高齢の親が入院し、医師から「そろそろ退院できます」と言われたとき、家族は安心する一方で大きな不安を抱えます。
「自宅で本当に生活できるのか」「介護保険は間に合うのか」「歩けない、薬が増えた、食事が不安」「仕事を休んで付き添うしかないのか」。
退院後の介護は、退院日が決まってから慌てて準備すると間に合わないことがあります。
退院後の生活を守るには、入院中から介護保険、在宅サービス、自宅環境、家族の役割分担を整えることが大切です。
この記事では、親の退院後に必要な介護サービス、病院で確認すること、退院前カンファレンス、自宅に戻る前の準備、施設入居を考えるサインをチェックリストで整理します。
退院後の介護準備は入院中から始める
退院後の介護準備は、退院日が決まってからではなく、入院中から始めます。
入院前は一人で暮らせていた親でも、入院をきっかけに足腰が弱くなる、認知症症状が目立つ、薬の管理が難しくなる、食事や排せつに介助が必要になることがあります。
退院後に起こりやすい困りごと
- 歩行が不安定で転倒しやすい
- トイレや入浴に介助が必要になる
- 薬の種類が増えて管理できない
- 食事制限や嚥下への配慮が必要になる
- 通院回数が増える
- 認知症の症状が目立つ
- 家族が仕事を休まないと支えられない
- 一人暮らしを続けるのが不安になる
こうした変化は、退院後に初めて気づくと対応が遅れます。
入院中に、病院の退院支援担当者、医療ソーシャルワーカー、看護師、リハビリ職、ケアマネジャーへ相談しましょう。
病院で確認すること
退院後の生活を考えるには、まず病院で親の状態を具体的に確認します。
「退院できますか」だけでなく、「家で何ができて、何に介助が必要か」を聞きましょう。
病院で確認する項目
- 歩行、立ち上がり、階段昇降の状態
- トイレ、入浴、着替えに介助が必要か
- 食事形態、嚥下、栄養状態
- 服薬内容と管理方法
- 退院後の通院頻度
- 自宅で必要な医療処置
- 認知症やせん妄の有無
- 転倒リスク
- 家族が注意すべき症状
- 緊急時の連絡先
退院後に訪問看護や訪問介護が必要になる場合もあります。
病院側から「退院後は介護サービスを使ったほうがよい」と言われたら、すぐにケアマネジャーや地域包括支援センターへつなげてもらいましょう。
退院前カンファレンスに参加する
退院前カンファレンスとは、退院後の生活に向けて、病院、本人、家族、ケアマネジャー、介護サービス事業者などが情報を共有する話し合いです。
必ずすべてのケースで行われるとは限りませんが、退院後の介護に不安がある場合は、病院へ相談してみましょう。
退院前カンファレンスで話すこと
- 退院日と退院後の生活場所
- 本人の身体状況と介助内容
- 自宅で必要な医療・看護
- 介護保険サービスの利用予定
- 福祉用具や住宅改修
- 家族ができること、できないこと
- 緊急時の連絡体制
- 次回受診や通院手段
家族は「どこまでなら自宅で支えられるか」「平日の日中は対応できるか」「夜間介護は難しいか」も率直に伝えます。
無理に「家族で全部やります」と言ってしまうと、退院後に介護者が限界を迎えることがあります。
介護保険の申請・区分変更を確認する
退院後に介護サービスを使うには、要介護認定が必要になることがあります。
まだ介護保険を申請していない場合は、市区町村の窓口や地域包括支援センターへ相談しましょう。
すでに要介護認定を受けている場合でも、入院をきっかけに状態が変わったなら、区分変更申請を検討することがあります。
介護保険サービス利用までの流れは、介護サービス情報公表システムでも確認できます。
介護保険制度の概要は、厚生労働省のページも参考になります。
介護保険申請の流れは、以下の記事で詳しく整理しています。
相談先として、地域包括支援センターとケアマネジャーの記事も確認してください。
退院後に使いやすい介護サービス
退院後の介護では、在宅サービスを組み合わせることが重要です。
親の状態と家族の介護力に合わせて、ケアマネジャーと相談しながらサービスを選びます。
訪問介護
訪問介護は、ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事、排せつ、入浴、掃除、買い物、服薬確認などを支援するサービスです。
退院後に自宅での生活を再開する場合、日常生活の支えとして重要です。
デイサービス
デイサービスは、日中に施設へ通い、食事、入浴、機能訓練、見守りなどを受けるサービスです。
退院後の体力低下、入浴不安、日中の見守りに役立ちます。
ショートステイ
ショートステイは、短期間施設に泊まるサービスです。
退院直後に家族が介護体制を整える時間が必要な場合や、介護者が休む必要がある場合に検討できます。
福祉用具・住宅改修
退院後は、歩行器、車いす、介護ベッド、手すり、ポータブルトイレなどが必要になることがあります。
自宅の段差、浴室、トイレ、玄関、寝室の環境も確認しましょう。
自宅に戻る前のチェックリスト
退院後に自宅へ戻る場合は、家の中で安全に動けるか確認します。
病院の廊下では歩けても、自宅の段差、狭いトイレ、浴室、玄関では転倒しやすいことがあります。
自宅環境チェックリスト
- 玄関の段差を越えられるか
- 寝室からトイレまで安全に移動できるか
- 夜間の照明が足りているか
- 手すりが必要な場所はどこか
- 浴室や脱衣所で滑らないか
- ベッドの高さは合っているか
- 車いすや歩行器が通れるか
- 薬や水分を手に取りやすいか
- 緊急時に電話できる場所か
- 火の管理ができるか
