親の介護が始まると、仕事との両立に悩む人は少なくありません。
通院の付き添い、介護保険の申請、ケアマネジャーとの面談、施設見学、急な呼び出し。最初は有給休暇で何とかしていても、だんだん仕事を休む回数が増え、「もう退職するしかないのでは」と追い込まれてしまうことがあります。
しかし、介護のために仕事を辞める前に、確認すべき制度と相談先があります。
介護離職を防ぐには、介護休業・介護休暇・短時間勤務などの制度と、介護保険サービスを組み合わせることが大切です。
この記事では、介護離職を防ぐために知っておきたい制度、会社への相談の仕方、介護休業中にやること、退職前のチェックポイントを解説します。
介護離職とは
介護離職とは、家族の介護を理由に仕事を辞めることです。
親の介護では、最初は「月に数回の通院付き添い」程度だったものが、認知症の進行、転倒、入退院、要介護度の上昇によって急に重くなることがあります。
仕事を続けながら対応するには、会社の制度と介護保険サービスの両方を使う必要があります。
介護離職につながりやすい場面
- 親が入退院を繰り返す
- 認知症で見守りが必要になる
- 通院付き添いや役所手続きが増える
- 急な呼び出しが多くなる
- デイサービスや訪問介護の調整が追いつかない
- 兄弟姉妹で介護分担ができない
- 上司や職場に介護の状況を言い出せない
- 睡眠不足や疲労で仕事に支障が出ている
介護離職を防ぐためには、介護が本格化してからではなく、「少し仕事との両立が苦しくなってきた」段階で動き始めることが大切です。
介護のために退職する前に確認すること
退職は大きな選択です。
仕事を辞めれば時間は増えますが、収入が減り、社会保険や将来の年金にも影響することがあります。
また、介護は数か月で終わるとは限りません。自分一人で介護を抱え込むと、家計だけでなく心身の負担も重くなります。
退職前の確認リスト
- 介護休業を取得できないか
- 介護休暇を使えないか
- 短時間勤務や時差出勤を使えないか
- 在宅勤務や勤務日数の調整ができないか
- 職場の人事・総務へ相談したか
- 地域包括支援センターへ相談したか
- ケアマネジャーに仕事を続けたいことを伝えたか
- デイサービス、訪問介護、ショートステイを使えるか
- 兄弟姉妹や親族で費用・手続き・見守りを分担できるか
- 施設入居も選択肢として情報収集したか
「会社に迷惑をかけたくない」と考えて、何も相談しないまま退職してしまう人もいます。
しかし、仕事と介護の両立支援は制度として用意されています。まずは会社の就業規則や人事・総務の窓口を確認しましょう。
介護休業とは
介護休業は、家族を介護するために一定期間仕事を休める制度です。
対象家族1人につき、通算93日まで、3回まで分割して取得できます。
ここで重要なのは、介護休業を「自分がずっと介護をするための休み」と考えないことです。
介護休業は、介護体制を整えるための期間として使うのが現実的です。
介護休業中にやること
- 介護保険の申請や区分変更を進める
- 地域包括支援センターへ相談する
- ケアマネジャーとケアプランを作る
- デイサービスや訪問介護を手配する
- ショートステイを試す
- 住宅改修や福祉用具を整える
- 兄弟姉妹で役割分担を決める
- 施設入居が必要か情報収集する
- 親のお金、通帳、保険、医療情報を整理する
介護休業を取っても、介護そのものが終わるとは限りません。
復職後に仕事を続けられるよう、休業中に外部サービスを組み立てることが目的です。
介護休業給付とは
雇用保険の対象となる人が一定の要件を満たして介護休業を取得した場合、介護休業給付を受けられることがあります。
ハローワークは、介護休業給付の支給額について、原則として「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」と案内しています。
ただし、支給には雇用保険の加入状況、賃金支払い、就業日数などの要件があります。
上限額などは変更されることがあるため、実際の金額は会社の人事・総務、ハローワークで確認してください。
介護休暇とは
介護休暇は、通院付き添い、ケアマネジャーとの面談、介護サービスの手続き、急な対応など、短期間の用事に使いやすい制度です。
対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで取得できます。
