葬儀・法要・お墓

浄土宗での葬儀、告別式 信仰から戒名の付け方

老父
老父
これまで様々な宗派別の葬儀や焼香などを学んできたが、浄土宗の葬儀はその進行に少し特徴があるようじゃが?
ヒツジさん
ヒツジさん
どうでしょう。細かく言えば、それぞれの宗派でその葬儀や告別式に様々な違いは見られます。それらすべて覚えるのは大変かもしれませんが、参考と記載されたところはしっかりと押さえて学んで行きましょう。

浄土宗とは

浄土宗とは末法思想が蔓延していた時代にあって、阿弥陀仏に帰依し、南無阿弥陀仏と唱えれば極楽浄土に生まれ変わることができると説き、その後の浄土信仰発展の礎となった宗派です。

  • 宗祖/円光大師法然(1133~1212)
  • 経典/浄土三部経(無量寿経、観無量寿経、阿弥陀経)
  • 本尊/阿弥陀如来
  • 本山 /華頂山知恩院
  • 寺院数/約7000ケ寺
  • 信者数/約606万

浄土宗葬儀の特徴とは

故人の極楽浄土への往生を願い、参列者による念仏一会、僧侶により引導を渡す儀式、下 炬引導(あこいんどう)などの特徴が見られます。

葬儀式次第

  1. 奉請(ぶじょう)/仏の入場を祈願します。
  2. 懺悔/仏に対して悔い改める事を誓います。
  3. 剃度作法/剃刀を用い髪を落とす仕草。
  4. 三帰三竟/仏、法、僧に帰依をします。
  5. 授与戒名/戒名を授けます。
  6. 開経偈/お経の尊さを讃えます。
  7. 誦経(ずきょう)/ 無量寿経を唱えます。
  8. 発願文/故人の成仏を願います。
  9. 摂益文(しゅうやくもん)/無量寿経に登場する念仏行者は仏の守護を受け守られているという偈を唱えます。
  10. 念仏一会/数多く念仏を唱えます。
  11. 回向/念仏の功徳が多数の人々の成仏につながる様に願います。

告別式

・序文

  1. 入堂
  2. 香偈/香をたき仏の降臨を願います。
  3. 三宝礼(さんぽうらい)/仏、法、僧に礼拝します。
  4. 奉請/諸仏にお願いをします。
  5. 懺悔/生前の罪を懺悔します。

・正宗文

  1. 作梵/梵字の四智讃を唱えます。
  2. 合鉢(がっぱち)/鉢を奏でます。
  3. 下炬(あこ)/ニ本の松明を持ち、一本を捨て円相を描き、南無阿弥陀仏と念仏を十回唱えます。
  4. 弔辞
  5. 弔電
  6. 開経偈
  7. 誦経(ずきょう)/四誓偈を唱えます。
  8. 焼香
  9. 摂益文(しょうやくもん)/念仏行者は仏に守られるという偈。
  10. 念仏一会/感謝をもって数多くの念仏を唱えます。
  11. 回向/念仏の功徳により多数の人々が救われることを願います。

・流通分(るつうぶん)

  1. 総願偈/仏道を貫く誓い。
  2. 三身礼(さんじらい)/阿弥陀仏に固く帰依する事を明らかにします。
  3. 総仏偈/すべての仏を浄土にお送りします。
  4. 退堂

浄土宗の葬儀では、故人を極楽浄土へ送り出す為に、下炬引導(あこいんどう)の儀式を行います。 導師がニ本の松明を持ち、一本を捨て(厭離穢土を表す為に捨て去ります)、残った方で円を描き(欣求浄土の表われとして描きます)、下炬の偈を唱え残った一本も捨てます。 ちなみに現在では、松明の変わりに線香等を使用します。

また、参列者が僧侶と一緒に故人の成仏を願い、南無阿弥陀仏を十回以上、一定時間唱える十念や、焼香の後に行う念仏一会などが浄土宗葬儀の特徴です。

豆知識

この厭離穢土(えんりえど)・欣求浄土(ごんぐじょうど)は徳川家康の覚悟を示す戦の旗印として大変有名です。

浄土宗の戒名とは

ヒツジさん
ヒツジさん
気になる戒名のお値段。戒名の付け方や種類と戒名料の相場」でも学んだ戒名ですが、ここではおさらいの意味も含めて、浄土宗の戒名を見ていきましょう。

