親が施設に入った、実家に誰も住まなくなった、相続した家をどうすればよいか分からない。
そんな悩みを背景に、最近は「実家じまい」という言葉を掲げたサービスや相談窓口が増えています。
実家じまいとは、単に実家の中を片付けることではありません。家財の整理、不用品の処分、空き家管理、相続登記、売却、解体、税金の確認まで含めて、実家の行き先を決める終活と考えると分かりやすいでしょう。
一方で、実家じまいサービスは便利な反面、費用や契約内容、家族の同意、無許可回収業者、売却前の税金確認など、注意したい点も多くあります。
この記事では、実家じまいサービスが増えている理由、依頼できる内容、費用の考え方、利用前に確認すべきポイントを、終活目線で分かりやすく解説します。
実家じまいとは?
実家じまいとは、親や家族が暮らしていた家を、今後どうするか決めて整理することです。
法律上の正式な用語ではありませんが、終活や相続、空き家対策の現場では、次のような意味で使われることが増えています。
- 実家の家財や思い出の品を整理する
- 不用品や大型家具を処分する
- 仏壇・位牌・神棚などの扱いを決める
- 空き家になった実家を管理する
- 相続登記や名義変更を進める
- 売却・賃貸・解体・リフォームを検討する
- 相続人同士で実家の方針を話し合う
つまり実家じまいは、家の中の片付けだけでなく、「この家を残すのか、売るのか、貸すのか、解体するのか」という方針決定まで含みます。
生前整理の中でも、特に大きく、家族への影響が大きいテーマといえるでしょう。
なぜ実家じまいサービスが増えているのか
実家じまいサービスが増えている背景には、空き家の増加、家族の遠距離化、高齢者施設への入居、相続登記の義務化などがあります。
空き家が増えている
総務省統計局の住宅・土地統計調査では、全国の空き家数が増加していることが示されています。親の家を誰も引き継がない、相続した実家をそのままにしている、遠方で管理できないといった状況は、珍しいものではなくなっています。
空き家は、放置すると建物の老朽化、草木の繁茂、害虫、近隣トラブル、防犯上の問題につながります。
国土交通省も、空き家対策を重要な課題として制度整備を進めています。管理が不十分な空き家は、自治体から指導や勧告を受ける可能性があります。
子ども世代が遠方に住んでいる
親の実家が地方にあり、子ども世代は都市部に住んでいる。
このような家庭では、片付けのために何度も帰省することが難しくなります。仕事、子育て、介護が重なっていると、週末だけで実家を整理するのはかなり大変です。
そのため、実家の片付け、見積もり、買取、処分、売却相談までまとめて依頼できるサービスへの需要が高まっています。
相続登記の義務化で名義確認が必要になった
不動産を相続した場合、相続登記は義務化されています。
実家を売る、貸す、解体する、空き家管理をする、いずれの場合でも、誰の名義になっているかは重要です。名義が祖父母や曾祖父母のままになっていると、実家じまいの手続きが進みにくくなります。
法務省は、相続登記の申請義務化について案内しています。
相続登記と実家の名義変更については、こちらの記事で詳しく解説しています。
実家じまいサービスで依頼できること
実家じまいサービスといっても、会社によって内容は大きく異なります。
一般的には、次のようなサービスが組み合わされています。
家財整理・不用品処分
家具、家電、衣類、食器、本、布団、日用品などを仕分けし、必要なもの、売れるもの、処分するものに分けます。
遺品整理、生前整理、不用品回収、買取サービスが組み合わされることもあります。
高齢の親が片付けられない場合は、責めるのではなく、体力や認知機能、思い出への気持ちも考えながら進めることが大切です。
貴重品・重要書類の捜索
実家じまいでは、現金、通帳、印鑑、保険証券、権利証、固定資産税の通知書、年金関係書類、契約書などを探す必要があります。
相続や売却に関係する書類が見つからないと、後の手続きに時間がかかります。