介護休業がまとまった期間を使って介護体制を整える制度であるのに対し、介護休暇は日々の突発的な対応に使うイメージです。
介護休暇を使いやすい場面
- 病院への付き添い
- 介護認定調査の立ち会い
- ケアマネジャーとの面談
- デイサービスや施設の見学
- 親の急な体調不良への対応
- 役所や金融機関での手続き
会社によっては、法定制度に加えて独自の介護支援制度を設けている場合もあります。
就業規則、社内ポータル、人事・総務窓口を確認しましょう。
短時間勤務・残業免除・深夜業制限も確認する
介護と仕事を両立するうえでは、休む制度だけでなく、働き方を調整する制度も重要です。
たとえば、短時間勤務、時差出勤、フレックスタイム、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限などが関係することがあります。
親の介護では、「丸一日休むほどではないが、朝の送り出しや夕方の帰宅確認が必要」というケースがあります。
この場合、短時間勤務や時差出勤を使えると、退職せずに済む可能性があります。
令和7年から介護離職防止の会社対応が強化
仕事と介護の両立をめぐっては、育児・介護休業法の改正により、介護離職防止のための企業側の対応も強化されています。
厚生労働省は、令和7年4月1日から段階的に施行される改正内容として、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化を案内しています。
具体的には、企業に対して、介護離職防止のための雇用環境整備、40歳など早い段階での両立支援制度等の情報提供、介護に直面した労働者への個別の制度周知・意向確認などが求められています。
つまり、介護の悩みは「個人が黙って抱えるもの」ではなく、職場としても対応すべきテーマになっています。
介護の状況をすべて細かく話す必要はありませんが、仕事への影響が出始めたら、上司だけでなく人事・総務にも相談しましょう。
会社へ相談する前に整理すること
会社へ相談するときは、「介護で大変です」だけでは、具体的な対応を考えにくくなります。
親の状態、必要な対応、いつ休みたいのか、どの働き方なら続けられそうかを整理してから相談しましょう。
会社に伝える前に整理する項目
- 介護している家族との続柄
- 要介護度や認知症の有無
- 通院付き添いの頻度
- 急な呼び出しの可能性
- 朝・夕方・夜間に必要な対応
- 介護保険サービスの利用状況
- 休業が必要か、短時間勤務で対応できるか
- いつからどのくらい調整したいか
- 同僚に共有してよい範囲
上司に相談しにくい場合は、人事・総務、社内相談窓口、労働組合、都道府県労働局の雇用環境・均等部室なども確認しましょう。
ケアマネジャーには「仕事を続けたい」と伝える
介護離職を防ぐうえで、ケアマネジャーへの伝え方も重要です。
ケアプランを作るときに、家族が仕事をしていること、平日の日中に対応しにくいこと、急な呼び出しを減らしたいことを伝えましょう。
ケアマネジャーは、本人の状態だけでなく、家族の介護力や生活状況も踏まえてサービスを組み立てます。
ケアマネジャーに伝えたいこと
- 仕事を辞めずに介護したい
- 平日の日中は電話に出にくい時間がある
- 通院付き添いが負担になっている
- 夜間対応で睡眠不足になっている
- デイサービスや訪問介護を増やしたい
- ショートステイを使いたい
- 施設入居も将来の選択肢として考えたい
ケアマネジャーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
介護保険サービスを組み合わせる
仕事を続けるには、家族だけで介護しようとしないことが重要です。
デイサービス、訪問介護、ショートステイなどを組み合わせることで、平日の日中や夜間の負担を減らせることがあります。
介護保険の申請がまだの場合は、まず申請から始めます。
相談先としては、地域包括支援センターも重要です。
仕事との両立に使いやすい介護サービス
- デイサービス: 日中の見守り、入浴、食事、機能訓練
- 訪問介護: 食事、掃除、排せつ、服薬確認などの支援
- ショートステイ: 家族の休息や出張、急用時の一時利用
- 福祉用具: 転倒予防や移動負担の軽減
- 住宅改修: 手すり、段差解消など住まいの安全対策
それぞれのサービスは、以下の記事で詳しく整理しています。
認知症の親の介護は早めに施設も検討する
認知症の親の介護では、仕事との両立が特に難しくなることがあります。