退院後に一人暮らしを再開する場合は、見守り、配食、服薬確認、緊急通報装置なども検討します。
薬・食事・通院の管理を決める
退院後は、薬の種類が増えたり、食事制限が必要になったり、通院回数が増えたりすることがあります。
本人だけで管理できるか、家族がどこまで関わるかを決めておきましょう。
医療まわりで確認すること
- 退院時の薬と服薬時間
- 薬の飲み忘れ対策
- お薬手帳の管理
- 食事制限、嚥下、アレルギー
- 次回受診日
- 通院付き添いの担当
- 急変時の連絡先
- 訪問看護が必要か
医療費が高額になる場合は、高額療養費制度も確認しておきましょう。
家族の役割分担と仕事の調整
退院後の介護は、通院付き添い、買い物、服薬確認、夜間見守り、ケアマネジャーとの連絡など、細かい用事が続きます。
一人の家族だけが抱えると、介護疲れや介護離職につながります。
退院前に、家族で役割を分けましょう。
家族で分担すること
- 病院との連絡担当
- ケアマネジャーとの連絡担当
- 通院付き添い
- 薬の確認
- 買い物・食事の準備
- 介護サービスの立ち会い
- 費用の管理
- 緊急時の駆けつけ
仕事と介護の両立が難しい場合は、介護休業、介護休暇、短時間勤務なども確認します。
退院後に施設入居を考えたほうがよいサイン
退院後は必ず自宅へ戻るもの、と考えすぎる必要はありません。
本人の状態や家族の介護力によっては、介護施設や高齢者向け住まいを検討したほうがよい場合もあります。
施設入居を検討するサイン
- 一人暮らしの再開が危険
- 夜間の見守りが必要
- 認知症で火の管理や服薬管理が難しい
- 家族が仕事を続けられない
- 医療的な管理が多い
- 転倒や再入院の不安が強い
- 在宅サービスを組み合わせても支えきれない
介護施設の種類、費用、見学チェックは以下の記事で整理しています。
退院後にそのまま施設入居を考える場合は、入居前に家族で決めることも確認しておきましょう。
認知症がある場合の退院後準備
認知症がある親の退院後は、身体の回復だけでなく、生活全体の安全確認が必要です。
入院中の環境変化で混乱が強くなったり、退院後に一人での服薬や火の管理が難しくなったりすることがあります。
徘徊、火の不始末、夜間不眠、服薬ミスがある場合は、在宅サービスだけでなく施設入居も早めに検討しましょう。
身寄りが少ない・一人暮らしの場合
退院後に頼れる家族が少ない場合は、さらに早めの準備が必要です。
入院中から、病院の相談員、地域包括支援センター、ケアマネジャー、市区町村窓口へ相談しましょう。
緊急連絡先、入院費や介護費の支払い、退院後の見守り、施設入居時の身元保証なども問題になりやすい項目です。
身寄りが少ない高齢者の入院・施設入所については、以下の記事も参考にしてください。
施設入居時の身元保証については、以下の記事で詳しく整理しています。
終活ノートに残しておきたいこと
退院後の介護準備は、終活ノートにも残しておくと家族が動きやすくなります。
特に、病歴、薬、かかりつけ医、介護サービス、緊急連絡先、希望する生活場所は整理しておきましょう。
終活ノートに残す内容
- かかりつけ医、病院、診察券番号
- 持病、薬、アレルギー
- 介護保険証、要介護度
- ケアマネジャーや地域包括支援センターの連絡先
- 利用中の介護サービス
- 退院後に希望する生活場所
- 施設入居への考え方
- 医療・看取りの希望
- 緊急連絡先
終活ノートと人生会議については、以下の記事も参考になります。
よくある質問
退院後すぐに介護サービスを使えますか?
要介護認定の有無やケアプラン、事業所の空き状況によります。
退院日が近づいてからでは間に合わないことがあるため、入院中から病院の相談員、地域包括支援センター、ケアマネジャーへ相談しましょう。
退院後に自宅で暮らせるか誰に相談すればよいですか?
病院の退院支援担当者、医療ソーシャルワーカー、主治医、看護師、リハビリ職、ケアマネジャー、地域包括支援センターに相談できます。
退院後にショートステイを使えますか?
要介護認定やケアプラン、施設の空き状況によります。
家族が介護体制を整える時間が必要な場合は、早めにケアマネジャーへ相談しましょう。
退院後すぐ施設に入ることはできますか?
施設の空き、本人の状態、費用、入居条件、医療対応によります。
自宅復帰が難しいと感じたら、退院調整の段階で病院の相談員やケアマネジャーへ施設入居も含めて相談しましょう。
まとめ 退院後の介護は入院中から準備する
高齢の親の退院は、治療の一区切りであると同時に、在宅介護や施設入居を考える始まりでもあります。
退院後の生活を安全に整えるには、病院、介護関係者、家族が早めに情報を共有することが重要です。
- 退院後の介護準備は入院中から始める
- 病院で歩行、食事、薬、通院、医療処置を確認する
- 退院前カンファレンスでは家族の限界も伝える
- 介護保険申請や区分変更を早めに相談する
- 訪問介護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具を組み合わせる
- 自宅の段差、トイレ、浴室、寝室を確認する
- 自宅復帰が難しい場合は施設入居も選択肢に入れる
- 終活ノートに医療・介護情報を残しておく
退院後の不安を家族だけで抱える必要はありません。
病院の相談員、地域包括支援センター、ケアマネジャーへ早めに相談し、親が安全に暮らせる体制を整えましょう。
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