをそのまま保管していたら、すっきりした生前整理にはなりません。

複数のアルバムは、写真を厳選して1冊にまとめ、いつも見られるように居間に置いておくことにしたり、捨てられない写真は子供に頼んだり、写真サービスに頼んでデジタル化してコンパクトに。子供の絵やお習字、手紙も写真に撮ってデジタルデータに保存したら、現物は処分してもよいでしょう。

また家族の形見類は、万が一大災害が起こった場合にも持ち出せるような小さなものをひとつだけ残すとか、洋服を思い切って小さなぬいぐるみに作り替えてバッグにつけておくなど、ミニマム化して残すのがよいでしょう。

若いころのトロフィーや賞状類は、一緒に手伝ってくれる子供たちにしっかり自慢したあと(?)で、写真などにとって、処分してみては。

どれも大切な思い出の品ですが、たくさんあってもいつもとりだして眺められるものでもありません。できるだけ数を減らしコンパクトにしたり、エッセンスだけをリメイクして大切に保管しましょう。

小さくなっても、デジタル化されても、処分しても、あなたの思い出は小さくなったり消えたりしません。生前整理の機会に、じっくり眺めたり周囲に話して、当時のことを再び思い出し、しっかり心に刻んでおきましょう。

人間関係の整理

人生の最終幕をよりよく生きるために行う生前整理で見直したいもののひとつに、人間関係があります。長い人生の間には、様々な人と関わりができたでしょうが、実のところ少々煩わしいお付き合いもあるのでは?

義理で送りあう年賀状や中元・歳暮だけの付き合いの人、気乗りしないグループとの付き合いなど、新たな人生には必要のない人間関係もこの機会に思い切って整理してしまうのはいかがでしょうか。近年、生前整理のひとつとして「年賀状じまい」をする人も急増しています。

「年賀状じまい」は、今回限りで年賀状を出すのを辞めますと宣言するものですが「縁切り宣言なんて、ことを荒立てるようで嫌だ」と思うなら、出さないと決めて自然にフェードアウトでもかまいません。ネットのSNSなどでも、仕事や子供関係のしがらみでとりあえずつながっていた「単なる知り合い(未満)」を整理するだけで、ずいぶんすっきりした気持ちになるはずです。

「義理の付き合い」を処分すれば、そのぶんを本当に大切にしたい人と過ごす時間に充てられるのですから、人間関係の整理は、非常におすすめです。

老婆
老婆
人間関係の整理も生前整理のひとつなんだねえ
ヒツジさん
ヒツジさん
人間関係はかさばりませんが、いろいろ面倒ですものね。身の回りの荷物や財産を整理するついでに、人間関係もすっきりすると、人生の次のステージへ身軽に飛び込めそうですね
老婆
老婆
でもねえ。面倒な人間関係を片っ端からぶったぎると、気が付けばひとりぼっちになってしまいそうだよ
ヒツジさん
ヒツジさん
人間関係の整理は物以上に熟慮が必要ですね

不用品はこうして処理する

不用品はこうして処理する

家の中の整理・片付けが億劫な理由のひとつに「不用品の処理」があります。ゴミをまとめて、重い袋や箱を運んで捨てるというだけでも面倒で重労働なのに、最近は、ごみの分別も細かくて、いらないものを片っ端からゴミ袋に詰めればよし、というわけにはいかないのが実情です。

自治体のごみとして出す場合は、収集カレンダーと相談しながら作業をすすめ、不用品をまとめた翌日や、翌々日あたりに収集日に出すタイミングを狙うと、いつまでもゴミ袋や段ボールが室内を占拠することがありません。

品物の種類ごとに、ゴミとして捨てる以外の処分法をまとめました。「今月は本」「来月は洋服」というように、ジャンルごとに整理・処分していくのが効率的です。

本・雑誌

自治体の古紙回収などに出すのもよいですが、絵本や地元の昔の資料などは、図書館に寄贈できないか問い合わせてみるとよいでしょう。図書館でひきとってくれなくても、小児科や子供が集まる児童館などでは絵本を喜んで引き取ってくれる場所があります。

またブックオフや古書店など、蔵書を買ってくれる業者もいます。店頭に運んでいかなくても、まとまった量であれば家まで業者が来て査定してくれたり、売りたい本を着払いで送るサービスを行っている業者もあります。

稀覯本などでないかぎり、高価な買い取り額は期待できませんが、たとえわずかな金額でも、捨てるよりマシですし、本を捨てることに罪悪感のある人も、欲しい誰かに読んでもらえるので、気分良く処理できます。

日用品

まだまだ使える食器や調理器具などの日用品は、地元の公園やコミュニティスペースなどでよく行われているフリーマーケットを利用してみてはいかがでしょう。自分でフリーマーケットに出店するのは大変でも、子供世代に「売り上げはあげるから」といえば、積極的に処分に協力してくれるかもしれません。

