日本では仏教式の葬式をすることが大多数ですが、宗教や慣習に囚われずに葬儀を自由に行う場合もあります。宗教儀礼に基づいて行うのでなく、無宗教で自由に葬儀を行うことからこのような葬儀は無宗教葬式や自由葬と呼ばれます。
仏教などの宗教葬なら経験があるため、なんとなく流れやマナーなどを知っているという人は多いでしょう。しかし無宗教葬式は珍しく内容に決まりがないので、流れやマナーがわからないという人は多いはずです。
そこでこの記事では、無宗教葬式でかかる最低費用や参列者のマナー、自由葬のデメリットなどを紹介します。無宗教葬式を円滑に進めるために役立ててください。
もくじ
無宗教とは?
無宗教とは特定の宗教を信仰しない、もしくは信仰をそもそも持たないという思想や立場のことです。
無宗教者は世界中に多くの存在し、第三勢力とも呼ばれます。2006年に電通総研が行った調査によると、日本では53%の人が無宗教(宗教を持たない)としており、世界で4番目に無宗教者が多いです。
しかし無宗教は無神論とは異なるもの。(無宗教は宗教的な主張がないことを意味しますが、無神論は神の存在を否定する、宗教的な主張を持つためです。) そのため習慣的に、仏教式の葬儀含む宗教的行為を行うことが多いです。
無宗教でやる自由葬の最低費用は?
自由葬は無宗教でやるので、決まった相場というものはなく、安く抑えようと思えば安く抑えることができます。
例えば直葬と呼ばれる通夜や告別式をせずに臨終、お迎え・安置、納棺の後、出棺してすぐに火葬する方法を選べば最低費用は15万円程度です。通夜や告別式がなく、火葬の前にお坊さんに供養してもらいたいという場合でも、費用が19万円程度の会社もあります。
ただしこの料金にお墓代は入っていません。しかしお墓代を含めても最低費用は非常に安いです。
自由葬で直葬をした場合、お墓は海洋散骨か永代供養墓を選ぶことがほとんど。海洋散骨であれば遺族自ら行えば無料です。また代行業者に頼む場合でも1‐5万円程度で済みます。永代供養墓の場合でも10万円程度で済みます。
したがって臨終から全てを終えるまでにかかる費用を安く抑えたい場合には、お坊さんを呼ばずに直葬を選んで、遺骨を代行業者に海洋散骨してもらえば合計14万円程度で済ませることが可能です。
無宗教葬のメリット
日本人には無宗教者が多いですが、慣習的に宗教葬を行っている人がほとんど。しかし宗教者や宗教儀礼なしで行う無宗教葬が近年は増えてきている状態です。
以前は宗教葬が多かったものが、現在は自由葬が増えているのには理由があります。ここでは無宗教葬が増えた理由となるメリットを紹介するので、自分の求めているものと合うのか確認してください。
宗教的な伝統や慣習にしばられない
最も一般的なメリットは無宗教葬であれば宗教的な伝統や慣習などに縛れて葬儀を行うのではなく、遺族や参加者がしたい葬式を行うことができることでしょう。
通常、葬儀には仏教や神道、仏教であれば日蓮宗なのか日蓮正宗なのかなど信仰する宗教や宗派によって決まった葬儀形式があります。そしてそれぞれの形式にしたがって葬儀を進めるのが普通です。
しかし無宗教葬であれば、葬儀形式などはありません。ほぼ全て自由です。中には献花の代わりに、故人が好きだった音楽をその場で演奏する音楽葬と呼ばれるサービスを提供している葬儀会社もあります。
宗教葬であれば考えられないことですが、それだけ自由度が高いということです。
宗教的な対立があっても問題なく参加可能
自由葬は宗教とは関係がありません。そのため万が一遺族間で宗教的な対立があっても問題なく行うことができます。これが2つ目のメリットです。
故人が生前に葬式の形式について明確な意思を残している場合は問題ありません。しかし故人が明確な意思を残さず、故人の父型の親族と母型の親族で宗教や宗派などが異なる場合には葬儀をどの宗派に則って行うのか揉めることがあります。