浄土宗において戒名は、生前に授戒もしくは五重相伝を受け授かるのが本筋であると言われています。 尚、授戒・三帰(仏、法、僧、に帰依する)とは、五戒(不殺生、不偸盗、不邪婬、不妄語、不飲酒)等の戒律を守ること。 五重相伝とは、宗祖法然上人の教えを中心に歴代上人の教えを学び終えた檀信徒に誉号(他の宗派で言う道号の事)が授けられます。

・院号/昔は貴族、武士など限られた階層の人々にのみ授与されていましたが、現在では寺院や社会に大きく貢献した人物に授与されます。

・誉号/浄土宗のみで使用する号で、他宗での道号にあたります。また、五重相伝や授戒を経て授けられます。

・戒名/仏教の教え、戒律などを理解し守る事のできる品格を持つ人に付けられます。

・位号/人格や品格に応じて付けられます。

位号の種類

・居士・大姉/成人に達した男女に付けられ、特に仏教徒として礼節学徳に優れた人物にのみに用います。

・禅定門・禅定尼/心と行いを律する事ができる人物で、法に照らしても安定している品格を持つ人物に用いられます。

・信士・信女(善士・善女)/15才以上の男女に付けられ、仏教の戒律を理解し守る事のできる人物に用いられます。

・童子・童女(善童子・善童女)/15才以下の男女に付けられます。

・孩子・孩女/2~3才の子供に付けられます。

・嬰児・嬰女/1才の子供に付けられます。

・水子/死産、流産の胎児に付けられます。

ヒツジさん
ヒツジさん
例えば、○○院□□△△居士(女性の場合、大姉)との戒名の場合、○○院は院号、□□は誉号、△△は戒名、居士は位号となっています。

白木の位牌に新帰元と書かれる事がありますが、これは中陰の期間中(49日間)のみに付けられるもので、その意味は本来の世界に還ると言う事です。 中陰が明け、本位牌に作り直すときは新帰元を付ける事はありません。

浄土宗の数珠の用い方とは

浄土宗の数珠は、二輪で金具の付いた独特の形をしています。

合掌の仕方は親指に二つの輪を掛け、親指の後ろ身体側に垂らし、手の掌の内側に挟む事はしません。

叉、この際、福玉の付いていない方の輪を左側の親指以外の四本指に掛け、福玉の付いている指は人差し指を抜いた残りの三本の指に掛け、握る様にしましょう。

尚、浄土宗では数珠を擦り合わせ音を出す事はしません。

豆知識

決められた作法で数珠を繰り、男性用は32,400回、女性用は64,800回念仏を数える事ができる様になっています。

又、浄土宗では、男性は3万回、女性は6万回念仏を唱えれば極楽浄土に往生する事ができると言われており、男性用の数珠を三万浄土、女性用の数珠を六万浄土と言う事もあります。

浄土宗葬儀での香典袋の表書きとは

浄土宗では御霊前・御香典と書くのが一般的です。

また、結び切りの白と黒、双銀の水引の付いた香典袋を使用し、薄墨を用いる様にします。

ヒツジさん
ヒツジさん
香典袋の裏側、もしくは中袋に住所、氏名、金額を書いておく事は最近の葬儀では一般的なマナーとなっています。

香典の目安

香典は気持ちです。

あくまで一つの参考にして下さい。

  • 友人、知人/5,000~10,000円
  • 身内/30,000~100,000円
  • 親戚/10,000~30,000円
  • 職場 /5,000~10,000円

最後に

ヒツジさん
ヒツジさん
浄土宗での葬儀におけるマナーや、流れなどをお伝えしてきましたが、大切なことは故人を想う気持ちです。 また、喪主として突然の事態に向かう際に注意しなければならない事項は意外と多いものです。 最後に、それをお伝えして締めくくりましょう。

喪主の希望、予算、規模、様々な観点から考える必要がありますが、葬儀に向き合う必要に迫られ時、何を基準に判断をすべきでしょう?

故人が望む葬儀で送り出してあげることはもちろんの事、忘れてはならないのはお寺と火葬場の都合を確認することです。

ごく稀にですが、火葬場は友引、正月などに業務を休んでいる地域もあります。

その場合は、葬儀の日取りを先延ばしにする事もあり得ます。

特に、年末年始に不幸事があった時にはまず、火葬場の業務の確認をしておく事が大切になります。

また、お寺の行事などと重なり、住職の都合がつかない時には、近くの親しいお寺を紹介してくれるなどの対応をしていただけます。

葬儀社との打ち合わせにより、喪主の望む内容と金額で葬儀が執り行われますが、当日に慌てる事のない様、世話人とともに、式次第、挨拶の内容等あやふやにすることなく、全てに確認をする様にしましょう。

炉扇居士