実家の名義、土地の境界、固定資産税の通知、親の住所変更……。
終活というと、葬儀やお墓、遺言書、エンディングノートを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、これからの終活では「家や土地の登記」を先送りしないことも重要になっています。
相続登記はすでに義務化され、2026年からは住所・氏名変更登記の義務化や、所有不動産記録証明制度も始まりました。
親名義の実家をそのままにしておくと、相続人が増え、誰が所有者なのかわからず、売却・解体・リフォーム・空き家対策が難しくなることがあります。
この記事では、終活で考えたい相続登記と実家の名義変更について、制度の基本、家族で確認すべきこと、空き家にしないための準備をわかりやすく解説します。
なぜ今、実家の登記と名義変更が終活で重要なのか
これまで、不動産を相続しても相続登記をしないまま放置されるケースは少なくありませんでした。
理由はさまざまです。「手続きが面倒」「売る予定がない」「相続人同士で話し合いがまとまらない」「誰も住んでいない実家だから急がなくてよい」と考えているうちに、何年もたってしまうのです。
しかし、名義変更を先送りすると次のような問題が起こりやすくなります。
- 相続人が亡くなり、さらに次の世代へ相続関係が広がる
- 誰が権利を持っているのか調べるだけで時間と費用がかかる
- 売却、解体、リフォーム、賃貸活用が進めにくい
- 空き家の管理責任があいまいになる
- 固定資産税の通知や支払いを誰が受け持つかで揉める
- 災害や倒壊の危険がある家でも対応が遅れる
実家や土地は、通帳や保険証券のように小さく片付けられるものではありません。だからこそ、親が元気なうちに「誰の名義か」「将来どうするか」を確認しておくことが、家族の負担を減らす終活になります。
家の中の品物を整理する生前整理と同じように、不動産も「家族が困らない状態」にしておくことが大切です。生前整理全体の考え方は、生前整理はなにが大事かでも解説しています。
相続登記の義務化とは
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなったときに、土地や建物の名義を相続人へ変更する登記手続きです。
2024年4月1日から、相続登記は義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。
正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
相続登記の義務化は、所有者不明土地問題を防ぐための制度です。法務省は、相続登記の申請義務化や相続人申告登記など、手続きを進めやすくする制度を案内しています。
参考:法務省「相続登記の申請義務化等について」
過去の相続も対象になる
相続登記の義務化で注意したいのは、制度が始まった後の相続だけでなく、過去に発生した相続で登記が済んでいない不動産も対象になることです。
たとえば、祖父母や親が亡くなった後、実家や土地の名義をそのままにしている場合も、手続きが必要になる可能性があります。
「昔のことだから関係ない」と考えず、固定資産税の通知書や登記簿で名義を確認してみましょう。
特に、親の世代がすでに亡くなり、きょうだいや甥・姪まで相続人が広がっている場合は、話し合いが難しくなりやすいです。家族関係が複雑になる前に、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
住所・氏名変更登記も義務化された
不動産の登記で注意したいのは、相続だけではありません。
2026年4月1日から、不動産の所有者が住所や氏名を変更した場合の登記も義務化されました。住所や氏名の変更日から2年以内に変更登記を申請する必要があります。
たとえば、引っ越し、結婚による氏名変更、施設入所に伴う住所変更などがあった場合、不動産の登記上の情報も確認が必要になります。
正当な理由なく申請しない場合、5万円以下の過料の対象になる可能性があります。
住所や氏名が古いままだと、所有者へ連絡できず、災害対応や空き家対策、相続手続きの妨げになることがあります。親が施設へ入った、住民票を移した、結婚・離婚で氏名が変わった場合は、不動産登記の確認も終活の一部として考えましょう。
参考:法務省「住所等変更登記の申請義務化について」
所有不動産記録証明制度で不動産を調べやすくなった
終活でよくある悩みのひとつが「親がどこに不動産を持っているかわからない」というものです。
親本人も、昔相続した山林、共有名義の土地、地方の畑、使っていない建物などを正確に覚えていないことがあります。
2026年2月2日からは、所有不動産記録証明制度が始まりました。これは、特定の人が所有者として登記されている不動産を一覧的に確認するための制度です。
相続人が亡くなった人の所有不動産を調べる場面などで、不動産の把握に役立つ制度として注目されています。
ただし、制度の利用には本人確認や請求できる人の範囲などの条件があります。実際に利用する場合は、法務局や司法書士へ確認してください。
参考:法務省「所有不動産記録証明制度について」
実家を空き家にしないために家族で話し合うこと
相続登記の義務化は、単なる手続きの話ではありません。実家を今後どうするかを家族で考えるきっかけでもあります。
親が元気なうちに、次の点を話し合っておきましょう。
誰が住むのか
子どもの誰かが実家に住むのか、親が施設へ入った後も空き家として残すのか、賃貸に出すのかを考えます。
「いつか誰かが住むかもしれない」と保留にしていると、管理費や固定資産税だけがかかり続けます。
