介護施設を探し始めると、最初に不安になるのが費用です。
「老人ホームはいくらかかるのか」「親の年金だけで足りるのか」「入居一時金は戻ってくるのか」「追加費用で家族が困らないか」など、お金の心配は避けて通れません。
介護施設の費用は、施設の種類、部屋のタイプ、本人の要介護度、介護保険の自己負担割合、食費や居住費、医療費、日用品費などで大きく変わります。
特に有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、パンフレットの月額費用だけを見て契約すると、実際の支払いが想定より高くなることがあります。
この記事では、介護施設の費用を考えるときに確認したい項目、施設種類別の費用の見方、入居一時金の注意点、負担を抑える制度、家族で話し合うべきポイントを整理します。
介護施設の費用は大きく5つに分けて考える
介護施設の費用は、ひとつの金額で考えると分かりにくくなります。
まずは、次の5つに分けて確認しましょう。
介護施設費用の主な内訳
- 入居時にかかる費用
- 毎月の基本料金
- 介護保険サービスの自己負担分
- 食費、居住費、管理費などの生活費
- 医療費、薬代、日用品費、追加サービス費
「月額15万円」と書かれていても、そこに介護保険の自己負担や医療費、日用品費が含まれているとは限りません。
施設を比較するときは、月額料金だけでなく、実際に毎月いくら出ていくのかを確認します。
介護保険の自己負担は1割から3割
介護保険サービスを利用する場合、所得などに応じて自己負担割合が決まります。
一般的には1割負担ですが、一定以上の所得がある人は2割または3割負担になることがあります。
厚生労働省の介護保険制度の概要では、介護保険サービスの利用者負担や制度の全体像が整理されています。
また、介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受け、ケアプランに基づいてサービスを使う流れになります。
介護保険の申請がまだの場合は、以下の記事も確認してください。
施設種類別に費用の見方は変わる
介護施設の費用は、施設の種類によって見方が変わります。
前提として、特養、老健、介護医療院、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などは、目的も制度上の位置づけも異なります。
施設の種類そのものを整理したい場合は、先にこちらの記事を確認しておくと理解しやすくなります。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、常時介護が必要で自宅での生活が難しい人が入所する施設です。
一般的に民間の有料老人ホームより費用を抑えやすいとされますが、要介護度や所得、部屋のタイプ、食費、居住費、加算などで自己負担は変わります。
また、地域や施設によって待機期間が長くなることがあります。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、病院退院後などにリハビリを行い、在宅復帰を目指す施設です。
長く暮らす住まいとしてではなく、在宅復帰までの中間的な施設として費用を考えます。
退所後の住まい、在宅サービス、次の施設候補まで含めて資金計画を立てましょう。
介護医療院
介護医療院は、長期療養と生活支援を受ける施設です。
医療的な管理が必要な人が対象になりやすいため、介護保険の自己負担だけでなく、医療費、薬代、日用品費なども確認が必要です。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、施設ごとの費用差が大きい施設です。
入居一時金が必要な施設もあれば、入居一時金なしで月額費用が高めに設定される施設もあります。
介護付き、住宅型、健康型の違いによって、介護費用の考え方も変わります。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅は、安否確認や生活相談がある高齢者向け住宅です。
介護施設というより住まいに近く、介護が必要になった場合は外部の訪問介護やデイサービスなどを使うことがあります。
家賃、共益費、生活支援サービス費、食費、外部介護サービス費を分けて確認しましょう。
サ高住の登録情報は、サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムでも確認できます。
入居一時金で確認すべきこと
有料老人ホームなどでは、入居時にまとまった費用が必要になることがあります。
これが入居一時金です。
入居一時金は、施設によって金額も仕組みも異なります。
重要なのは、払えるかどうかだけでなく、途中で退去した場合にどのくらい戻るのか、何に充当されるのかを確認することです。
入居一時金で確認すること
- 入居一時金の金額
- 初期償却の有無
- 償却期間
- 途中退去時の返還金
- 入居後すぐに亡くなった場合の扱い
- 月額費用との関係
- 契約解除時の費用
- 重要事項説明書との整合性
入居一時金は大きな金額になりやすいため、本人だけで判断せず、家族や専門家と一緒に契約書を確認しましょう。
月額費用に含まれるもの・含まれないもの
月額費用は施設比較で最も見られる項目です。
しかし、月額費用の内訳は施設ごとに違います。
月額費用に含まれやすいもの
- 家賃や居住費
- 管理費
- 共益費
- 食費
- 基本的な生活支援サービス費
別料金になりやすいもの
- 介護保険サービスの自己負担分
- 医療費、薬代
- おむつ代、日用品費
- 理美容代
- 通院付き添い費
- レクリエーション費
- 洗濯代
- 個別の外出支援
- 看取り対応に関する費用
「月額料金に何が含まれ、何が別料金なのか」を表にして比較すると、実際の負担が見えやすくなります。
介護施設費用を試算する手順
施設費用は、次の順番で試算すると現実的です。
- 本人の年金収入を確認する
- 預貯金や使える資産を確認する
- 介護保険の自己負担割合を確認する
- 候補施設の料金表を集める