業者に依頼する場合も、重要書類の扱いについて、事前にどこまで対応してくれるのか確認しましょう。
空き家管理
すぐに売却や解体ができない場合、しばらく空き家として管理することになります。
空き家管理では、換気、通水、郵便物の確認、草刈り、簡易清掃、外観確認、台風後の見回りなどを依頼できることがあります。
ただし、管理を依頼しても所有者としての責任がなくなるわけではありません。契約内容と報告方法を確認しておきましょう。
売却・賃貸・解体の相談
不動産会社や解体業者と連携し、売却査定、賃貸活用、解体見積もりまで相談できるサービスもあります。
注意したいのは、片付け業者、不動産会社、解体業者、司法書士、税理士では役割が違うことです。
一つの窓口で相談できるとしても、実際に誰が何を担当するのか、紹介料や手数料が発生するのかを確認しましょう。
仏壇・神棚・墓じまいの相談
実家には、仏壇、位牌、神棚、遺影、先祖代々の品が残っていることもあります。
仏壇じまい、閉眼供養、墓じまいが必要になる場合は、菩提寺や親族への相談も欠かせません。
実家じまいサービスを使うメリット
実家じまいサービスには、次のようなメリットがあります。
遠方でも作業を進めやすい
実家が遠方にある場合、家族だけで片付けるには何度も帰省する必要があります。
業者に依頼すれば、見積もり、仕分け、搬出、処分、報告をまとめて進められる場合があります。写真や動画で作業報告をしてくれるサービスもあります。
大型家具や大量の荷物に対応しやすい
長年住んだ実家には、タンス、食器棚、冷蔵庫、洗濯機、布団、農具、アルバム、本、衣類などが大量に残っていることがあります。
高齢の親や子ども世代だけで運び出すのは危険です。階段作業や重量物がある場合は、無理をしない方がよいでしょう。
売却や相続手続きへの流れを作りやすい
実家を売却する場合、家の中に荷物が残っていると内覧や査定が進みにくくなります。
片付けと同時に、相続登記、固定資産税、建物の状態、解体の要否、空き家特例の確認まで進めると、家族の判断がしやすくなります。
相続した空き家を売る場合は、税金の特例を使える可能性があります。売却前に条件を確認しておきましょう。
実家じまいサービスの費用は何で決まる?
実家じまいの費用は、家の広さだけで決まるわけではありません。
主に次の要素で変わります。
- 部屋数と荷物の量
- 大型家具や家電の有無
- 作業人数と作業日数
- トラックの台数
- 買取できる品物の有無
- 階段作業や搬出経路の難しさ
- 遠方対応や立ち会い不要対応の有無
- 清掃、消臭、庭木処理、解体などの追加作業
見積もりは、必ず複数社から取りましょう。
「一式いくら」という見積もりだけでは、処分費、運搬費、作業費、オプション費、買取額の内訳が分かりにくいことがあります。
実家じまいサービス利用前の注意点
便利なサービスだからこそ、利用前の確認が重要です。
家族の同意を取ってから依頼する
実家には、現金価値のあるものだけでなく、思い出の品、仏壇、写真、親族の共有物が残っていることがあります。
一人の相続人だけで処分を進めると、後から「勝手に捨てた」「売却を聞いていない」とトラブルになる可能性があります。
実家じまいを始める前に、相続人や家族で次の点を話し合いましょう。
- 実家を残すのか、売るのか、貸すのか、解体するのか
- 誰が費用を負担するのか
- 残したい品物は何か
- 仏壇や墓をどうするのか
- 作業に立ち会う人は誰か
無許可の不用品回収業者に注意する
家庭から出る不用品の回収・処分には、自治体の許可などが関係します。
環境省は、家庭の廃棄物を無許可で回収する業者を利用しないよう注意喚起しています。実家じまいでは大量の不用品が出るため、業者の許可や処分方法を確認することが大切です。
売却前に税金の特例を確認する
相続した実家を売る場合、一定の条件を満たすと空き家の3,000万円特別控除を使えることがあります。
ただし、建築時期、居住状況、売却期限、耐震改修や取壊し、売却金額、必要書類など、条件があります。