そして決定後も異なる宗派の葬儀にはでることができないとして、遺族の参加が難しくなることがあるようです。
しかし自由葬では、宗教は関係ありません。そのため異なる宗派だから参加できないという事態を防ぐことが可能です。
費用を柔軟に決定できる
通常の葬儀を行うと最低でもある程度の金額はかかってしまいます。宗教や宗派、参加人数などによって異なりますが、全国平均は約121万円です。(他にも開眼供養など様々な費用がかかります)
もちろん宗教葬でも参加者を減らして、葬儀全体でかかる費用を抑える方法もあります。しかし宗教葬には相場があるので、大きく減らすことは難しいです。
一方自由葬は、故人や遺族がやりたい葬式を行うことができます。もちろん火葬やお墓の費用など必要な費用はありますが、安く抑えようと思えば、宗教葬よりも無宗教葬の方が安く抑えるのが容易です。直葬を選んで遺骨は海洋散骨を選べば最低費用を15万円程度に納めることもできます。
無宗教葬のデメリット
無宗教葬には自由に行える、宗旨の違いが問題にならない安く行えるという大きなメリットがありました。しかし無宗教葬にもデメリットがあります。ここでは無宗教葬のデメリットを紹介するので、参考にしてください。
理解を得られないケースもある
日本人には無宗教の方も多いですが、葬儀の際には慣習的に仏教式の葬式をすることが多いです。そんな中でも無宗教葬が広まった背景にあるのが、現在のお寺や僧侶の商業主義化と通夜の告別式化。
まず商業主義化という点について、本来宗教上は宗教にかかる費用は気持ちとして支払うものです。しかし現在は「○○円もらえないなら葬式はしない」というように最低価格を設定するお寺や僧侶が少なからず存在します。
次に通夜の告別式化という点です。通常、通夜は故人と親密な人で行われるもので、告別式はより多くの人が集まるものでした。しかし現在では通夜に多くの人が参加し、告別式には参加しないという事態が起きています。
そのため告別式を遺族と少数の参加者でやるのであれば、葬儀も少数の人間で(場合によっては安く)やってしまおうと考える人が増えました。
そこで同時期に生まれたのが家族葬と自由葬です。そして家族葬は、あっという間に広く受け入れられるようになりました。しかし自由葬は、まだそれほど一般的ではありません。
そのため参加者の中には違和感を覚える方もいます。もし付き合いのあるお寺などがあれば、墓に入ることを拒否される可能性もあります。永代供養墓に納めるという方法もありますが、関係の悪化の可能性は考慮するべきです。
自分たちで1から決めないといけない
無宗教葬の自由に葬儀内容を決めることができるというメリットと表裏一体のデメリットです。宗教葬であれば良くも悪くも慣習的にやるべき事が決まっているため、それに従ってさえいえれば迷うことは少ないでしょう。
しかし自由葬の場合はマニュアルや慣習がなく自由に決めることができるからこそ、遺族の裁量が大きく自分たちで葬儀の内容を決めていかないといけません。
故人が生前に無宗教葬の葬儀の希望を残していれば問題は少ないでしょう。しかしそうでなければ、宗教葬の場合よりも遺族への負担が大きくなることもあり得ます。
もしこの記事を読んでいる方が終活の一環として読んでいるのであれば、自由葬を考えている場合、葬儀はどうするか、お墓はどこにするかなど詳細な計画を練っておくと良いでしょう。
参加者が混乱する可能性がある
葬儀中の流れやマナーなど仏教式の葬式であれば似ているため、宗派が違っても参加者が混乱するようなことはないでしょう。また不安であれば当該宗派の葬儀についてインターネットで検索すればすぐに調べることもできます。
一方自由葬だと、参加者にとっては未知です。大事なお別れの場でマナー違反や失敗をしたくないと参加者は思っているはずですが、何もわからず混乱する可能性があります。
