ネットやTVでも話題になった「お坊さん便」をご存知ですか?
ざっくり言えば「電話やネットでお坊さんを手軽に依頼できるサービス」なのですが、「お経をあげることや宗教活動に値段をつけるなんてけしからん!」と仏教界から物言いがついたことで、一気に世間の注目を集めました。
そこで「実際にはどんなサービス?」「利用した人の率直な感想は?」「トラブルは起こっていないの?」 などなど「お坊さん便」にまつわる素朴な疑問を利用者の口コミや各方面からの批評・評価などをもとに、分析・解説しました。
「お坊さん便」のメリットとデメリットを探り、「お坊さん便」が本当に「使える」サービスなのかどうか考えていきましょう。
もくじ
「お坊さん便」って、いったいどんなもの?
テレビのワイドショーで取り上げられるほど話題になっていて、本や洗剤を買うのと同じように、簡単にお坊さんが呼べるサービスのことです。
元来、お坊さんは日頃からの古いお付き合いの中で依頼を行うもの。さらには、今までのお坊さんと具体的に何が違うのでしょうか。
お坊さん便について詳しく解説していきます。
お坊さん便とは
「お坊さん便」とは、インターネットや電話から申し込むことができる僧侶手配サービスです。
以前は仏式の場合、葬儀や法要などを行う際は、檀家になっているお寺に依頼してお坊さんに来ていただくというのが一般的でしたが、このサービスなら檀家になっているお寺がない人でもお坊さんにお経をあげてもらったり、法要を執り行ってもらったりすることができます。
つきあいのあるお寺に頼む場合は、お坊さんに「お布施」という形でお礼を支払いますが、その場合、明確な金額は決まっていません。お布施はあくまで「気持ち」を包むものとされているからです。
でも実際は、地域ごとにだいたいの相場が決まっているようで、あまりに安い額を包むとお坊さんから突き返されたり、事後に法外なお布施を要求されるケースもあります。
一方の「お坊さん便」は、サービスの内容(法要・法名の授与など)ごとに「●●円」とストレートに料金を提示しています。
お寺の檀家になると、行事ごとのお布施以外にも日頃のお寺とのお付き合いや諸経費(檀家としての会費やお墓の管理費など)にお金がかかりますが、「お坊さん便」は、1回ごとの依頼・支払いのため、こうした経費は不要です。
ただし、Amazon経由の「お坊さん便」では葬儀へのお坊さんの派遣は行っていません。
この大手の通販サイトのAmazonが取り扱いを開始したことにより「お坊さん便」は世間の注目を集めましたが、「お坊さん便」の公式サイトや電話で直接、申し込むこともできます(直接申し込みの場合は、葬儀へのお坊さんの派遣も可能)。
次は、お坊さん便が批判された理由について考えてみました。
「お坊さん便」のどこが批判されたのか?
仏教界からすると、法要や戒名をつける行為は「宗教行為」なのです。
宗教行為は日頃の寺との付き合いの一環で、檀家それぞれの「お気持ちで」お布施を包むのがふさわしく、値段を明示することは不謹慎とされています。
「お坊さん便」の会社だけでなく、サービスを取り扱う窓口になったAmazonにまでクレームを入れて、大騒ぎになりましたね。
また「普段付き合いもない初対面のお坊さんなんかにお経をあげてもらっても、故人は成仏できない」という信心深い人からの反対意見もあるようです
費用以外にもいろいろと暗黙の了解がありそうなお寺って、敷居が高いですよね。
- 「高額なお布施を吹っ掛けられた」
- 「代々付き合いがある寺とはいえ、高圧的で成金のような振る舞いなので嫌悪感がある」
などという菩提寺へのマイナスイメージを持つ人もいるようです。
- 「こんなサービスが重宝がられるのは、これまでの仏教界の体質に問題がある」
- 「人口減少や地元意識の低下、情報化が進んだ現代は寺と人との関係も薄れている。そんな中で不明瞭な僧侶への報酬に不信感や不快感を抱く人が出るのは当然だ」
という声や意見もあります。
お寺さんも、たくさんの参拝者がある有名観光寺院や大勢の檀家を抱えている大寺以外は、檀家がどんどん減っていて、こうしたサービスに登録しないと寺自体が維持できないという裏事情もあるようで、仏教界全体が僧侶手配サービスを断固拒否しているわけではないようです。
お坊さん便を使った人の評判についても解説していきます。
実際に利用した人は、どう感じている?