徘徊、火の不始末、夜間不眠、服薬管理、急な不安や怒りがある場合、家族が仕事を続けながら見守るのは限界があります。
デイサービスや訪問介護を使っても支えきれない場合は、介護施設への入居も選択肢として情報収集しましょう。
認知症の親を施設に入れるタイミングは、以下の記事で詳しく解説しています。
介護施設の種類、費用、見学チェックは以下の記事も参考になります。
兄弟姉妹で分担を決める
介護離職を防ぐには、家族内の分担も重要です。
一人だけが通院、買い物、役所手続き、金銭管理、ケアマネ対応を抱えると、仕事との両立は難しくなります。
遠方に住む兄弟姉妹でも、費用負担、書類整理、施設探し、オンライン面談の同席、緊急連絡の分担など、できることがあります。
家族で分担したいこと
- 通院付き添い
- 買い物や日用品の手配
- 介護サービス事業所との連絡
- ケアマネジャーとの面談
- 医療費・介護費の確認
- 施設の資料請求や見学
- 親の預貯金・保険・年金情報の整理
- 実家の片付け
「近くに住んでいる人が全部やる」では、介護離職につながりやすくなります。
できるだけ早い段階で、家族会議を開きましょう。
親のお金と終活ノートも整理する
介護離職を避けるには、親のお金をどう使うかも整理しておく必要があります。
介護費用を子どもがすべて負担しようとすると、仕事を辞めるかどうか以前に、家計が苦しくなることがあります。
親の年金、預貯金、保険、介護費用、施設費用の見通しを確認しましょう。
終活ノートには、医療情報、介護の希望、連絡先、通帳や保険の情報、施設入居への考え方などを残しておくと、家族が動きやすくなります。
親の判断能力が低下してからでは、財産管理や契約が難しくなることもあります。
認知症と遺言、成年後見についても早めに確認しましょう。
退職を検討するなら先に相談する窓口
どうしても退職が頭をよぎる場合は、退職届を出す前に複数の窓口へ相談しましょう。
- 会社の人事・総務
- 上司や社内相談窓口
- 労働組合
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部室
- 地域包括支援センター
- ケアマネジャー
- 市区町村の介護保険担当窓口
- ハローワーク
退職してから「介護休業を使えた」「短時間勤務で続けられた」と気づいても、元に戻すのは簡単ではありません。
退職は最後の選択肢として、先に制度とサービスを確認しましょう。
よくある質問
介護休業と介護休暇は何が違いますか?
介護休業は、一定期間まとめて仕事を休み、介護体制を整えるために使う制度です。
介護休暇は、通院付き添い、役所手続き、ケアマネジャーとの面談など、短い用事に使いやすい制度です。
介護休業中は給料が出ますか?
会社からの賃金の扱いは就業規則によります。
雇用保険の要件を満たす場合は、介護休業給付を受けられることがあります。実際の対象可否や金額は、会社やハローワークで確認してください。
親がまだ要介護認定を受けていなくても相談できますか?
相談できます。
地域包括支援センターや市区町村の介護保険窓口に相談し、必要に応じて要介護認定の申請を進めましょう。
会社に介護のことをどこまで話すべきですか?
病名や家庭事情を細かく話す必要はありません。
ただし、必要な休み、勤務時間の調整、急な呼び出しの可能性など、仕事に関わる範囲は具体的に伝えると制度を使いやすくなります。
まとめ 介護離職を防ぐには早めの相談と制度活用が必要
親の介護と仕事の両立は、気合いだけで続けられるものではありません。
介護離職を防ぐには、会社の制度、介護保険サービス、家族の分担を早めに組み合わせることが大切です。
- 退職前に、介護休業・介護休暇・短時間勤務などを確認する
- 介護休業は、介護体制を整える期間として使う
- 介護休業給付は、雇用保険の要件を満たす場合に対象となる
- 令和7年から介護離職防止に向けた企業対応が強化されている
- ケアマネジャーには「仕事を続けたい」と具体的に伝える
- デイサービス、訪問介護、ショートステイを組み合わせる
- 認知症や夜間対応が重い場合は、施設入居も早めに検討する
介護は家族だけで抱えるものではありません。
仕事を辞める前に、会社、地域包括支援センター、ケアマネジャー、ハローワークへ相談し、使える制度とサービスを確認しましょう。
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