仏壇

供養産業の盟主「はせがわ」の歴史と今後の展望や業界の進むべき未来とは

東京証券取引所一部上場企業、資本金40億円で売上は200億、その店舗数116店と、紛れもなく仏壇墓石業界において国内最大の企業といえる「はせがわ」です。

「はせがわ」の歴史

1929年、福岡県直方市で間口2間の小さな仏具店として長谷川才蔵氏により創業されました。

初代才蔵氏は、実直な人柄で周囲の信頼を得て現在の“仏壇のはせがわ”の基礎を築くこととなります。

そして、当時小倉御坊と言われた永照寺(北九州市小倉北区)住職に請われ、その境内地に支店をだす迄になるのですが、その間、龍谷大学を卒業した長男裕一氏が入社して、販売部門と製造部門を一本化、さらに1976年には、“株式会社はせがわ”に改称して、販売面では“お仏壇のはせがわ”として広く知られる様になります。

その後、九州山口はもとより、関東での出店にまで繋がっていきます。

創業から2代目へ

2代目社長である裕一氏は、初代才蔵氏の築いた信用と経営理念に基づき、強い使命感のもと経営を展開し、現在の「はせがわ」の母体を構築していくのですが、当時の裕一氏の使命感を語る上で、外すことの出来ない有名な話が業界に伝わっています。

供養の大切さを伝える「はせがわ」の思い

1963年、三井三池炭鉱での炭塵爆発事故により458名もの方が亡くなるとう大事故が発生しました。

この事故を受け、裕一氏は事故三日目には厚生課の責任者を訪ね面談を求めましたが、当然のごとく強い反発を受ける事となりました。

しかしそこで挫けることなく、不慮の事故で亡くなられた方々への供養の大切さを説き続けた結果、死亡者名簿の提示を受けることが出来ました。

裕一氏は、その名簿をもとに丁重な弔問を続け、後に遺族の方からも感謝の言葉を頂くまでになったのです。

これは仏壇販売に携わる者の社会的責任であるとの信念に基づいた行動です。

そしてこの事は、後の仏壇販売方法に大きな変革をもたらす事となり「はせがわ」にとって、さらには仏壇業界全体としても画期的な事例として語り継がれる事となりました。

卓越した技術力を有するはせがわ美術工芸

「はせがわ」の事業展開の柱である新仏訪問・多店舗展開に加え、その側面から「はせがわ」を支えてきたのは“はせがわ美術工芸”です。

その卓越した技術力で、西本願寺や清水寺など国宝級の内陣修復を成し遂げ、その企画力と技術力を業界に知らしめ「はせがわ」の躍進に大きく貢献する事となりました。

創業家からの脱却

2013年に東証1部上場を果たし、名実ともに業界トップの企業となりました。その後裕一氏の弟、房生氏が社長に就任します。

仏壇市場の円熟化による市場飽和での経営の先細りも懸念されましたが、房生氏が実行した数々の施策により「はせがわ」は見事に経営を安定させました。

これ以降「はせがわ」は同族経営から脱却し、4代目井上健一社長、さらには「はせがわ」叩き上げの5代目江崎徹氏が社長に就任するなど、新たな成長変革期を迎えようとしています。

今後の展望についての提言

今後の「はせがわ」や仏壇業界に対する個人的な提言をしたいと思います。

第四世代の仏壇の開発、そのヒントは本山にあり!?

これまで仏壇業界は、新たな仏壇の開発をする事によりその市場を喚起してきました。

第一世代は金仏壇、第二世代は唐木仏壇、そして第三世代は現代仏壇ともいわれる家具調新型仏壇です。

仏壇保有率50%を超え、市場の円熟化が声高に叫ばれる中において、第四世代の仏壇の登場は業界の期待するところです。

本来、金仏壇の仕様の有り様については、本山阿弥陀堂の内陣及び余間の造りを忠実に再現したものこそが、最上品と位置づけられるべきです。

ですが、現在までにそのような仏壇は存在しません。同様に、仏具についても正式な荘厳に適した寸法が作られていない物が多々見受けられます。

ここで重要な事は、本山の意思を形にした仏壇を製作する必要があるのではないかと言う事です。

その意思によっては、先祖返りをして金仏壇が再び脚光を浴びる事につながる可能性もあります。

あるいは、現代の時代背景に合わせてスマホなどを活用する形をもたない仏壇が出てきても不思議ではないと考えます。そして、この様な仏壇を製作する際には、必然的に本山認証品としての流通が考えられ、新しい需要を掘り起す事も可能でしょう。

すでに本尊については、本山より下附を受ける事が前提となっていて、本山認証制度の可能性を後押しする流れであるといえます。

これは、従来の唐木仏壇においても同様です。

「はせがわ」及び仏壇業界への期待

この業界には長い歴史があります。

言うまでもなく各分野の職人により、研鑽され、引き継がれ、現代の仏壇にもその技術が活かされていますが、このままでは技術の衰退は目に見えて明らかです。

そしてその衰退を防ぐには、業界の裾野が広がる様な具体的な動きを起す必要があります。例えば伝統工芸分野の技術の転用が可能な業種の開拓、仏壇・仏具に限らず新しい商品の開発等、業界全体での取り組みが重要であり、その働きかけが出来るのは「はせがわ」ではないでしょうか。

必要とされる業界へ・・・取り組むべき課題とは

日本は仏教徒が大多数を占める国ですが仏教各宗派は社会現象に対し無関心に見えます。

とりわけ子どもが対象となるいじめや虐待、それらからなる子どもの自殺、また独居老人の孤独死や貧困が原因となる死など、まさかとは思いますが死んだ後の事なら引受ますがそれ以前の事は、政府による施策の問題とでも思っているのではないかと勘ぐってしまうほどです。

老父
老父
そうかのぉ。わしは無関心とは思わんぞ。 それこそ、地域のお寺などでは命の大切さや、子供たちの教育の重要性を説いておるぞ。
ヒツジさん
ヒツジさん
確かにお寺などでそのような説法や、活動を目にすることもありますね。 それでも、根本的な問題解決に繋がっていないという現実は否定できません。
老父
老父
それはそうかも知れんが、お寺や仏壇屋が責任を負うべき問題ではないと思うが……。
ヒツジさん
ヒツジさん
そうでしょうか?死ということを取り扱う業界だからこそ出来ることや、やるべきことがあると思いませんか?

葬式仏教と言とわれて幾久しいですが、棺桶に潜り込んで何時までも寝たふりをしていてはいけません。

これまでの個々の寺院での取り組みについては評価されるべきことですが、その単位が小さ過ぎるのです。

本来こうした弱者の死については、本山や全日本仏教会なりが委員会を設置して、対応すべき問題だといえます。

そして、これらの問題に本気で向き合うことは、今後の仏壇業界に必要な事なのです。

仏壇販売に従事する者の使命として、業界全体で取り組み、基金を拠出し、財団を設置することで、恒久にこの問題に取り組んでいけるはずです。

さらに言えば、その活動を実現に向かわせることが出来るのは、「はせがわ」ではないでしょうか?

業界のさらなる発展の為に、また、必要とされる業界として生き残っていくためにも、深考すべき事案だと考えます。

老父
老父
なるほど、考えもつかなかったことじゃ。これが実現すれば素晴らしいことじゃな。
ヒツジさん
ヒツジさん
はい。是非とも実現して頂きたいと思いますし、きっと可能なはずです。 そうすることで、みなさんに必要とされる存在になって欲しいですね。

炉扇居士