介護保険サービスの自己負担が重なった月は、一定の上限を超えた額が「高額介護サービス費」として払い戻される場合があります。
ただし、介護施設の請求書にある食費、居住費、日常生活費まで、すべてが上限計算に入るわけではありません。
この記事では、高額介護サービス費の所得区分別上限、対象になる費用・ならない費用、世帯合算、申請方法を整理します。
先に要点
- 介護保険サービスの1割・2割・3割負担が主な計算対象
- 1か月の対象自己負担が所得区分の上限を超えると、超過分が支給される
- 同じ住民票上の世帯に介護サービス利用者が複数いれば合算できる
- 食費、居住費、日常生活費、福祉用具購入費、住宅改修費などは対象外
- 支給には市区町村への申請が必要
高額介護サービス費とは
介護保険サービスを利用すると、利用者は原則1割、一定以上の所得がある人は2割または3割を自己負担します。
1か月に支払った対象自己負担額の合計が、所得区分に応じた上限を超えた場合、超えた分が介護保険から支給される仕組みが高額介護サービス費です。
サービスを使った時点の窓口負担が自動的に上限で止まるとは限りません。いったん支払い、市区町村へ申請した後に払い戻されるのが一般的です。
月額上限はいくら?
2026年7月13日に厚生労働省の介護サービス情報公表システムで確認できる上限は、次のとおりです。
市区町村民税課税世帯
- 課税所得380万円未満:44,400円(世帯)
- 課税所得380万円以上690万円未満:93,000円(世帯)
- 課税所得690万円以上:140,100円(世帯)
第4段階の判定は、同じ世帯内の65歳以上の人の課税所得により行われます。
市区町村民税非課税世帯
- 公的年金等収入額とその他の合計所得金額の合計が80.9万円以下:24,600円(世帯)、15,000円(個人)
- 上記以外の市区町村民税非課税世帯:24,600円(世帯)
- 老齢福祉年金受給者:24,600円(世帯)、15,000円(個人)
生活保護受給者等
- 生活保護受給者等:15,000円(個人)
- 15,000円への減額により生活保護の被保護者とならない場合:15,000円(世帯)
上限額は改定されることがあります
所得区分の判定年や制度改正により、適用区分が変わることがあります。利用月の上限は、市区町村の介護保険課から届く案内で確認してください。
サービスにかかる利用料(厚生労働省 介護サービス情報公表システム)
「世帯上限」と「個人上限」の違い
ここでいう世帯は、住民基本台帳上の世帯です。同じ世帯に介護保険サービスを利用した人が複数いる場合、その対象自己負担を合算して世帯上限を判定します。
個人上限が設けられた所得区分では、まず個人上限を確認し、そのうえで世帯全体の上限を計算します。
課税世帯の計算例
世帯上限が44,400円で、同じ世帯の夫が対象自己負担30,000円、妻が25,000円を支払ったとします。
30,000円+25,000円-44,400円=10,600円
この例では、世帯全体で10,600円が支給対象になります。実際の按分や支給先は自治体の計算によります。
対象になる費用
主な対象は、介護保険が適用されたサービスの利用者負担です。
- 訪問介護など在宅サービスの1割・2割・3割負担
- デイサービスの介護保険適用部分
- ショートステイの介護サービス費部分
- 介護保険施設の介護サービス費部分
- 同一世帯の複数利用者が支払った対象自己負担
サービス名称だけで判断せず、領収書や利用料明細の「介護保険対象」「利用者負担」欄を確認します。
対象にならない費用
介護に関係する支出でも、次の費用は高額介護サービス費の計算対象外です。
- 介護保険施設やショートステイの食費
- 居住費・部屋代
- 日常生活費、理美容代、嗜好品など
- 特定福祉用具購入費
- 住宅改修費
- 支給限度額を超えて利用した全額自己負担分
- 介護保険外のサービス費
施設からの請求書総額が高くても、食費・居住費の割合が大きいと、高額介護サービス費の支給額は少ない、または発生しない場合があります。
