葬儀の正式名称は葬送儀礼と言います。
人は生まれてから亡くなるまで様々な通過儀礼を経験しますが、最後の儀式となるのが葬儀です。その葬儀の約80%が仏式で行われていて、仏教での葬送の目的は、
1.亡くなられた方を彼岸へと見送る儀式
2.戒名を授け浄土へ導く引導を渡す儀式
これらが仏式で葬儀を行う意義でもあります。
※浄土真宗と日蓮宗では教義により引導を渡すことはありません。
もくじ
危篤と臨終 配慮すべきことや生前に確認しておくべき事案とは
現在では大多数の方が病院で亡くなられます。そして、危篤に際しては、本人が一番会いたいと思っている人物に連絡を取る必要があります。
生前にその意思が確認できていれば、医師と相談し延命措置をとることも考えられますし、それは大切な人を看取りたいと願う近親者や、関係者の思いを叶えることに繋がります。
又、高齢者や妊産婦、病気療養中の方などへの連絡は十分な配慮をする必要があります。場合によっては連絡を控えることも必要でしょう。
連絡を受けた側は緊急時ですので平服で構いませんが、普段から病状を把握しており遠方から覚悟を決めて伺うようなケ-スでは、喪服を目立たぬように持参する事も致し方ないと思われます。
納棺までの準備や納棺の儀、通夜までに行うこと
ここでは通夜までに親族などで行う準備や、その流れを解説します。
・安置場所の確認と搬送
病院で亡くなった場合でも、ご遺体を長時間安置しておくことが困難なこと多く、自宅や葬儀社の施設などに安置します。
・自宅安置での納棺の儀の流れ
納棺の儀の流れを紹介していきます。
1)末期の水を含ませる
臨終にあたってはまず末期の水を含ませるということが一般的ですが、これはお釈迦様が亡くなる時に水を欲しがったという故事に由来します。これには筆の穂先か綿を用いますが、水に浸し唇をかるくなでる様に行います。
2)逆さ水
身体を拭き全身を清めます。これを湯灌といい、病院では看護師さんがアルコールで清めてくれますが、自宅で行う場合は容器に水を入れておき、次に熱湯を入れ身体を拭き清めます。又、口・耳・鼻等に綿を詰める事を忘れない様にします。 昔は塗香を身体に塗りこめる事もしましたが、現代では香水などを使う事もあります。
3)死装束を着せる
次に下着を新しいものに替え、死装束を着せるのですが、故人の気に入った着物や洋服を着せる事もあります。
さらに、女性であれば死化粧を行なうようにしますが、男性であっても顔がひどくやつれた様な場合は薄化粧を施す様にします。この時、なるべく新しい布団にご遺体を寝かせ顔にさらしを掛けるようにします。又、布団は上下を逆にして使うようにします。そして手を合掌に組み数珠を掛け、布団の上に刃先を下に向けて守り刃を置きます。
尚、守り刃は葬儀社で準備できますが、なければ家庭にある包丁・ナイフで代用しても構いません。この時はさらし等を巻いて使うようにします
またご遺体の向きは頭を北に向けるようにしますが、無理であれば西向でも構いません。 これを枕直しといい、“西には西方浄土があり、北はお釈迦様が亡くなった時、頭を北に向けていた事”に由来します。
4)枕飾り
小さな長方形の台等に白布をかけ花立、火立、香炉の3具足を、右側に火立、左側に花立、真ん中に香炉を置き荘厳します。
また花立には白菊か樒を、香炉には線香を絶やさないようにします。
さらに、故人の茶碗に白飯を山盛りにつぎ箸を立て、湯のみに水を注ぎ、供えるようにします。 地方によっては団子を供える事もあります
この様に昔からの風習として
1逆さ水
2布団の上下を逆に使う
3守り刃
4枕直し等まだまだ沢山あるわけですが、これは故人への接し方が普段と違うことで、日常の生活ではありえ無い事が起こっていることを自覚し、故人への思いを新たにして出来る限りに送り出したいという昔からの知恵でもあります。
病院の霊安室で通夜を行う場合や、その他の例
自宅で安置した際は、ここまででお寺様に枕経をあげて頂く、あるいは通夜を行なう準備が出来たことになります。
しかし、遠隔地で亡くなり遺体の搬送が困難な場合には病院の霊安室で通夜を行ない、荼毘にふし、自宅に戻ってから葬儀を行なう事になります。
また、故人が生前に献体や臓器提供などを希望している場合もあります。
悲しみのなかにある遺族にとっては決断のいる事ですが、生前の故人の意思を尊重することは非常に重要です。
献体や臓器提供など生前の故人の意思が明確である場合には、医師より臨終を告げられた時、直ちに決断、行動することが故人の思いに応えることになります。
・生前に家族に自分の意思を伝えておく。
・生前の故人の意思を理解する。
尚、この決断をした際は、お骨となって戻ってくる迄に2年近くかかる場合もありますので、遺骨の代わりとなる遺髪や遺爪を残しておく事も必要となります。
この場合は湯灌が終わった時に切るようにします。
喪主を決める
これ以降は通夜、葬儀を行なう為に段取りを整えなければなりませんが、最初に喪主を決めます。
喪主は、配偶者か長男、長女、親族で話し合って一番ふさわしい人に決定します。
・世話人を選定し、喪主のサポートをお願いする。
この時に出来れば、世話人も決めるようにしましょう。世話人は喪主とよく話し合って葬儀の規模、予算等の把握をしておく必要があります。
喪主は弔問客の対応だけでも体いっぱいとなりますので、世話人の選定は大変重要となります。
死亡届・火葬許可証・埋葬許可証について
お寺に枕経をあげて頂き、葬儀社をまじえ通夜と葬儀の日時の打ち合わせを行ない、遺体を納棺して通夜の準備が整ってきます。
ここで忘れてはいけないのが、死亡届の提出です。
死亡届は亡くなった場所の市区町村役場の戸籍係に7日以内に提出しなければいけません。この届は24時間365日受付けています。
死亡届を提出しないと火葬する事ができませんので、直ちに行なう必要があります。
また、火葬が済むと自動的に埋葬許可証として使用する事が出来ます。
もちろん、葬儀社を利用する場合は、それらすべてを代行してくれます。
炉扇居士