- 月額費用に含まれるものを確認する
- 別料金になりそうな費用を足す
- 医療費、薬代、日用品費を見込む
- 家族が毎月支援できる金額を決める
- 長生きした場合の資金切れリスクを見る
ここで大切なのは、楽観的に見積もらないことです。
「今の費用なら払える」だけでなく、介護度が上がった場合、医療費が増えた場合、配偶者の生活費も必要な場合を考えます。
負担を抑える制度も確認する
介護費用が重い場合、負担軽減につながる制度を利用できることがあります。
ただし、所得や資産、施設の種類、サービス内容によって対象が変わるため、必ず市区町村の介護保険窓口やケアマネジャーに確認しましょう。
高額介護サービス費
介護保険サービスの自己負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。
上限額は所得区分などで変わります。
介護保険負担限度額認定
所得や資産などの条件に当てはまる人は、介護保険施設などでの食費や居住費の負担が軽くなる場合があります。
対象になるかどうかは、本人の収入、預貯金、配偶者の状況なども関係します。
高額医療・高額介護合算療養費
医療費と介護費の両方が重い場合は、高額医療・高額介護合算療養費制度の対象になることがあります。
医療費が高くなったときの高額療養費制度は、以下の記事で解説しています。
親の年金だけで足りないとき
施設費用が親の年金だけで足りない場合、家族で早めに話し合う必要があります。
誰か一人が黙って不足分を負担し続けると、きょうだい間の不公平感や介護疲れにつながります。
家族で決めておきたいこと
- 親の年金と預貯金でどこまで支払うか
- 自宅を売却する可能性はあるか
- きょうだいで不足分をどう分担するか
- 誰が施設との窓口になるか
- 通院付き添いなど費用以外の負担をどう分けるか
- 施設費用が上がった場合にどうするか
- 看取りや葬儀費用を別に残すか
実家が空き家になる場合は、売却、賃貸、解体、相続登記なども関係します。
自宅を担保にして老後資金を用意する方法としてリバースモーゲージを検討する人もいますが、長生きリスクや不動産価格の下落リスクがあります。
契約前に必ず確認する書類
介護施設を契約する前には、口頭説明だけで判断しないことが重要です。
特に民間施設では、契約書や重要事項説明書を確認し、費用、退去条件、返還金、追加料金を具体的に把握しましょう。
契約前に見る書類
- 契約書
- 重要事項説明書
- 料金表
- 介護サービスの説明資料
- 入居一時金の返還ルール
- 退去条件の説明資料
- 医療対応や看取り対応の説明
- 身元保証人や緊急連絡先に関する書類
よく分からない費用がある場合は、「これは月額費用に含まれますか」「どんな場合に追加費用が発生しますか」と具体的に確認しましょう。
身元保証人や緊急連絡先が用意できない場合は、施設契約そのものが難しくなることもあります。
終活ノートに介護施設費用の希望を残す
施設費用の希望は、元気なうちに終活ノートへ残しておくと家族の判断が楽になります。
「できるだけ安い施設でよい」だけでは、家族は判断に迷います。
どの資産を使ってよいのか、毎月いくらまでならよいのか、家を売ってもよいのか、看取りまで同じ施設を希望するのかを具体的に書いておきましょう。
終活ノートに書きたい費用情報
- 年金額
- 預貯金口座
- 使ってよい資産
- 毎月の施設費用の上限
- 入居一時金を払ってよいか
- 自宅売却の希望
- きょうだい間で話してほしいこと
- 介護施設に求める優先順位
- 葬儀費用として残したい金額
終活ノートの書き方は、以下の記事で整理しています。
よくある質問
介護施設の費用は年金だけで払えますか?
本人の年金額、施設の種類、地域、部屋のタイプ、要介護度、医療費によって変わります。
年金だけで足りるケースもありますが、不足するケースもあります。候補施設の料金表をもとに、毎月の実支出を試算しましょう。
入居一時金なしの施設のほうが得ですか?
一概には言えません。
入居一時金なしの施設は初期負担を抑えられる一方、月額費用が高めになることがあります。入居期間が長くなった場合の総額で比較しましょう。
介護度が上がると費用も上がりますか?
上がることがあります。
介護保険サービスの利用量や加算、必要な介助、医療対応、日用品費などが増える可能性があります。契約前に、介護度が上がった場合の費用の目安を確認しましょう。
家族が不足分を負担してもよいですか?
家族が負担すること自体はありますが、誰がいくら負担するかを曖昧にするとトラブルになりやすいです。
きょうだいがいる場合は、費用負担だけでなく、通院付き添い、面会、手続きなどの負担も含めて話し合いましょう。
まとめ 介護施設の費用は「月額料金」だけで判断しない
介護施設の費用について解説しました。
- 介護施設費用は、入居時費用、月額費用、介護保険自己負担、生活費、医療費に分けて考える
- 介護保険の自己負担割合は所得などで1割から3割になる
- 施設種類によって費用の見方が変わる
- 入居一時金は返還ルールや償却期間を必ず確認する
- 月額料金に含まれない追加費用を見落とさない
- 高額介護サービス費や負担限度額認定などの制度も確認する
- 親の年金だけで足りない場合は家族で早めに分担を話し合う
- 終活ノートに施設費用の希望を残すと家族が判断しやすい
介護施設の費用は、安いか高いかだけで判断するものではありません。
本人が安心して暮らせること、家族の負担が続けられる範囲であること、契約内容に納得できることが大切です。
パンフレットの金額だけを見て決めず、実際の月額支払い、追加費用、退去条件、将来の介護度変化まで含めて確認しましょう。
費用条件を確認するためにも、施設見学では料金表、追加費用、入居一時金、退去条件を具体的に質問しましょう。
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介護施設の費用を考えるときは、施設の種類、介護保険申請、医療費、終活ノート、実家の扱いもあわせて確認しておきましょう。



