天台宗の葬儀・告別式を知る前に、天台宗のことを少し理解してみませんか。
その宗派を理解することは、葬儀や告別式を行う上で非常に重要なことです。
天台宗とはどのような宗派なの
天台宗とは密教、顕教、禅などの要素をまとめ、後の日本仏教の基礎となった教えです。さらには、鎌倉時代以後の全ての新宗派の母体とも言われています。
- 宗祖/伝教大師最澄(767~822)
- 経典/法華経
- 本尊/釈迦如来、 阿弥陀如来などの場合もあります
- 本山/比叡山延暦寺
- 寺院数/約4200ケ寺
- 信者数/約312万人
天台宗の葬儀の特徴とは
顕教及び密教儀礼を併用する形がとられ、法華経により懺悔し罪を滅し、光明真言の功徳により救われることを願い、又その間に行なわれる例事作法の阿弥陀経により極楽浄土に生まれ変わるとする儀式です。
葬儀式次第
- 導師入場/導師及び式僧が入場着座し葬儀が始まります。
- 列讃/仏の臨終を讃える声明を唱えます。
- 光明供修法/阿弥陀如来の来迎により仏となる作法です。
- 随法回向/法界に供養回向をします。
- 列讃
- 鎖龕(さがん)、起龕(きがん)/棺の蓋を閉ざす儀式・棺を起す儀式です。
- 奠湯(てんとう)、奠茶(てんちや)/霊前に密湯を供える・霊前にお茶を供えます。
- 引導/涅槃の世界にいざなう儀式です。
- 下炬(あこ)/松明か線香をもって空中に梵字と円を書き、故人の徳を称えます。
- 弔辞拝受
- 弔電拝受
- 法施/読経を行い、これより焼香が始まります
- 光明真言/大日如来の威力により、無明の世界から浄土へと転生させる為の真言を唱えます。
- 総回向/回向文を唱え葬儀が終わります。
- 導師退場/導師及び式僧が退場し葬儀式が終わります。
告別式式次第
- 衆僧入場
- 開式の辞/司会者により告別式の始まりを告げます。
- 列讃
- 鐃鉢三匝(にょうはちさそう)/お釈迦様が亡くなった時、奏楽をもって供養した故事にちなみ、ドラ・シンバルに近い打楽器を奏じます。
- 阿弥陀経/極楽浄土に成仏する事を願い読経をします。
- 観音経/阿弥陀仏とともに観音菩薩の加護を願い読経します。
- 鐃鈑打流し/ドラに近い打楽器を奏じます。
- 衆僧退場
- 親族代表挨拶/参列者に対して告別式、出席の御礼を述べます。
- 閉会の辞/司会者により告別式の終わりが告げられます。
天台宗の葬儀では散華という儀式を行なう事があります。 導師が棺に花びらの形をした紙を撒きますが、これを散華と言います。 阿弥陀如来が来迎した喜びに人々や諸天が花びらをまき迎えたという故事に因み、昔は蓮華の花びらを撒いていましたが、現在では花びらの形に彩色をほどこした紙片を華籠(けこ)という金色で宝草華唐草の透かし彫をほどこした大変美しい籠に入れ、棺に向かって降り注ぐ様に撒きます。
天台宗の戒名とは
戒名は、院号・道号・戒名・位号の四つから出来ています。
・院号とは、戒名の最初に付けられる号の事です。
例)○○院 生前にお寺に功績のあった方や大変信仰心が篤かった方などに授けられます。
・道号とは、院号があればその次に、無ければ戒名の上に最初に付けられる号の事です。
例)○○院□□ 生前の性格や職業などを表す文字を使います。
・戒名とは、宗派や故人の名前から一文字を引用する事が多く見受けられます。
又、戒名は男女年令を問わずニ文字をもって表し、この部分を戒名というのが正式な表現です。(例)○○院□□△△
・位号とは、戒名の下に付けられる尊称の事で、男性は信士・居士、女性は信女・大姉となります。(例)○○院□□△△☆☆
天台宗では梵語で釈迦如来を表すバク、阿弥陀如来を表すキリーク、大日如来を表すアなどを梵字で書き記す事もします。
尚、中陰の期間、白木位牌に使用しますが中陰が明ければ本位牌にこれらの梵字を書き記す事はしません
天台宗の数珠の用い方とは
天台宗の数珠は平たい玉を用い、108連の主玉、1つの親玉、4つの天玉から成っています。
更に親玉からは、弟子玉が連なり、先端には梵天房が付きます。
焼香に於いては、108連の数珠を一捻りしてニ重にした状態で弟子玉を下にして左手で持ち、右手で香をくべるようにします。
また、両手に掛けてお参りする時は、人差し指と薬指の間に掛ける様にして用います。
又、合掌の最初と最後に数珠を擦り合わせる様にします。
天台宗葬儀での香典袋の表書きとは
御霊前・御香典・御香料など他の宗派と変わりません。
また、結び切りの白と黒、双銀の水引のついた香典袋を使用し、薄墨を用いる様にします。
香典の目安
香典は気持ちです。あくまで一つの参考にして下さい。
- 友人、知人/5,000~10,000円
- 身内/30,000~100,000円
- 親戚/10,000~30,000円
- 職場 /5,000~10,000円
最後に
葬儀に向き合う必要に迫られ時、何を基準に判断をすべきでしょう?
喪主の希望、予算、規模、様々な観点から考える必要がありますが、一つの考え方としては、故人らしい葬儀というものがあります。
生前の考え方や生き様などを思い起こす事で、故人が望むで有ろう葬儀で送り出してあげたいと願うのも遺族の自然な感情といえます。
炉扇居士