親の介護施設入居が現実的になると、家族は短期間で多くのことを決めなければなりません。
施設の種類、費用、身元保証人、持ち物、医療対応、緊急連絡、実家の管理、面会のルール。どれも後回しにすると、入居直前や入居後に家族間で揉めやすい項目です。
介護施設は、入居して終わりではありません。
入居後の生活、費用負担、家族の関わり方まで決めておくことが、本人にとっても家族にとっても大切です。
この記事では、親が介護施設へ入居する前に家族で決めることを、チェックリスト形式で整理します。
施設入居前に家族で決めること一覧
まずは、家族で話し合うべき項目を全体で確認しましょう。
施設入居前の家族会議チェックリスト
- 本人がどんな暮らしを望んでいるか
- 施設の種類と入居目的
- 月々の費用を誰がどの口座から払うか
- 入居一時金や追加費用の負担
- 身元保証人・身元引受人・緊急連絡先
- 医療対応、通院、服薬管理
- 延命治療や看取りの希望
- 持っていく物、処分する物、実家に残す物
- 住民票、郵便物、公共料金、契約の整理
- 面会頻度と家族の役割分担
- 退去条件や状態悪化時の対応
- 終活ノートに残す内容
すべてを一度に決める必要はありません。
ただし、お金、契約、医療、緊急連絡は入居前に必ず確認しておきたい項目です。
まず本人の希望を確認する
施設入居の準備では、家族の都合だけでなく、本人の希望をできる範囲で確認します。
認知症が進んでいる場合でも、部屋の雰囲気、食事、面会、持っていきたい物など、本人が意思を示せることはあります。
本人に確認したいこと
- どの地域で暮らしたいか
- 個室がよいか、多床室でもよいか
- 食事や入浴で気になること
- 持っていきたい家具や写真
- 家族にどのくらい面会に来てほしいか
- 通い続けたい病院があるか
- 延命治療や看取りについての考え
本人の希望をすべて実現できるとは限りません。
それでも、最初に聞いておくことで、家族が判断に迷ったときの基準になります。
施設の種類と入居目的をそろえる
家族間で意外とずれやすいのが、「どんな施設に入るのか」という認識です。
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームでは目的が異なります。
たとえば、介護老人保健施設は長く暮らす住まいというより、リハビリをして在宅復帰を目指す施設です。
サービス付き高齢者向け住宅は、安否確認や生活相談がある高齢者向け住宅であり、介護や医療の範囲は住宅ごとに確認が必要です。
施設の種類ごとの違いは、以下の記事で整理しています。
介護保険サービス利用までの流れは、介護サービス情報公表システムでも確認できます。
介護保険制度の概要は、厚生労働省のページも参考になります。
費用負担と支払い方法を決める
施設入居で最も揉めやすいのは費用です。
月額費用だけでなく、入居一時金、介護保険の自己負担、食費、居住費、医療費、薬代、日用品費、通院付き添い費、理美容代などを確認します。
特に、兄弟姉妹がいる場合は「親のお金で払うのか」「不足分を誰が補うのか」「一時金を誰が立て替えるのか」を明確にしておきましょう。
費用で決めること
- 月々の施設費用の上限
- 入居一時金の有無と返還ルール
- 親の年金・預貯金から払う範囲
- 不足分を誰が負担するか
- 医療費や薬代を誰が管理するか
- おむつ代、日用品費、理美容代の扱い
- 通院付き添い費や送迎費の確認
- 支払い口座と通帳管理
費用の見方は、以下の記事で詳しく解説しています。
高額な医療費が関係する場合は、高額療養費制度も確認しておきましょう。
身元保証人・緊急連絡先を決める
介護施設では、入居時に身元保証人、身元引受人、緊急連絡先などを求められることがあります。
名称や役割は施設によって異なります。
費用の支払い、緊急時の連絡、入院時の対応、退去時の荷物引き取り、死亡時の手続きなど、どこまで求められるのかを契約前に確認しましょう。
頼める親族がいない場合は、地域包括支援センター、ケアマネジャー、市区町村の高齢者福祉窓口、終身サポート事業者などの選択肢を早めに相談します。
身元保証人・身元引受人については、以下の記事で整理しています。
おひとりさまや身寄りが少ない場合は、以下の記事も参考になります。
契約書・重要事項説明書で確認すること
見学で良い印象を受けても、契約書や重要事項説明書を確認する前に入居を決めきるのは避けましょう。
口頭説明と書類の内容が違うと、入居後にトラブルになりやすくなります。
契約前に見る書類
- 入居契約書
- 重要事項説明書
- 料金表
- 介護サービスの説明資料
- 医療対応や看取り対応の説明資料
- 退去条件の説明資料
- 入居一時金の返還ルール
- 身元保証人・緊急連絡先に関する書類
特に、月額費用に含まれるもの、含まれないもの、状態が悪化した場合の退去条件、認知症が進んだ場合の対応、看取り対応の有無は必ず確認します。
見学時の確認項目は、以下の記事も参考にしてください。
医療・通院・服薬管理を決める
施設入居後も、医療の問題は続きます。
かかりつけ医を継続するのか、施設の協力医療機関を使うのか、通院付き添いは誰が行うのか、薬は誰が管理するのかを確認しておきましょう。
医療で確認すること
- かかりつけ医を継続できるか
- 施設の協力医療機関
- 通院付き添いの方法と費用
- 薬の管理方法
- 持病、アレルギー、食事制限
- 夜間や休日の急変時対応
- 入院時の連絡先と付き添い
- 看取り対応の有無
医療情報は、施設、家族、主治医、ケアマネジャーで共有できるように整理しておくと安心です。
延命治療や看取りの希望を話し合う