知り合いの寺がない人は電話やインターネットで連絡すればさっと坊さんが来てくれるサービスは重宝されます。
宗教と縁が薄くても、故人をちゃんと弔ってやりたいと考える人は少なくないはずだと考えます。
変わったところでは、マンションやアパートのオーナーや大家さんが、孤独死した住人の部屋で法事をするときに呼ぶケースも。
部屋をしっかり清めないと、貸し手としても気分がよくないし、ほかの部屋の借主にも印象よくないと考える方もいるとか。
お坊さん便にもトラブルがある?次の項目で解説します。
「お坊さん便」のトラブル例と注意点は?
また、なかには「当日、お坊さんが来なかった」とか「連絡が行き違って困った」という声や「先払いで料金を払ったのに、式後にお坊さん本人からお布施を要求された」という口コミもありますよ。
多くはないとはいえ、トラブルはあるみたいです。とくに、檀家になっていたお寺があるのに、お坊さん便を利用した人はリスクが高いようです。
次にお坊さん便のメリットデメリットについて考えていきます。
【お坊さん便のメリット・デメリット、注意点・留意点】
メリット
- 知っている(付き合いのある)お寺がなくてもお坊さんを探せます
- あいまいでわかりにくい「お布施」ではなく「料金」として定額の支払いでOKです
- 檀家としての諸経費・寺とのお付き合いが不要です
- 先祖代々の寺と離れた遠隔地でも法要を行うことができます
- サービス業なので、対応が親切で丁寧です
- 檀家になるように勧められたり、次回の法要について打診されるといったわずらわしさがありません
デメリット
- 登録している僧侶がランダムに割り振られるため、事前にどんな僧侶が来るかわかりません(ハズレの可能性も?)
- Amazonの「お坊さん便」は、法事は頼めるが葬儀関連については頼めません(これにより、葬儀のしがらみで法事のときお坊さん便が使いづらい人も)
- 「お坊さん便」の法事の費用は35000円。全国的にほぼ相場ではありますが、地方によってはもっと安い(檀家としての付き合いは別にして)相場のこともあるようです
- 「お坊さん便」は、初回は35000円ですが、2回目以降は1万円アップの4万5000円と割高になります
- 1度目のお坊さんが気に入っても、2回目以降に確実にその人に来てもらえるとは限りません
注意点・留意点
- 檀家となっているお寺を無視して利用すると、お寺とトラブルになるケースがあります。寺院内にあったお墓を追い出され、高額な撤去費用を請求される場合も
- 「お坊さん便」の料金のうち、約半分は派遣会社に渡り、お坊さんの取り分はかなり少ないのが実情です。サービスと割り切るなら気にする必要はありませんが、お布施のつもりで代金を払っていると少しモヤモヤ感が残ってしまうかもしれません
- これまで付き合いのなかったお寺に、直接「1回限り」での法要を頼めば、引き受けてくれるという現役僧侶の声はネットにもあります。でも、ストレートに費用を提示して1回限りの法要をしてくれるお坊さんを探すのはなかなか大変なのも事実です
- 「お坊さん便」で戒名をつけてもらっても、いざ菩提寺に埋葬する際は、その戒名が使えないケースがあるので注意が必要です
当然、葬儀場ではその後の法要についてもサービスの案内をするですが、葬儀場経由でお坊さんを頼んだのなら「お坊さん便」に切り替えやすいとはいえるでしょう。
しかし、葬儀をしてくださったお坊さんのお寺の墓に入れたとなると、やはりその寺に法要を頼む方がトラブルにはならないと言えます。
しがらみのない人・支払いでモヤモヤしたくない人にはお勧めのサービス
自称「無宗教」という方も、本当に無宗教タイプの葬儀をされる方はまだまだ多数派ではなく、なんとなく『お寺さんで』というケースが多いですから。
しがらみのない核家族の方が高齢になって終活を考えるとき、残った家族の負担を減らしたいと考えるなら、檀家づきあい(諸費用を含む)の心配がないお葬式・法要のスタイルの助けになる「お坊さん便」を生前に指定して置くのも心配りのひとつと言えるかもしれません。
また「お坊さん便」の特徴である「明朗会計」な点は、仏教の独特な「お布施」を忖度するのが面倒だとか、お寺との付き合いでかかる諸費用にモヤモヤしたくないという若い世代の方にもおすすめです。
ただし、先祖の墓が菩提寺の敷地内にあるような場合は「お坊さん便」を安易に利用するとのちのちトラブルが起こりがちなので、慎重に考えたほうがいいことは、心に留めておくべきでしょう