先に解体や売却を進めてから気づくと、特例を使いにくくなることがあります。国税庁の情報や税理士への相談で、売却前に確認しておきましょう。
相続土地国庫帰属制度は「家付き土地」では使いにくい
相続した土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」もありますが、建物がある土地や管理が難しい土地など、対象外になる条件があります。
実家の土地で制度を考える場合は、建物の有無、境界、費用、相続登記などを確認しましょう。
親が元気なうちにできる実家じまいの準備
実家じまいは、親が亡くなった後に始めると負担が大きくなります。
親が元気なうちに、少しずつ準備しておくと家族が助かります。
実家の方針を話し合う
まずは、親本人が実家をどうしたいのかを聞きましょう。
- 誰かに住んでほしいのか
- 売却してよいのか
- 賃貸に出してよいのか
- 解体して土地を残したいのか
- 仏壇や墓をどうしてほしいのか
親の希望と子どもの事情が違うこともあります。早めに話し合えば、選択肢を残しやすくなります。
書類を一か所にまとめる
実家じまいで必要になりやすい書類は、早めにまとめておきましょう。
- 登記識別情報または権利証
- 固定資産税の通知書
- 建築確認や図面
- 境界確認書や測量図
- 火災保険の書類
- リフォーム履歴
- 住宅ローンや抵当権の資料
登記や遺言書については、以下の記事も参考になります。
写真・アルバム・貴重品から先に整理する
実家じまいで時間がかかるのは、大型家具よりも、写真、手紙、日記、アルバム、趣味の品などです。
処分するか残すか判断に迷うものは、親が元気なうちに一緒に確認しましょう。
実家じまいサービスを選ぶチェックリスト
実家じまいサービスを選ぶときは、次の項目を確認しましょう。
- 見積書に作業内容と料金内訳が書かれているか
- 追加料金が発生する条件が明確か
- 不用品の処分方法や許可の説明があるか
- 買取品の査定方法が分かるか
- 貴重品や重要書類の扱いが決まっているか
- 作業前後の写真報告があるか
- 不動産売却や解体を紹介する場合、紹介先と手数料が分かるか
- 相続登記や税金について専門家へつなげられるか
- 契約書、キャンセル料、損害保険の有無を確認したか
サービス名が「実家じまい」でも、実際にできることは会社によって異なります。
片付けだけなのか、空き家管理まで含むのか、売却や解体の相談もできるのか、契約前に必ず確認しましょう。
関連サイトの参考記事
実家じまいは、生前整理と空き家対策の両方に関わります。
マネーライフハックの「生前整理とは何か?生前整理の必要性とやるべきこと、やり方」では、生前整理の考え方や進め方が整理されています。実家の荷物整理を始める前に、全体像をつかむのに役立ちます。
関連記事
実家じまいを考える方は、片付け、登記、売却、税金をセットで確認しておくと安心です。
まとめ 実家じまいはサービス任せにせず、家族で方針を決めてから進める
実家じまいサービスが増えている理由と、利用前の注意点について解説してきました。
- 実家じまいは、家財整理だけでなく、空き家管理、相続登記、売却、解体まで関わる
- 空き家の増加、遠方に住む子ども世代、相続登記の義務化が背景にある
- 実家じまいサービスでは、片付け、買取、不用品処分、空き家管理、売却相談などを依頼できる
- 費用は荷物量、作業人数、処分方法、追加作業で変わる
- 無許可回収業者、追加料金、家族の同意不足に注意する
- 売却前には、空き家の3,000万円特別控除や相続登記を確認する
- 親が元気なうちに、実家の方針、書類、写真、貴重品を整理しておく
実家じまいは、家族の思い出を消す作業ではありません。
むしろ、家族が困らないように、思い出と財産と責任を整理する作業です。
サービスを上手に使えば負担は減らせますが、家族の合意や名義、税金の確認までサービス任せにはできません。
「この家をどうしたいか」を家族で話すことから、実家じまいは始まります。