低所得の施設入所者には、食費・居住費を軽減する「負担限度額認定」が使える場合があります。高額介護サービス費とは別制度なので、市区町村へ両方確認してください。
申請から支給までの流れ
- 利用料明細と領収書で対象自己負担を確認する
- 市区町村から支給申請の案内が届くか確認する
- 介護保険課へ申請書と必要書類を提出する
- 市区町村が世帯・所得区分・自己負担額を審査する
- 決定通知を確認し、指定口座への振込を確認する
初回申請後は、次回以降の該当分が登録口座へ自動支給される自治体もあります。ただし、申請方式、案内時期、必要書類は自治体によって異なります。
申請に用意するもの
一般には次のようなものを確認しますが、提出前に自治体へ問い合わせてください。
- 高額介護サービス費支給申請書
- 介護保険被保険者証
- 本人確認書類
- 振込先口座が分かるもの
- 利用料の領収書・明細
- 代理申請の場合の委任状など
申請には期限があります。横浜市は、高額介護サービス費は2年で時効になると案内しています。起算日や総合事業分の扱いは自治体へ確認し、案内を放置しないようにしましょう。
申請案内が届かないとき
上限を超えたと思うのに通知が来ない場合は、次を確認します。
- 食費・居住費など対象外費用を含めて計算していないか
- 利用月と請求月を混同していないか
- 世帯分離や転居で保険者が変わっていないか
- 介護保険外サービスや限度額超過分ではないか
- 所得区分の上限額を取り違えていないか
領収書、利用料明細、介護保険証を手元に置き、市区町村の介護保険課へ「何月利用分が、どの区分で計算されたか」を確認しましょう。
ケアマネジャーも、利用サービスの内訳や相談先の整理を手伝ってくれます。
高額療養費との違い
高額介護サービス費は介護保険、高額療養費は医療保険の自己負担を軽減する制度です。
- 高額介護サービス費:介護保険サービスの対象自己負担を月ごとに計算
- 高額療養費:医療機関や薬局での医療保険の対象自己負担を月ごとに計算
医療費と介護費の両方が高い世帯には、別に「高額医療・高額介護合算療養費制度」があります。月単位の制度を単純に足すのではなく、加入している医療保険と介護保険の窓口へ確認してください。
介護費を見直すときの確認項目
高額介護サービス費は、負担を軽くする大切な制度ですが、介護費全体をすべて補うものではありません。
- 介護保険負担割合証の1割・2割・3割
- ケアプランの支給限度額
- 高額介護サービス費の所得区分
- 施設の食費・居住費の負担限度額認定
- 自治体独自の助成
- 医療費との合算制度
- 家計を圧迫している保険外サービス
これから介護保険を利用する場合は、要介護認定の申請から始めます。
よくある質問
介護施設の部屋代も上限を超えたら戻りますか?
高額介護サービス費では、食費・居住費・日常生活費は原則対象外です。所得や資産が一定以下なら負担限度額認定の対象になることがあるため、別に確認してください。
夫婦二人の介護費を合算できますか?
同じ住民票上の世帯で、二人とも介護サービスを利用している場合、対象自己負担を世帯単位で合算します。個人上限がある区分は個人上限も確認されます。
一度申請すれば毎月申請しなくてよいですか?
初回申請後の扱いは自治体によって異なります。登録口座へ自動支給される場合でも、転居、口座変更、世帯変更があれば届出が必要になることがあります。
まとめ 請求書総額ではなく対象自己負担を確認する
- 高額介護サービス費は介護保険の対象自己負担を軽減する制度
- 上限は所得区分と世帯・個人の別で決まる
- 同じ世帯の介護サービス利用者分は合算できる
- 食費、居住費、日常生活費、福祉用具購入、住宅改修は原則対象外
- 市区町村への申請が必要
- 高額療養費、合算制度、負担限度額認定は別制度
領収書と利用料明細を月別に保管し、「介護保険対象の自己負担はいくらか」を確認しましょう。分からないときは、介護保険課とケアマネジャーへ同じ明細を見せると話が早くなります。
参考にした一次情報
制度・上限額の確認日:2026年7月13日。所得区分、対象費用、申請方法は利用月と自治体により確認が必要です。お住まいの市区町村の介護保険課へお問い合わせください。