施設入居前に話しにくいテーマですが、延命治療や看取りの希望も重要です。
本人がまだ意思表示できる場合は、どこまで治療を望むのか、最期をどこで迎えたいのか、家族にどのように判断してほしいのかを確認しておきましょう。
一度話せば終わりではありません。
本人の体調や気持ちが変わることもあるため、必要に応じて見直します。
人生会議については、以下の記事で整理しています。
持ち物と実家の荷物を整理する
施設の居室には、持ち込める物に限りがあります。
衣類、靴、洗面用品、薬、保険証類、写真、時計、眼鏡、補聴器、杖、車いすなど、必要な物を施設に確認して準備します。
一方で、実家に残す物、処分する物、保管する物も決めなければなりません。
持ち物で確認すること
- 衣類の枚数と洗濯方法
- 靴、室内履き、パジャマ
- 保険証、介護保険証、お薬手帳
- 薬、医療機器、補聴器、眼鏡
- 写真や小物など本人が落ち着く物
- 家具や家電の持ち込み可否
- 名前を書く必要がある物
- 貴重品を持ち込めるか
認知症の親の家を片付ける場合は、本人の気持ちにも配慮が必要です。
以下の記事も参考にしてください。
住民票・郵便物・公共料金を確認する
施設入居後も、実家の契約や郵便物は残ります。
住民票を施設へ移すかどうかは、介護保険、医療、施設の種類、自治体の扱いなどに関係する場合があります。
施設、自治体、ケアマネジャーに確認してから判断しましょう。
生活手続きで確認すること
- 住民票を移すか
- 郵便物の転送
- 電気、ガス、水道、電話、インターネット
- 新聞、宅配、サブスク契約
- 固定資産税や管理費の支払い
- 自宅の火災保険
- 空き家管理や実家じまい
実家を空き家にする場合は、管理、売却、賃貸、解体、相続まで見据える必要があります。
家族の役割分担を決める
施設に入居しても、家族の役割が完全になくなるわけではありません。
面会、医療同意、支払い確認、衣類の補充、施設からの連絡、入退院対応などが続きます。
一人の子どもだけが抱えると、入居後も負担が偏ります。
家族で分担したい役割
- 主な緊急連絡先
- 施設との連絡担当
- 費用や通帳の確認担当
- 衣類や日用品の補充担当
- 通院付き添い担当
- 面会頻度の目安
- 実家や空き家の管理担当
- 葬儀・お墓・相続の相談担当
遠方に住む家族でも、費用確認、書類整理、オンライン面談、施設探しなどで協力できます。
仕事と介護の両立に不安がある場合は、以下の記事も確認してください。
認知症がある場合は早めに決める
認知症がある場合、施設入居前の準備はさらに早めに進める必要があります。
本人の判断能力が低下すると、契約、財産管理、遺言、実家の片付けなどが難しくなることがあります。
認知症の親を施設に入れるタイミングは、以下の記事で詳しく解説しています。
認知症と遺言、成年後見についても早めに確認しておきましょう。
終活ノートに残しておきたいこと
施設入居前に決めたことは、終活ノートや家族共有のメモに残しておきましょう。
口約束のままだと、入居後に「誰が聞いたのか」「何を決めたのか」が曖昧になります。
終活ノートに残す内容
- 入居する施設名と連絡先
- 施設費用の支払い方法
- 身元保証人・緊急連絡先
- 主治医、薬、病歴、アレルギー
- 医療・看取りの希望
- 面会や外出の希望
- 持ち込んだ物のリスト
- 実家の鍵、通帳、印鑑、保険証券の保管場所
- 葬儀やお墓についての希望
終活ノートの書き方は、以下の記事で整理しています。
よくある質問
施設入居前の家族会議は誰を呼ぶべきですか?
本人が参加できる場合は本人を含め、主に関わる家族、費用負担に関係する家族、緊急連絡先になる人で話し合います。
必要に応じて、ケアマネジャーや施設担当者に確認しながら進めましょう。
持ち物はどこまで持っていけますか?
施設の居室の広さや安全管理によって異なります。
家具、家電、貴重品、薬、食品の持ち込みは、施設ごとのルールを確認してください。
施設入居後に実家をすぐ片付けてもよいですか?
本人の判断能力があり、意思確認できる場合は、本人の希望を聞きながら進めます。
認知症がある場合は、財産や重要書類の処分に注意が必要です。家族だけで判断しにくい場合は、ケアマネジャー、地域包括支援センター、専門家へ相談しましょう。
契約書の内容がよくわからない場合はどうすればよいですか?
その場で署名せず、書類を持ち帰って確認します。
費用、退去条件、身元保証人の責任、医療・看取り対応など、不明点を施設に質問し、必要に応じて自治体や専門家にも相談しましょう。
まとめ 施設入居前の準備は家族の負担を減らす
親の介護施設入居は、施設を決めたら終わりではありません。
入居前に家族で決めることを整理しておくと、入居後のトラブルや家族間の負担の偏りを減らせます。
- 本人の希望をできる範囲で確認する
- 施設の種類と入居目的を家族でそろえる
- 費用負担、支払い口座、追加費用を決める
- 身元保証人・緊急連絡先の役割を確認する
- 契約書・重要事項説明書・退去条件を確認する
- 医療、通院、服薬、看取りの希望を話し合う
- 持ち物、実家、郵便物、公共料金を整理する
- 家族の役割分担を決め、終活ノートに残す
入居前の準備は、本人の生活を守るだけでなく、家族が安心して関われる体制を作るためのものです。
不安な点があれば、施設、ケアマネジャー、地域包括支援センターへ早めに相談しましょう。
施設入居前に看取り対応まで希望する場合は、看取り介護の流れと家族が確認することも把握しておきましょう。
関連記事
施設入居を具体的に考える場合は、以下の記事もあわせて確認してください。