そのため自由葬を選択した遺族の側がしっかりと参加者に配慮して、葬儀の注意点やマナーなどがあれば事前に参加者に伝えましょう。そうでないとせっかく参加してくれた方々にストレスをかけてしまうことになりかねません。
無宗教葬儀の流れ
無宗教の自由葬では、基本的に決まった流れはありません。遺族が決めるものです。しかし何も手がかりがないと決めるのにも苦労するでしょう。
そこでここでは自由葬の流れを理解するために葬儀の流れの1例を紹介します。(告別式でも同様の流れになることが多いです。)
参加者の入場
まずは宗教式の葬儀同様に入場してもらいます。宗教葬では焼香の順番(故人に近い人の順番)で入場して着席するものです。しかし無宗教では、焼香はないので席は自由に決めることもできます。ただし、献花の順番に入場してもらうのがおすすめです。入場の際に故人の好きだった音楽を流すことも可能です。
開式の辞
入場が済んだら司会者が開式をします。
黙禱
参加者全員で黙?をします。勘違いする方も多いですが、黙禱は目をつぶる必要はありません。黙って祈りながら故人に話しかけます。時間は広島や長崎の平和式典や、終戦記念日の式典などに習って1分間程度行うのが普通です。
献奏
故人の趣味や経歴、故人の思い出などをビデオやナレーションを使用して紹介します。故人が好きだった音楽を生演奏する場合も多いです。
弔電の紹介
送られた弔電を読み上げます。何通読み上げるかは事前に相談しましょう。宗教葬では3?5通程度を芳名から文章まで読み、10通程度を芳名だけ読むことが多いです。
感謝の言葉
遺族の代表者から参加者へ感謝の意を伝えます。
献花
献花をします。通常は最初に遺族、次いで親族、参加者という順番が多いです。この献花の順番を決めたら、その順番で入場しておいてもらうとスムーズに進行できます。
お別れ
参加者全員で故人とお別れをします。
閉式の辞
遺族代表者が葬儀の閉式を伝え、葬儀は終了です。
出棺
葬儀場から出棺して、火葬場に行きます。
これで一通りの流れが終了です。この後会食に行くこともあります。
自由葬の参加者のマナーは自由?
無宗教葬儀には決まったマナーがないとはされていますが、実際には暗黙の了解のマナーあります。
略式の喪服を着用
自由葬でも特に遺族などから服装に関する指示がない限り、喪服を着用していくのがマナーです。ここでいう喪服とは
男性の場合は
- 黒のスーツとネクタイ
- 靴
- ベルトに白のワイシャツ
女性の場合は
- 黒のアンサンブルやワンピース
- ストッキング
- タイツ
- バッグ
- 靴
などを指します。
ただし葬儀の案内状に平服でと記載がある場合でしたら、男性はダークスーツ、女性は地味な色のワンピースやスーツを選びましょう。なお仏教式の葬儀で持参するような数珠は必要ありません。
香典は遺族の指示に従う
香典は宗教と密に関わるものなので、無宗教の自由葬に香典は必要なのか迷う人も多いでしょう。基本的には、香典は遺族からの指示がなければ持っていくのが無難です。
通常通り不祝儀袋や白無地の封筒を使いましょう。そして故人の名前を、薄墨を使ってフルネームで記載し御香典や御花料と表書きも済ませてください。
ただし自由葬を生前に故人が選んでいた場合、遺族に香典返しする負担をかけたくないと考えて選んでいたということが多いです。そのため無宗教葬の場合には香典を辞退している場合は、指示に従いましょう。
献花は前の人のやり方を参考に
右手に花、左手に茎が来るように花が渡されるので受け取ります。そして祭壇に進む前に、遺族へ一礼しましょう。花を手向ける場所に付いたら、茎が献花台の方へ向くように持ち替えて、そのまま献花台においてください。そしてその場で手を合わせて頭を下げ黙?し、一礼して席に戻ります。
まとめ
このページでは故人や遺族のしたい葬儀を行うことができる自由葬について紹介してきました。最低費用やメリット、デメリットを特に詳しく説明したので、自由葬を選ぶ前に自分の求めるものと自由葬が合っているのかを考えてみてください。