また最近、リサイクルショップはネットのフリマなどに押されて仕入れに苦慮しているので、家まで買い取りに来てくれるサービスを行っているところも多いです。いわゆる普通の日用品、しまい込んでいたもらいものの新品の毛布や食器類などは、リサイクルショップに持ち込むと手軽に処分できます。

日用品の中でも骨董品的な価値があるものは、やはり専門の骨董品業者に査定してもらうか、ネットのフリマアプリなどを利用して出品してみるのもおすすめです。とくにフリマアプリは、スマホで写真を撮り、簡単な操作で出品するだけで、予想外なものが高値で売れるケースもあるので、SNSなどを普段使っている人なら1度挑戦してみるとよいでしょう。

洋服・バッグ・靴

大昔の物でも、ブランド品だったりすると驚くような値がついたりするのがバッグや靴、洋服類です。

ブランド買取業者に問い合わせると、着払いで品物を送って査定してもらえるサービスがありますし「これは!」という品は、フリマアプリで売ると、けっこうなお小遣い稼ぎになるかもしれません。

単なる古着であっても、重さで買ってくれる業者もあるので、諦めるのは早いです。たとえ捨て値であっても、ゴミとしてすてるよりはマシ。ゴミ袋が自治体指定の高額な地域の場合は、ぜひ利用すべきでしょう。

家具・家電

自治体にもよりますが、大物の家具や家電類は、有料で引き取りというところが多いです。コミュニティのフリーペーパーの「あげます」コーナーに投稿して、引き取りに来てもらうとか、知り合いに必要な人がいないか聞いてみるのもよい手です。

近くにリサイクルショップがあれば引き取りを依頼するのもよいでしょう。ひとつひとつを粗大ごみとして出すには、量が多いなどというときは「不用品引き取りサービス」を利用するとよいでしょう。

トラック1台(積載量によって料金は変化)でいくら、という料金設定のほか、部屋数に応じて料金が決まっている場合もありますが、急いで不用品を処分するときは、こうしたサービスを利用するのもアイディアです。ただし不用品処理の業者には怪しい業者もいるので、高額な値段を請求されたり、引き取ったゴミを山などに不法投棄されたりしないように、しっかりリサーチしてから依頼することが大切です。

ヒツジさん
ヒツジさん
リサイクルショップやフリマアプリは利用したこと、ありますか?
老婆
老婆
ないよ。子供の幼稚園のバザーにお皿をだしたことはあったけど
ヒツジさん
ヒツジさん
意外にいい値がついて、お小遣い稼ぎになるようですよ
老婆
老婆
そりゃいい、やってみようかね。でも売ったお金で、他の人が出品してるものを買い込まないように気を付けないと元の木阿弥だね
ヒツジさん
ヒツジさん
そこ、要注意です(笑)!

自分では手に負えないときは、生前整理アドバイザーに相談

自分では手に負えないときは、生前整理アドバイザーに相談
老婆
老婆
生前整理の方法をあれこれ教えてもらったけれど、自分一人でできるか自信がないわ。ひざも腰も痛いし……
ヒツジさん
ヒツジさん
そんなときは、生前整理の計画を立てたり、様々な手続きの相談などにも乗ってくれて、生前整理を手伝ってくれる「生前整理アドバイザー」が便利ですよ
老婆
老婆
その人、私のへそくりを猫ババしたりしないだろうね?

老婆さんのように「生前整理の意義はわかったし、やりたいとも思うがひとりでは自信がない」という終活世代は少なくないことでしょう。家族に協力を頼みたくても、子世代は子育てや仕事で忙しかったり、遠距離に住んでいたりなど、気軽に手伝ってほしいといいだせないと気がねする親世代は多いのです。

そんなときに、頼りになるのが「生前整理アドバイザー」です。生前整理の作業計画を立てたり、実際に不用品などの整理を手伝ってくれるほか、不用品を処分した後の部屋の片づけ、遺言作成時の法律的な手続きなどの知識がある人もいるので、生前整理全般について相談できるところが、不用品処理業者などとの大きな違いです。

生前整理をしたいが、自分の手には負えないと思ったら、一度相談してみるとよいでしょう。

この記事がきっかけで「生前整理、しなくちゃなあ」と感じたら、今日からなにか始めてみましょう。まずは「不用品処分のルール」作りでも、貴重品や自分の宝物のリストアップ、手近な引き出しの整理でもなんでもかまいません。

のんびりと、休み休み、でも着実に生前整理をコツコツと積み上げていけば、これからの人生がより快適でクリアになっていくことは間違いありません。