売却・賃貸・解体の可能性はあるか
実家を売却するにも、賃貸に出すにも、解体するにも、名義が整理されていることが前提になります。
相続人全員の同意が必要になる場面もあります。きょうだい間で考えが違う場合は、早めに話し合っておくことが大切です。
管理費用を誰が負担するか
空き家になった実家には、固定資産税、火災保険、草刈り、修繕、清掃、見回りなどの費用がかかります。
誰が費用を負担するのか、誰が管理に行くのかを決めずに放置すると、家族間の不満につながります。
遺言書で希望を残すか
実家を誰に引き継いでほしいのか、売却して分けてほしいのか、特定の子に住んでほしいのか、本人の希望がある場合は遺言書を検討しましょう。
ただし、不動産は分けにくい財産です。遺留分や相続税、代償金などの問題もあるため、必要に応じて専門家へ相談してください。遺言書の基本は、シンプルな遺言書の書き方や自筆証書遺言の必要要件も参考になります。
終活で確認したい不動産チェックリスト
実家や土地の終活は、何から始めればよいかわかりにくいものです。まずは以下のチェックリストを使って、家族で情報を集めましょう。
- 自宅・実家・土地の登記名義人を確認する
- 固定資産税の通知書を確認する
- 登記済権利証や登記識別情報の保管場所を確認する
- 土地の境界や測量図の有無を確認する
- 住宅ローンや抵当権が残っていないか確認する
- 親が所有する不動産を一覧にする
- 実家を住む・売る・貸す・解体する・残すのどれにするか話し合う
- 相続登記が済んでいない不動産がないか確認する
- 住所や氏名変更登記が必要ないか確認する
- 必要に応じて司法書士、税理士、不動産会社、自治体へ相談する
実家の片付けも同時に進めたい場合は、高齢者が片付けできなくなる理由を知っておくと、親を責めずに整理を進めやすくなります。
マネーライフハックの「生前整理とは何か?生前整理の必要性とやるべきこと、やり方」も、実家や持ち物を整理する考え方を広く確認するのに役立ちます。
相続登記を放置しないための相談先
不動産の登記や相続は、家族だけで判断するのが難しいことがあります。特に次のような場合は、早めに専門家へ相談しましょう。
- 相続人が多い
- 相続人の一部と連絡が取れない
- 実家の名義が祖父母や曾祖父母のまま
- 土地の境界がわからない
- 空き家を売却・解体したい
- 不動産を誰が相続するか決まっていない
- 相続税や贈与税が心配
相談先としては、司法書士、弁護士、税理士、不動産会社、土地家屋調査士、自治体の空き家相談窓口などがあります。
登記手続きは司法書士、税金は税理士、境界や測量は土地家屋調査士、売却や活用は不動産会社、空き家対策は自治体、と役割を分けて相談するとスムーズです。
生前に不動産を子どもへ移す場合は、生前贈与の税金や手続きも確認が必要です。関連して、生前贈与が非課税でできる相続税対策も参考になります。
よくある質問
親の実家が親名義のままなら問題ありませんか?
親が存命で、登記上の住所や氏名も現在の情報と合っているなら、ただちに相続登記の問題ではありません。
ただし、親が亡くなった後に誰が相続するのか、売るのか残すのか、固定資産税や管理を誰が引き受けるのかを元気なうちに話し合っておくことが大切です。
昔亡くなった祖父名義の土地も相続登記が必要ですか?
相続登記が済んでいない不動産は、過去の相続であっても義務化の対象になる可能性があります。
相続人が増えている場合は、戸籍収集や遺産分割協議が複雑になりやすいため、司法書士などへ相談しましょう。
相続人申告登記とは何ですか?
相続人申告登記は、相続登記をすぐに完了できない場合に、相続人が法務局へ自分が相続人であることを申し出る制度です。
遺産分割協議がまとまらない場合などに、相続登記の申請義務に対応するための選択肢になります。ただし、最終的に不動産の名義をきちんと整理するには、相続登記が必要です。
空き家を相続したくない場合はどうすればよいですか?
相続放棄、売却、賃貸、解体、相続土地国庫帰属制度など、状況によって選択肢があります。
ただし、相続放棄には期限があり、相続土地国庫帰属制度にも対象となる土地や費用の条件があります。自己判断せず、専門家や法務局、自治体へ相談してください。空き家や墓地など、引き継ぐもの全体を整理するなら、墓じまいの選択肢もあわせて考えておくとよいでしょう。
まとめ 実家の登記と名義変更は家族への大切な終活
相続登記と実家の終活について解説してきました。
- 相続登記は義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要
- 過去に相続した不動産で登記が済んでいないものも対象になる可能性がある
- 住所・氏名変更登記も義務化され、不動産所有者の情報更新が重要になった
- 所有不動産記録証明制度により、所有不動産の把握がしやすくなった
- 実家を空き家にしないためには、住む・売る・貸す・解体する・残す方針を家族で話し合う
- 不動産は分けにくい財産のため、遺言書や専門家への相談も検討する
登記や名義変更は、普段の暮らしではなかなか意識しない手続きです。
しかし、実家や土地は家族にとって大きな財産であり、同時に大きな負担にもなり得ます。親が元気なうちに名義、住所、所有不動産、今後の方針を確認しておくことは、家族への大切な思いやりです。
まずは固定資産税の通知書を見て、誰の名義になっているのかを確認するところから始めてみましょう。
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